「シリアの化学兵器攻撃はアメリカの演出」だったのか?

「シリアの化学兵器攻撃はアメリカの演出」だったのか?


 4月4日に発生したシリア北西部イドリブ県の化学兵器攻撃と、それに引き続く米軍のミサイル攻撃が、世界中に多くショックを与えたことは記憶にあたらしいだろう。しかし、この攻撃について、ロシアのセルゲイ・ラブロフ ロシア外相が「アメリカの演出だった可能性」を示唆したとブルームバーグ(Bloomberg)が伝えたことで、アメリカでは大きな騒動になった。ラグロフ外相曰く、「メディアによる一連の報道には矛盾があり、ロシア、イラン、シリアは独立機関の調査を求めている」と語ったという。ブルームバーグでは他にもDaily Mailのニュース記事を取り上げ、シリア内戦で使われた毒ガスの調査をしていた国連のカーラ・デル・ポンテ調査官の見解を取り上げ、調査の結果シリア内戦で使われたのはサリン・ガスであること、また確定的ではないが使用したのはシリア政府ではなく、反政府勢力だと疑われると報告している。この報道に、BizseedsのRedとBlueは、どういう見解を示しただろうか?

元記事
・『Bloomberg』https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-04-14/russia-says-evidence-growing-syria-chemical-attack-was-staged
・『Daily Mail』http://www.dailymail.co.uk/news/article-2320223/UN-accuses-Syrian-rebels-carrying-sarin-gas-attacks-blamed-Assads-troops.html

 最近発生した、シリア政府がシリア北西部の反政府勢力地域へ「化学兵器による攻撃」を行なったとされる件には、疑問が多々ある。ニューヨークタイムス、CNN、USAトゥデー紙などは、化学兵器による攻撃で67人から100人の市民が殺害され、責任はシリア政府にある可能性が高いと、一斉に報道している。それは事実かもしれないが、問題は「我々は何を本当に知っているのか?」だ。反政府勢力そのものが化学兵器を持っていたのではないか? ISISあるいは他のテロリスト兵が反政勢力グループと共闘していたのではないか? 過去のニュースを検索すると、2013年に国連は、シリアの反政府勢力がサリンガスを攻撃に用いたと非難しているのがわかる。独立機関によって事実が検証されるまでは、いかなる報告もまず疑ってかかる姿勢を持つメディアが必要だ。

 いたずらに危機感を煽るのではなく、異なる情報源からなる記事を書き、政治的に異なる立場のそれぞれの主張をレポートする、それが健全なメディアのあり方ではないか。
 問題は、人々がジャーナリズムと扇情記事の区別がつかなくなりメディアを信頼しなくなった時だ。世の中には、真実を報道するために日々奮闘している経験を積んだジャーナリストがまだたくさんいる。しかし、興味本位の情報や偽ジャーナリズムが毎日山のように吐き出されているのも確かだ。悪いことに読者は、情報の真偽、中立記事か偏向記事かを確かめようとしない。我々の多くは、お気に入りの情報源を鵜呑みにして、他からの情報を知ろうともしないのだ。NBC Newsはリベラル寄りであり、Daily Mailはナンセンスな扇情的タブロイド紙だ。こうした違いを見極めるのは読者の自己責任ではないか。

記事トピックスは過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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