自由の国アメリカで「損すること」と「得すること」

自由の国アメリカで「損すること」と「得すること」


 日本は合理的な国だ。企業の各種サービスや公官庁のサービスに至るまで、生活に関することの全般的にストレス度は低いと思う。例えば、宅急便ひとつ取っても、あの「配達時間の指定ができること」は日本特有のこの上ないサービスである。

 日本の経済や流通は客手市場だ。いかにお客様が満足するかが重要で、市場価格もお客様の志向で決まっていく。日本の消費者には、日本のサービスが当たり前になっている。だから、アメリカでサービスが悪いと嫌な気持ちにさせられても我慢してしまう傾向がある。我慢するのは、きっと相手がこちらの気持ちに気づいてくれるはずだと思うからだろう。

 ところが欧米の場合は、売り手と買い手は同等なので、日本のような客にとっての優れたサービスは用意されていない。ある日本人のお客様がロサンゼルスに来られた際、予約したホテルでチェックインを済ませて部屋に入ると、バスルームにバスタブがなくシャワーのみだったことがあった。その方は、「これだから嫌だよなあ。ホテルの予約の際に、あれほどバスタブ付きでと確認したのに」と言う。それを聞いた私はすぐに、「ここはアメリカですから、言わないと損ですよ!」と忠告した。その結果、彼はホテルのフロントデスクにバスタブが無かった旨を話して、バスタブがあるからここを予約したと言い張り、結果として同じ値段でもっとランクのいいバスタブ付きの部屋に変えてもらうことができた。
 ここで彼が何も文句を言わず我慢していたら、待っていても何も動かず損をしたはずである。

 自由の国アメリカでは、言わなければ何も動かないが、言えば結果的に得をすることも多いのである。「お客様は神様です」という文化の国からアメリカに来ると、「欧米のサービスは打算でひどい」、「クレームを入れても聞きいれてもらえない」とストレスを抱える。しかし、アメリカに来たからには、この事態を少しでも得する方向に持っていくべきだ。

 ここで述べたいこと、それは「得をする=いいものがもらえる」とか、「何もしなくても状況が良くなる」ということではない。大事なのは、「交渉」の必要性だ。アメリカでは、どんなに小さなことでも日常的に交渉し続ける訓練が必要と言える。

 例えば、以前ジムのシャワールームで見知らぬアメリカ人女性に、「洗顔料を持って来るのを忘れたので少し下さい」と言われたことがある。洗顔料はチューブに入っていたので、使用分だけを出すのではなく、チューブごと渡してあげた。彼女はもちろん「サンキュー」と軽く礼を言い、惜しみなくそれを使い、使用後に笑顔でチューブごと返却してきた。ところがある時、同じジムで洗顔料を忘れた日本人の女性を見掛けたが、彼女は何度も洗顔料を忘れた自分を責め続けていた。これでは 誰も手を差し伸べてはくれない。ここはフリーダムの国、アメリカだ。必要なことは誰であろうと、どこであろうと交渉すればいいのだ。洗顔料で顔を洗いたいならば、「忘れたので貸してください」と言えば、知らない人でも貸してくれるかもしれない。

  日本では「言った者勝ち」などと揶揄されるような言動も、アメリカでは失礼だとか、図々しいと思われないことが多い。自分もするし、相手にもされるので、損得の共存があると言っても過言ではないだろう。この国でやっていくならば、さらっと交渉して得をするストレスフリーを目指そう。

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