「こだわり」が邪魔をする? 成功者が陥りやすい商材ネーミングの罠

「こだわり」が邪魔をする? 成功者が陥りやすい商材ネーミングの罠


 前回のコラムでは、日本国内で成果をあげ、高い信頼や実績を持っている方々ほど、アメリカにおけるブランディングやマーケティングの重要性を理解しない傾向が高いという話をした。しかし、日本国内ですでに需要が確立している商材をアメリカで販売したいと考える場合には、注意が必要だ。それは日本で成功した要因が、アメリカでの成功を阻む「ボトルネック」になってしまうことも少なくないからである。

 例えば、商材のネーミングもそのひとつ。結論から先に伝えると、アメリカで勝負をしたいのであれば、アメリカ在住のアメリカ人コピーライターや、マーケティング専門家の意見を取り入れながら、アメリカ用の名称で勝負をする方が賢明だ。日本人が「語呂がいい」と思うものや、「意味的に素晴らしいから」と思うものでも、英語圏では意味が通じなかったり、思いもよらぬ意味を含んでいる場合も少なくない。「知っているつもり」や、「日本人に分かりやすい英語」ほど、注意が必要なのだ。また、類似名称がすでに世に出回っている場合には、訴訟の危険性も否めないため、その調査はじっくりした方がよい。

 このような事情から、クライアントに「この名称は、アメリカでは使うべきではありません」と伝えねばならないことは、非常に多い。私の会社のチームにもアメリカ人の専門スタッフがいる。彼が細かく名称マーケティングをしてくれたおかげで、危ない橋を渡らずに済んだことは一度や二度ではない。いくらアメリカに長く住んでいても、日本での事業経験があっても、こうしたチェックは絶対に「ローカルのネイティブによるチェックをする」ことが基本と思った方がよいだろう。

 ところが、商材が日本で認知度が高いものだったり、売り手の思いが大きかったりする場合、「名称を変えよう」と提案した途端に、毎回必ず喧々諤々の議論になる。思いや情熱が強ければ強いほど、名称変更を拒む。そして、少なからず「それではウチのブランドではなくなる」というようなことを懸念される。

 しかし、「意味の通らない商品名では、アメリカで成功することは難しい」という現実を、しっかりと認識することをお勧めしたい。和製英語で意味が通じないもの、類似商品名がすでに流通しているものなど、名前を変えるべき理由はひとつではないが、この作業にかける時間をケチってはならず、また名称がよくないと判断された場合は、素直にその意見に耳を傾けるべきだ。名称や商品のイメージは、一旦外に出てしまったら、なかなか払拭できない。マーケティングをせずに先に走り出してしまったイメージのために損をしたり、訴訟になる危険性を考えたほうが良いにきまっている。どんなビジネスをする場合でも、私がクライアントに強く伝えること、それは「デビューは一回きりですよ」ということ。熟慮なしのデビューは勧められないし、すべきでもないと思う。

 具体例をひとつあげておこう。以前、自己啓発のプログラムの名称に「The Training」を採用しようとしたことがあった。商材特性的にも分かりやすく、ネイティブのスタッフのウケも非常によかった。競合調査でも、同じ名前を利用している自己啓発関連の業者、人、商材はなかったのだが、マーケティング調査を進めるうちに、何と「SM」関連の商材を取り扱うウェブサイトに、「The Training」をうたっているものがあり、ウェブマーケティング上ではこの「SM」業者のホームページが検索上位に来ることが分かったのだ。商材が全く違っても、セクシャル産業に名称一致が見られることは、マイナス要因でしかない。よい名称だったが、結果的に「The Training」は名称候補から外されたのだった。

今回のひとこと:
デビューは一度きり。だからこそ、商品の名称選びは慎重に!

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