住まいのない大学生たち 増加する若年層ホームレス

住まいのない大学生たち 増加する若年層ホームレス


 アマゾン・ドットコムやマイクロソフト本社、グーグルの支社などIT関連企業の進出により全米でも抜きん出て急成長中のシアトルは、ワシントン州キング郡最大の都市である。しかし、その成長の一方で、ホームレスという深刻な社会問題を抱えているのも事実だ。

 エバレット・コミュニティー・カレッジ(州立の短大)の学生、マイケルさん(19歳)は、一見すると普通の大学生だが、実はホームレスだ。ホームレス用シェルターが集まるシアトル市内から、シアトル郊外にある大学まで1時間以上かけてバス通学し、毎日1時間から2時間は歩いて移動している。彼はトランスジェンダーで、母親がそれを受け入れられず忌み嫌ったことから、自身の「身の安全のため」に家を出たのは、今年4月。それからホームレスとして暮らしながら、大学に通っている。学費は連邦政府学生援助(FAFSA)から学生ローンを借りられたが、学業と通学に時間をとられて働くことができないという。「いつもお腹が空いている」だけでなく、シェルターは日々ごとに変わるので、いつも教科書やノートと、着替えと身の回りのものを入れたリュックサックを背負って移動している。

 アメリカでは、マイケルさんはそれほど特殊な例ではない。アメリカの大学生の約半数が安全な住まいの確保ができておらず、コミュニティー・カレッジの学生の2/3が食料の確保に不安を抱えているという調査結果が出ている。それでも彼らは現状から抜け出すため、そして将来のために、大学卒業を目指している。

 黒人でもあるマイケルさんは、若年層ホームレスの典型的な例ともいえる。調査によると、LGBTQ(性的マイノリティー)はアメリカの人口の7%以下だが、2017年のキング郡のホームレスのうち、LGBTQは29%にのぼる。また同じ調査で、同郡の有色人種の占める割合は29%となっているが、有色人種のホームレスの若者となると53%になってしまう。

 ホームレスと聞くと、麻薬や犯罪に直結されがちだが、マイケルさんのように虐待などの理由で家を出て、真面目に学び、努力している若者はとても多い。キング郡には現在、約12,000人のホームレスがいる。これは小さな町の人口に匹敵する数である。大企業の進出で不動産が高騰を続けるシアトル周辺では、住んでいたアパートの家賃が高くなり過ぎて支払えなくなった人々が、シェルター不足でシェルターにも入れず、高架下や公園などにテントを張って生活をしている。その増加のスピードが大問題となっているが解決策は未だに見つからず、テントの数は増え続けている。

貧困層に関する記事 >
Bizseedsでは、アメリカの注目新サービスを日本に展開するお手伝いをしています。ご興味のある方はお気軽にお問合せください。

この記事の寄稿者

関連する投稿


今週のU.S.A.ニュース・ピックス! 銃規制スピーチからロボット動画まで

今週のU.S.A.ニュース・ピックス! 銃規制スピーチからロボット動画まで

アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思った今週のU.S.A.ニュースをピックアップ! 2月第3週のアメリカでは、フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件の生存者によるスピーチを有名アーティストや若者層がリツイートして全米に銃所持の問題を提起したことが最大のニュースに。


これからは「ペットが飼主に電話する」?

これからは「ペットが飼主に電話する」?

自宅にカメラを設置し、外出先からスマホでペットの様子を確認できるアプリ類はもう一般的。そこで今度は、外出中の飼主にペットからコンタクトすることが可能なガジェットが登場し、話題になっている。


1月第4週ニュース・ピックス! 世界滅亡時計から、黄金の便器まで

1月第4週ニュース・ピックス! 世界滅亡時計から、黄金の便器まで

米大手メディアが拾わないような現地ニュースも含め、アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思ったニュースをピックアップ! 先週は、黄金の便器、洗剤を食べる人増加など冗談のようなニュースに注目が集まった。


空への夢の始まり13――とうとう、ひとりで機体を飛ばす

空への夢の始まり13――とうとう、ひとりで機体を飛ばす

外国人には狭き門である、アメリカ一般旅客機パイロットへの道。その難関を突破し、育児をしながら現役活躍中の青木美和が、「夢の叶え方」を航空産業最新情報と共にお届けする『Sky High America』。アメリカの大学で航空学などを学びながら、フライト・スクールで実技を学ぶ生活にも慣れて来た頃、その日は突然やってきた。


バッファロー・ウイングを食べるときには

バッファロー・ウイングを食べるときには

自然を愛し、趣味はハイキングと食べることという著者・デイビッド・アンドリューズが、「ごく普通」のアメリカ人代表として綴る『You Are What You Eat~食は人なり~』。アメリカで「ビールに合うつまみ」といえば、ソースに絡めたバッファロー・ウイング。手がベタベタになることが玉に瑕だが……?






最新の投稿


サステイナブルな食生活への移行はゆっくりでいい

サステイナブルな食生活への移行はゆっくりでいい

オーガニック野菜の生産や販売、食育教室などを開催するサステイナブル農場「21エーカース」の料理人で、料理人歴30年以上のベテラン・シェフ、ジャック・サリバン。今回はジャックが、サステイナブルな食生活へのスムーズに移行するための「コツ」を伝授する。


日本好きを魅了する、ビバリーヒルズのスパ探訪

日本好きを魅了する、ビバリーヒルズのスパ探訪

全米の流行発信地のひとつでもあるカリフォルニアのビバリーヒルズに、セレブリティたちを魅了する日本スタイルのスパがある。日本人女性、黒野智子さんがオーナーの「Tomoko Spa」だ。その驚きのサービスとは?


【Red vs Blue】ビットコインが抱える“多くの問題”に頭を悩ませる監査当局

【Red vs Blue】ビットコインが抱える“多くの問題”に頭を悩ませる監査当局

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々の見解を披露する。今回は、アメリカでも話題の仮想通貨への投資について。


今週のU.S.A.ニュース・ピックス! 銃規制スピーチからロボット動画まで

今週のU.S.A.ニュース・ピックス! 銃規制スピーチからロボット動画まで

アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思った今週のU.S.A.ニュースをピックアップ! 2月第3週のアメリカでは、フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件の生存者によるスピーチを有名アーティストや若者層がリツイートして全米に銃所持の問題を提起したことが最大のニュースに。


トランプの「軍事パレード開催」発言を兵士たちはどう受け止めたか

トランプの「軍事パレード開催」発言を兵士たちはどう受け止めたか

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、「軍事パレードを開催したい」というトランプ大統領発言に対する兵士や保守派の意見を紹介する。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング