日本のTV番組がアメリカでヒット 「何も起きないのが、たまらない!」

日本のTV番組がアメリカでヒット 「何も起きないのが、たまらない!」

フジテレビがネットフリックスと共同制作したリアリティーTV番組「テラスハウス」が、アメリカでヒット中だ。しかも、ヒット最大の理由は「つまらないから」。荒々しくて騒々しいアメリカのリアリティー番組とは似ても似つかない日本のリアリティー番組が、アメリカ人にはとても新鮮なようだ。


 日本で2012年秋から2014年秋までフジテレビで放映されていた「テラスハウス」が、今、アメリカで話題を呼んでいる。映像ストリーミング配信会社大手のネットフリックス社が、昨年アメリカで「テラスハウス シーズン1」のストリーミング配信を開始したところ、直後は珍しもの好きな人たちの間だけで囁かれる程度だった。しかし、エピソードが進むごとに、ツイッターでのつぶやきが増え、各メディアの文化コラムでも取り上げられるようになり、今年5月には『ニューヨーク・タイムス』紙が、「テラスハウス」を推薦する記事を掲載。気づけば大ヒット番組に成長していた。

 アメリカのTVではゴールデンタイムを多くのリアリティー番組が占めるが、どの番組も出演者同士が大声で争ったり、酒に酔って暴れたり、泣きわめいたり、他人に酷いことを言ったり、激しく喧嘩するなど、視聴者のストレスレベルが上がってしまうような演出の番組ばかりだ。

 そんな中、日本の「テラスハウス」は、アメリカのリアリティー番組とはまったく異なる様相を見せ、アメリカの視聴者を虜にした。同番組はリアリティー番組の先駆けであるMTV「リアルワールド」のフォーマットに則り、「ひとつの大きな家に男女半々の6人が住み、毎日の生活の様子を視聴者が覗き見する」ものだが、アメリカの番組ほど、プロデューサー陣の意思が出演者の行動に反映されてないように見える自然な作りで、ひとつのエピソードを見ても「何もたいした事件が起きずにエピソードが終了」することもある。そのため、番組に寄せられる声やツイッターも、「こんな退屈な番組を作っていいのか? でも、なぜだか最後まで見てしまう」というものや、「平凡で単調な生活を見ていると心が癒される」、「静かな会話になごむ」、「寝る前に、つい毎回ボーッと見てしまう」などで、完全に「癒し系の番組」としての立ち位置を確立しているようだ。

 ヒットしたもうひとつの理由は、シーズン1は舞台が東京だったからだと言われている。出演者が番組内で口にする食事や、映り込む建築物などがアメリカの視聴者にとって非常に珍しかっただけでなく、その都市で暮らす日本人出演者たちの所作や習慣、他人との関わり方などが新鮮に映ったらしい。

 ほとんど事件らしい事件が起きないシーズン中、唯一起きた事件が「出演者のひとりが顧客から頂いた特別上等な肉を、本人の許可なく同居者たちが皆で食べてしまったこと」だったことも、アメリカの視聴者に微笑みを届けたと言われている。しかも「その事件」は、出演者たちがカメラの前で殴り合ったり、流血することなく、話し合いだけで問題を解決していく様子に感銘を受けた視聴者が多かったらしい(複数のメディアがこの件を記事で指摘している)。「この番組を通して、日本人は目の前のものよりも、何かもっと深いことを示唆して話すことや、相手に対する思いやりの見せ方が文化的に異なることなどを知ることができる」というような感想も寄せられている。

 番組制作者の意図はわからないが、「テラスハウス」のシーズン1は、海外の視聴者に対して「現代日本人の生活」を象徴するようなカルチュアル・インフルーエンスを持った存在になりつつある。しかし、アメリカのリアリティー番組と異なるところが人気でありながら、シーズン2の舞台は東京ではなく、ハワイ。今後、この番組のアメリカにおける立ち位置がどうなるのかに注目したい。

参考記事:Netflix’s Latest Hit Series Is a Boring, Soothing Japanese Reality Show
エンタメ業界に関する記事 >
Bizseedsでは、アメリカの注目新サービスを日本に展開するお手伝いをしています。ご興味のある方はお気軽にお問合せください。

この記事の寄稿者

関連する投稿


 同性愛カップルのCM放送を取り下げて炎上 ケーブルTV局が謝罪

同性愛カップルのCM放送を取り下げて炎上 ケーブルTV局が謝罪

アメリカのウェディングギフト業界で急成長している「Zola」が、同性愛カップルを起用したTVコマーシャル。これを良しとしない保守系団体の圧力を受け、米大手ケーブルTV局で放映を中止したことに抗議が殺到し、有名人も巻き込んでSNSが炎上している。


日本にあって、アメリカにないものとは

日本にあって、アメリカにないものとは

アメリカの名門エモリー大学で28年間、教鞭をとってきた著者が語る、アメリカの日常と非日常。アメリカに長年住んでから日本に帰国すると、日本に住んでいたときにはまったく気づかなかった文化の違いに驚かされる。今回はそのいくつかを紹介しよう。


日本の逸品、アメリカ人が査定③「DAISOのイージーシーラー」

日本の逸品、アメリカ人が査定③「DAISOのイージーシーラー」

編集部が勝手に選んだ日本の優れた商品を、アメリカ人に試してもらうというこの企画。今回はアメリカでも人気のダイソーで買い出し。1つ5ドルの「イージーシーラー」、値段が安いと大喜びのアメリカ人だったが……


日本の逸品、アメリカ人が査定①「ふくらむえのぐ」

日本の逸品、アメリカ人が査定①「ふくらむえのぐ」

「日本の逸品をアメリカ人に手渡したら、どんな反応をするだろう?」。それを見てみたいという好奇心にお応えする企画第一弾は、「ふくらむえのぐ」。 アメリカでは売られていない文具を手にした子供たちの反応は?


1月第4週ニュース・ピックス! 世界滅亡時計から、黄金の便器まで

1月第4週ニュース・ピックス! 世界滅亡時計から、黄金の便器まで

米大手メディアが拾わないような現地ニュースも含め、アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思ったニュースをピックアップ! 先週は、黄金の便器、洗剤を食べる人増加など冗談のようなニュースに注目が集まった。






最新の投稿


米大統領選ガイド(10)「トランプは勝てるのか?」

米大統領選ガイド(10)「トランプは勝てるのか?」

2020年11月3日に実施される米大統領選挙。トランプ現大統領率いる共和党とリベラルな民主党が政権奪回を争う選挙戦は、その後の世界情勢にも大きく影響するが、米大統領選のルールはかなり複雑だ。そこで、米大統領選を2000年から取材しているジャーナリスト・西森マリーによる、どこよりも分かりやすい解説をお届けしよう。


BizSeeds編集部スタッフがお届け!『ロックダウン・アメリカ』スタート

BizSeeds編集部スタッフがお届け!『ロックダウン・アメリカ』スタート

新型コロナウイルス、死者・感染者ともに拡大を見せているアメリカ。ロックダウンが始まって1ケ月今日、アメリカのフツーの人は、どうやってロックダウン生活を過ごしているのか? 


新型コロナウイルスでトランプ叩きをする米大手メディア

新型コロナウイルスでトランプ叩きをする米大手メディア

米テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けする、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はトランプ大統領を嫌っている米大手メディアと民主党によるトランプ・バッシングが、度を超えているという著者の意見を例を挙げて紹介しよう。


コロナウイルスにどう立ち向かう? 12星座「ハリウッド開運術」特別編

コロナウイルスにどう立ち向かう? 12星座「ハリウッド開運術」特別編

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが、お届けする開運指南。今月は新型コロナウイルスが猛威を振るう世の中における、今後の動向を星の配置や数秘の観点からお伝えしていきます。


トイレットペーパーを買い溜めても、コロナが招いた問題は解決しない

トイレットペーパーを買い溜めても、コロナが招いた問題は解決しない

圧倒的にリベラル派が多く住む米西海岸から、トランプ大統領と共和党の政策に真っ向から反対する日系アメリカ人ジャーナリスト、マイク佐藤がお届けする「トランプを支持しない人たちの声」。今回は、新型コロナウィルス感染防止で自宅に篭るべく、個々が食料品や雑貨の買い溜めをして備えているが、「忘れられている備え」があることについて。


アクセスランキング


3
【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【エッセイ】エッグノックとはどんな飲み物?

【ライフ&カルチャー】会社勤めのコラムニスト デイビッド・アンドリューズ

4
トランスはジェンダーだけではない?

トランスはジェンダーだけではない?

【政治・社会】ビジネス&出版プロデューサー グッドイヤー ・ ジュンコ

5
軍人たちが行う積極的な「第二の人生設計」

軍人たちが行う積極的な「第二の人生設計」

【ライフ&カルチャー】アメリカ国防総省キャリア カイゾン・コーテ

>>総合人気ランキング