
アメリカにおいても「異性や同性の恋愛パートナーを見つけるためのサービス」は、大きなビジネスに発展している。言うまでもなく主流はオンライン・デーティングであり、ユーザーにとって最も手っ取り早いのは、アプリを使って相手を探す方法だ。
人気の高い恋愛系アプリは多数あるが、なかでも人気が高いのが「Tinder」だ。累計200億のマッチを生み出したという同アプリの使い方は非常に簡単。自分の近くにいる登録者の顔写真と、記載されているプロフィールが気に入ればスワイプするだけ。もし、自分がスワイプしたユーザーが、同じように自分のプロフィールをスワイプすればマッチが成立し、お互いにメッセージが送れるようになる仕組みだ。気に入れば右へスワイプし、パスするときは左にスワイプするだけという手軽さが人気を博している。友達を探すためのツールがTinder Socialで、Tinderはデーティング・ツールという位置付けだ。
なお、恋愛系アプリはTinderが飛びぬけて有名だが、その他では、以下のアプリがしのぎを削って二番手を狙っている。
この出会いアプリがあまりにも日常的に普及したため、有名なテレビ番組のネタにも使われている。アメリカの動画ストリーミング会社NETFLIXが制作するオリジナル・ドラマ「Master of None」でも、先日、主役のインド系アメリカ人コメディアン、アジズ・アンサリ(Aziz Ansari)が、ニューヨークでこのアプリを使って、お付き合いする相手を探すエピソード「First Date」(シーズン2第4話)を放映したばかり。アプリを使えば、簡単に多数の人と出会うことはできるものの、本当に心が通い合うような相手には、なかなか出会えないという、実際に起こりそうなエピソードの内容が好評を博した。
テレビドラマが物語るように、相手の写真と、ちょっとしたプロフィールを見るだけで分かることは少ない。特に多民族国家であるアメリカでは、気に入った相手の文化的背景とそれに伴う価値観もかかわってくる。あるいはユーモアのセンスなども、短いプロフィールだけでは伝えることは不可能だろう。つまりアプリを使っても、その恋愛がうまくいく保証はないわけだ。
出会いはアプリ。でも、アプリは出会った後のことは助けてくれない。だから出会った後のコミュニケーション・スキルは、自分で磨くしかない。この一見当たり前な常識こそが、ネットでの出会いにおける2017年の常識だ。そして、出会いの「きっかけ」をアプリが運んでくることが増えている現状は、私生活の電子化がどんどん進んでいる証だとも言えるだろう。
カリフォルニア大学バークレー校、大阪外国語大学大学院を卒業。2009年任天堂DSゲーム「ガールズ・モード」の編訳チームに参加、アプリ「DoggyDoc」の英語版ローカライゼーションを担当。2014年、現代日本詩集『トカゲのテレパシー、キツネのテレパシー』をChin Music Press社から出版。2016年には『京都・有次の包丁案内』(小学館) の翻訳チームにも加わった。現在アメリカ大手保険会社のリクルーターとして、目標達成術とモチベーション術を指導している。芸術、自己啓発系の文学を愛読し、日本文化にも造詣が深い。米国ワシントン州シアトル市に在住。