土星の衛星タイタンに生命体の可能性。地球生物誕生の謎も解明か? 

土星の衛星タイタンに生命体の可能性。地球生物誕生の謎も解明か? 


 宇宙の冷たい闇に浮かぶ生命のない惑星で、生きた有機体が突然生み出されるのは、どのような化学反応からなのか。これは科学上、最大の謎のひとつだが、米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が20年前に打ち上げた土星探査機「カッシーニ」から収集されたデータから、最近ある事実が発見された。

 天文系学術誌「アストロフィジカルジャーナル・レターズ」の発表によると、タイタンの大気中データから、地球外の太陽系で初めて複合有機化合物を生成中と思われる分子が見つかった。これまで有機化合物は隕石や彗星、宇宙塵の中にも発見されてきたが、それらは何百万年も昔にできたもので、どのように作られたかを知るすべがなかった。しかし、タイタンでは今まさにその化合物が作られているようなのだ。

 「炭素鎖陰イオン」と呼ばれるこの負帯電分子が、宇宙空間で見つかることはまれだという。しかし、これが存在するとなれば、単純分子と複合有機化合物の間をつなぐ決定的な「ミッシングリンク(失われた環)」になるかもしれない。地球での実験データでは、タイタンには生命の存在を示すアミノ酸もあるかもしれないと示されているが、現在の探査機「カッシーニ」にはその検知装備がない。

 負に帯電した分子が「触媒」となって、単純分子から複合有機体が形成されるというプロセスは、太陽系の外の分子雲でも、星々の死滅期の化学反応として観察されている。星間化学の分野では、そうやって分子雲でつくられた生物の成分が彗星によって地球に運ばれたのかもしれない、という説もある。しかし、今回の分子発見によって、生命発生のプロセスは地球上でも可能なものとわかった。タイタンの大気環境は、約25億年から40億年前の初期の地球に近いからである。

 また、かつて分子雲で起きたのと同じ化学反応が、タイタンでも起きているという事実は、このプロセスの普遍性を示している。もし他の環境でも同様の分子が見つかれば、より大きな有機体、さらにはアミノ酸も存在するかもしれないからだ。冥王星や、海王星の衛星トリトン、あるいは近年発見された何千もの太陽系外惑星はどうだろう、と生命発見の可能性は広がる。

 地球外生物そのものはまだ見つかっていないが、タイタンや彗星の複合有機分子の存在は、今回の発見は生命の起源の発見に確実に近づいていることを意味するものだ。この貴重なデータを採取した「カッシーニ」の20年にもわたる探査旅行の功績は非常に大きい。そのカッシーニは、今年9月、土星の大気圏への最終突入によってそのミッションを終える予定だ。

引用元:Saturn’s moon Titan may harbour simple life forms – and reveal how organisms first formed on Earth
NASAに関する記事 >
Bizseedsでは、アメリカの注目新サービスを日本に展開するお手伝いをしています。ご興味のある方はお気軽にお問合せください。

この記事の寄稿者

関連するキーワード


宇宙 NASA

関連する投稿


テックな水耕栽培で自宅に畑を!

テックな水耕栽培で自宅に畑を!

自宅で手軽に野菜の水耕栽培。それを可能にした技術も、もはや珍しいものではなくなってきたが、35万台の販売実績を誇るCLICK & GROW社の製品は、NASAの技術を応用したテック栽培で大きな支持を得ている。その技術の秘密とは?


世界初! 豪華な宇宙ホテルが予約、受付を開始

世界初! 豪華な宇宙ホテルが予約、受付を開始

ロケットに乗って宇宙に浮かぶホテルに泊まる?! 4年後の業務オープンを告知した宇宙ステーション型ホテル「Aurora Station」のニュースが、宇宙開発もここまで来たかという驚きと、その宿泊費の高さで話題になっている。


1月第3週ニュース・ピックス! アレクサ躍進からエイリアン疑惑まで

1月第3週ニュース・ピックス! アレクサ躍進からエイリアン疑惑まで

先週アメリカでは、どんなことが起こり、何が話題になったのか? 米大手メディアが拾わないような現地ニュースも含め、アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思ったニュースをピックアップ! 今回はラスベガス恒例の「CES」の話題や、北朝鮮の弾道ミサイル発射誤報で慌てたローカル・ニュースなどをご紹介。








最新の投稿


パソコンを使えない日本のサイバー戦略担当閣僚、欧米で大ウケ!

パソコンを使えない日本のサイバー戦略担当閣僚、欧米で大ウケ!

日本政府のサイバーセキュリティー戦略を担当する桜田義孝五輪相が、「自分でパソコンを打ったことがない」ことや「USBを知らない」と報道した日本のニュースを、欧米の大手新聞各紙やウエブメディアが一斉に取り上げ、反響を呼んでいる。アメリカでは各紙の同記事がSNSで拡散され、様々な声が寄せられた。その一部を紹介しよう。


アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。中間選挙では民主党が躍進して下院を奪回したが、上院が共和党支配のままでは民主党の出来ることは限られている。確実に一歩前進したリベラル派だが、その先に続く道は険しそうだ。


成功への選択「新調したマフラー」2018年11月16日~11月22日

成功への選択「新調したマフラー」2018年11月16日~11月22日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


えっ、そこ? アマゾン第2本社、NY市とワシントンDC近郊に決定

えっ、そこ? アマゾン第2本社、NY市とワシントンDC近郊に決定

米アマゾン・ドットコム社の「第2本社」が、ニューヨーク市とワシントンDC近郊アーリントンの二拠点となることが発表された。昨年開始された「アマゾン誘致合戦」の結果は、アメリカに新しい大都市が誕生することを期待していた多くの企業や地域関係者を落胆させたが、同社はこの決定により、さらに成長の加速度を増しそうだ。


シアトルのホームレス人口はなぜ減らない?

シアトルのホームレス人口はなぜ減らない?

アメリカ生活20年を過ぎた翻訳家の高柳準が、アメリカの文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回は多くの画期的な解決策が提示される「ホームレス問題」の中で、「この解決策ってどうなの?」という疑問が沸いてしまうような対策案について、リベラルな著者ならではの視点をまとめてみた。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング