空への夢の始まり⑨――いよいよ航空学科へ!……と思った矢先

空への夢の始まり⑨――いよいよ航空学科へ!……と思った矢先


 一般教養からスタートした大学生活も、いよいよ専門科の授業を取り始めようとしていた頃、航空学科の主任教師がリタイアすることになり、その学科が閉鎖されると聞いて、唖然とした。私が1年半に渡り、ボストン郊外で英語や文化習慣を学んできたのは、あくまでもパイロットになるためだった。この大学から航空学科がなくなるなら、パイロットにはなれない。どうしたらいいのか? 私は焦りと不安から、とにかく行動に出ようとしたが、何をどうしていいのか、誰に聞けばいいのかもわからない。

 親に国際電話を掛けて悩みを話したが、「パイロットの知り合いはいないし、助けてあげられない。アメリカのことも全くわからない」と謝られた。留学中、母がなんども「力になれなくてごめんね」と言っていたが、今となっては、親に何から何まで手助けしてもらわなかったことが、今の自分に繋がっているのだと思う。「自分で頑張れ」とエールを送り続けてくれた両親には心から感謝している。もちろん自分一人の力でここまでやって来れたわけではない。私は長年のアメリカ生活を通して「助けてくれる人」を探すのが上手になったのだと思う。

 学科閉鎖という困った状況に追い込まれた後に、とっさに思いついたのは、「飛行機と言えばボーイング社」。当時の私は相手の表情や口の動きを見ながらならば、何とか会話ができる英語力にはなっていたものの、電話の応対はまだ難しかった。 そんな私が勇気を振り絞って、シアトルのボーイング社に電話を入れたのだ。何度も言うが当時はインターネットがない時代。西海岸のシアトルと東海岸のボストンという長距離では、電話で情報を集めるしかなく、私には無謀とも思える行動に出るしかなかった。

 “Hello! I want to be a pilot. I need an advice, please”と、なんとボーイング社のカスタマーサービス・センターのお姉さんに問い掛けた。必死だった。今、振り返って考えると、お姉さんはいきなり電話口で「パイロットになりたいんだけど、どうしたらいいでしょうか?」などと聞かれて相当困ったことと思う。でも、私は運が強かった。お姉さんは優しい口調で、「ちょっと待ってね」と言うと、私の電話をパイロット部署、それもテスト・パイロットの人に繋げてくれたのだ。そのテスト・パイロットの方はとても親切にアメリカでパイロットになる方法を説明してくれて、さらにアメリカ中の航空大学校のリストを教えてくれた。私は電話口で必死にその情報をノートに書き留めた。電話を切る前に、その方が「実は私の息子もパイロットになりたいと言っている。彼は今グリーン・リバー・コニュニティー大学に 通っているが、将来はセントラル・ワシントン大学に転校して航空学科の学位を取るつもりだ」と教えてくれた。それを聞いた私は単純に「それだ!」と思った。今はネットでいろんな情報を調べることができ、自分に最適の学校を選べるが、当時の私にとっては彼から聞いた情報は「夢に一歩近づいた」気持ちにさせられるものだった。「シアトルとは、どんなところなんだろう?」 
思い立ったらすぐ実行しないと気の済まない私は、その日のうちに春休みにシアトルへ下見に行くための航空券を購入したのだった。

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