オレンジ色の服を着て、狩猟にGO!

オレンジ色の服を着て、狩猟にGO!


 南部の暮らしには驚きがたくさんある。

 アメリカは基本的に都市部を除けば、すべてが「大自然」だと言ってよい。広大な土地には、異なる形のスケールの違う景観が所狭しと広がっている。たとえば テキサス州の西部には、グランドキャニオンさながらの景色が広がり、サボテンが生い茂る。東に進むに従って緑が増え、目にする木もどんどん高くなる。 その合間には広大な牧場が点々とあり、牛や馬の姿も眺められる。テキサス州のお隣にあるアーカンソー州には森林地帯が多いが、アーカンソーも東に進むとミシシッピー川の恵みから、綿花畑や米を育てている水田など広大な景色が広がる。稲穂の姿はどこか日本を思い出させる光景だが、規模の違いに驚かせられる。

 もちろん野生の動物もたくさんいる。我家の裏庭は小川が流れる森林公園に隣接している。敷地内にも動物園さながらに、いろいろな四本足のお客様がいらっしゃる。リスが庭を走り回るのは当たり前。野うさぎ、アルマジロ、スカンク、ハリネズミ、アライグマ、亀、ヘビ、オポッサム、モグラ、鹿の家族等がやってきて、常に私達を楽しませてくれる。

 最近、日本から我家に遊びに来ていた母はそれがとても楽しかったようで、デッキでコーヒーを飲みながら、裏庭を訪れる動物や鳥などを、目を輝かせて観察していた。とはいえ我家がある場所は、州の中では「まだ」都市部に入る。少し車を走らせれば、もっと驚く動物に出会うことがあり、マウンテン・ライオンやコヨーテ、熊なんかも出没する地域もある。ここには書ききれないほどの種類の野生動物が生息しているのだ。

 ところが、こんな可愛い動物達も、数が増え過ぎると生態系や自然を壊してしまうため、ハンター達の出番となる。我家のご近所さんもほとんどの人がハンターで、定期的に開放される認可された地域内でハンティング(狩猟)をしている。とはいえ、誰でも好き放題に何頭もハンティングを出来る訳ではない。鹿のシーズン、鴨のシーズン、弓矢でのハンティングのみ、猟銃でのハンティングのみ、などと狩猟できる期限や条件が決められており、一人何頭または何匹までなら狩猟できるという決まりも地域によって異なる。そして、これらのルールはしかるべき組織により管理されている。

 先日、いつものようにご近所さんと井戸端会議をしていたら、ビーフジャーキーを出してくれた。初めて食べるような味だったが、通常のビーフジャーキーより食感がソフトで味付けも美味しかったので、どこで買ったのかを聞くと「この間、獲ってきた鹿のジャーキーだよ」と自慢げに教えてくれた。私は初めて鹿を食べ、しかもそれと知らぬ間にエンジョイしてしまったのだ。野生動物は料理しても臭みがあると思って敬遠していたが、ハンターたちは狩った動物を美味しく頂くコツを知っている。鹿だと先に聞いていたら、裏庭に来る鹿の家族を思い出してしまっただろうから、知らずに食べて正解だったのかも知れない。我家の裏庭はハンティングをしてはいけない住宅地域なので、うちに来る鹿の家族は裏の森にいる限りは安全であるとは思うが……。

 ほとんどのハンターは自分が仕留めた獲物をブッチャーショップと呼ばれる店に持ち込んで解体してもらい、全て残さず持ち帰って家族で食べる。自然の恵みへの感謝も忘れない。ここのハンターたちは獲物を競う“トロフィー・ハンター”とは違い、ハンティングが子供の頃から生活の一部になっているように思う。小さな頃から猟銃(子供は実弾は使えない)や弓矢の使い方、してはいけないことなど、危険な道具を扱う上でのモラルとその危険性を十分に教育されて育っているので、ハンティングは多くの人々にとって、とても身近なイベントなのだ。

 ちなみに、渡米前に人に言われて気になっていた、「南部でオレンジ色の服を着ていたら、ハンターに撃たれるよ」という話が本当かとご近所ハンターたちに聞いてみたら、みんなに大笑いされ、「撃たれないようにオレンジ色の服を着るんだよ、逆だよ、逆!」と教えてもらった。そして、「ハンティングに参加する時に、格好つけて首に赤いバンダナなどを巻いていると、ターキー(七面鳥)と間違えられて撃たれるからね!」と忠告された。実際、ご近所さんの友人は、本当に間違えて撃たれてしまったというので、これはリアル・ストーリーである。だから、南部に来た旅行者で、首に赤いバンダナを巻こうとする人がいたら、是非忠告してあげようと思う。

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この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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