アメリカのフォーチュン企業の重要施策

アメリカのフォーチュン企業の重要施策


 アメリカは2039年までに人口が4億人に、2050年には4億4千万人に達する。年間に人口の1%に値する移民を受け入れる施策を続けており、2030年からは白人比率の下降が顕著化し、2042年までにマイノリティーの人口比率がマジョリティーを超える。また、人工知能が人間の能力を超えるといわれる2045年問題では、俗にいう技術的特異点(シンギュラリティ)も取り沙汰されており、世の中が大きく変わっていく時代を迎える。

 本稿の「アメリカ人の働き方」にて海外市場における様々なダイバーシティ(多様化)とインクルージョン(受容と活用)について触れた。アメリカでは過去50年間、CSR(企業の社会的責任)、サプライヤー・ダイバーシティの一環として「マイノリティー調達比率の向上」をひとつの指標として、それを達成するための施策を重視した企業評価をしてきた。それには我々のようなマイノリティー承認取得企業が、少しでも路頭に迷うことなく経済全体に寄与できる集団に育てる狙いがある。マイノリティーがマジョリティーを超える流れが本流となり、アメリカ市場においてマイノリティーが需要な顧客やバイヤーに転ずることから、更にマイノリティーを重視することが顕著となってきている。私は、これが日本企業の製品を売り込むきっかけとなればと思っている。

 マイノリティー調達比率向上については、フォーチュン500/1000企業はマイノリティー企業を指導し、成長させていくことに力を入れており、これが一企業市民としての責務となっている。そのなかで、フォーチュン企業が重視している施策プログラムに「ダイバーシティとインクルージョン」が挙げられる。ダイバーシティは女性・男性の比率や人種・エスニックバックグラウンドだけではなく、その他の職能やタレントのダイバーシティも重視されている。世界の社員のダイバーシティや、マイナス面でなくプラスの才能や個性を引き出すインクルージョンの研究が企業内でチームを編成して進められている。

 ダイバーシティ化に取り組めている企業は、全米平均のダイバーシティ企業よりも35%もパフォーマンスが上回るとされている(McKinsey調査)。性別でのダイバーシティ企業は、そうでない企業より収益性が15%高く、2016年の働きたい職場ランキング50社では、24%の企業がそうでない企業の対前年度での成長が上回っており、企業評価の新たな重要な指標となりつつある。また、アメリカの若者たちは、職場選定の項目としても、その点を重視しはじめてきている。今後、アメリカではダイバーシティ構成や企業評価基準やタレントが変化するだけではなく、アメリカ市場の嗜好やニーズが大きく変化してくることが必至である。

 日本でも今後は働き方、社員の性別・人種、才能をはじめ、さまざまな切り口における多様性を反映させていくことが望ましいだろう。

ビジネス・テクニックに関する記事 >

この記事の寄稿者

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。学生時代は日本起業家協会の学生会長を務める。伊藤忠商事大阪本社・宇宙情報産業機械部門に勤務後、1999年よりシカゴのアイティエー・インク (I.T.A., Inc.) にジョインし、2005年より社長。日本の産業分野における対米進出支援、商社業務、リサーチ・調査、IT/テクノロジー支援を中心にニッポンのアメリカ事業部としての支援プラットフォームを構築。また、米国マイノリティ承認を取得し、大手企業へのCSRの一環であるサプライヤー・ダイバーシティ向上を支援している。

米オバマ大統領直轄ホワイトハウスのアジアアメリカ・メンバー(2年間)、 経済加速化イニシアチブに参加。他にも5つの団体で幹部や理事、ジェトロ・コーディネーター等に従事。支援しているインターンは500名以上。

関連する投稿


文化の「盗用」について考える

文化の「盗用」について考える

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。アメリカに住んでいると、たびたび話題になるのが「文化の盗用」。当事者としてこの問題を扱うことになって感じたこととは?


エリートだけが会員になれるデーティング・アプリは社会問題?

エリートだけが会員になれるデーティング・アプリは社会問題?

  アメリカでも結婚相手やパートナーとの出会いに繋がるオンライン・デーティング・サービスの需要は高く、各社は年齢層や地域を限定したり、人種や宗教で括ったり、真剣度の差などを売りにして競っている。そんな中、「会員になれるのは、男女ともエリートのみ」と厳しく限定したデーティング・アプリが注目されている。


日本の逸品、アメリカ人が査定①「ふくらむえのぐ」

日本の逸品、アメリカ人が査定①「ふくらむえのぐ」

「日本の逸品をアメリカ人に手渡したら、どんな反応をするだろう?」。それを見てみたいという好奇心にお応えする企画第一弾は、「ふくらむえのぐ」。 アメリカでは売られていない文具を手にした子供たちの反応は?


黒雪姫は必要ですか?

黒雪姫は必要ですか?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。政治、人種、宗教等の中立性を重視する「ポリティカル・コレクトネス」をめぐり、子供劇団で繰り広げられる悩ましい問題とは?


これからは「ペットが飼主に電話する」?

これからは「ペットが飼主に電話する」?

自宅にカメラを設置し、外出先からスマホでペットの様子を確認できるアプリ類はもう一般的。そこで今度は、外出中の飼主にペットからコンタクトすることが可能なガジェットが登場し、話題になっている。






最新の投稿


大都市に住むアメリカ人たちが知らないテキサス人の真の姿

大都市に住むアメリカ人たちが知らないテキサス人の真の姿

米テキサス州に暮らすイスラム教徒のジャーナリスト・西森マリーが、米国内でも報道されにくい保守派の声やテキサス州など南部の住民たちの声をお届けするコラム。今回は、保守派が多く住むと言われるテキサス州で、人々はどのように軍人を見ているのかがわかるニュースにまつわる話。


学校よりも面白い? ホームスクールでオンライン教育

学校よりも面白い? ホームスクールでオンライン教育

アメリカでは多くの子供たちが学校には通わず、親が自宅で教える「ホームスクール」で勉強している。こうしたホームスクールの多くは、オンライン教育を上手に取り入れており、数あるオンライン・プログラムの中には、『ハリー・ポッター』がテーマの科学の授業などもあり、人気を呼んでいる。


リサイクルよりも環境に優しい店がNYに登場! 容器持参で食材を買う

リサイクルよりも環境に優しい店がNYに登場! 容器持参で食材を買う

食材の買い物には、持参したエコバックを使用する人が増えたが、それでも店が用意したビニールの買い物袋を使用する人は後を絶たない。また、買い物袋だけでなく、パッケージ容器などのプラスティック製品はリサイクルできないものが多く、ゴミはなかなか減らない。そんな現状を変えるべく、さらに環境に優しい店が登場し、話題を呼んでいる。


成功への選択「防寒具」2019年2月15日~2月21日

成功への選択「防寒具」2019年2月15日~2月21日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


【Red vs. Blue】右派には悪夢 左派が熱狂するアレクサンドリア・オカシオ=コルテス

【Red vs. Blue】右派には悪夢 左派が熱狂するアレクサンドリア・オカシオ=コルテス

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回は下院リベラル派の新人女性議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏が全米の注目を浴びていることについて。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング