シリコンバレーの給料は低い?

シリコンバレーの給料は低い?


 IT業界に興味がある人ならば、シリコンバレーのエンジニアの収入についての噂を聞いたことがあるだろう。超一流の大企業やユニークなベンチャー企業がひしめき合い、優秀なエンジニアがたくさん集まる。皆かなりの高給取りで、有名企業ならば大卒新入社員でも年収は1,000万円を軽く超える。

 ほぼ、すべて事実である。しかし、シリコンバレーは生活コストも異常に高く、年収1,000万円程度では「中の下」ほどの生活しか出来ない、という話もある。2014年にはサンフランシスコの住居費がニューヨークを抜いて全米1位になったというニュース

 本当にシリコンバレーで働くことは経済的に豊かな生活に結びつくのか。生活コストの違いに基づいて調整を施した、地域毎のソフトウェアエンジニアの平均給与額が公開された。転職支援サービスを提供する Hired 社によるレポートである。

 まずは単純な地域ごとの地域ごとの平均年俸

やはりシリコンバレーを含む SF BAY AREA ( サンフランシスコベイエリア )が$134Kで最高額となっている。1ドル115円で日本円に換算すると1,541万円になる。それに$126K( 1,449万円 )のシアトル、$120K( 1,380万円 )のニューヨークが続く。確かに高額だ。

 しかし、サンフランシスコ周辺とニューヨークの生活コストは全米1位と2位である。そこで、年俸額が一番高いサンフランシスコ周辺の金額は変えず、生活コストに基づく調整を他の都市に施すとどうなるか


 トップはテキサス州のオースティンで、$198Kとなる。それに次いで$180K前後でコロラド州のデンバー、ワシントン州のシアトル、カリフォルニア州のサンディエゴが続く。ニューヨークとサンフランシスコ周辺は約$133K、最下位まで下がってしまう。ただ、ひとつ注意したいのは、同レポートを作成したHiredは転職支援会社だということである。会社の事業を考えると、シリコンバレーに一極集中しがちなソフトウェアエンジニアの目を他の地域にも向けさせたいのではないかと邪推することも可能ではある。しかし、それを割り引いても、やはり大きな違いである。

 コスト調整でそこまで大きな差が出るサンフランシスコ住民の収入は、どれほど高いのか。つい最近、サンフランシスコと隣接する一部の地域で、住宅費補助を受けられる低所得世帯の上限が$105Kに達したと話題になった。 乱暴な言い方をすれば「世帯年収が1,200万円以下ならば貧乏」なのである。ちなみに、コスト調整前の年俸額で2位、調整後は3位になっているシアトルでは、計算方法が違うものの、$72K(828万円)が低所得世帯の基準になっている
サンフランシスコに比べると霞んでしまうが、これでも日本の基準から考えれば非常に高い。

 2008年のリーマンショックにともなう株価減少が底を打って以来、アメリカのIT業界は好景気が続いている。ソフトウェアエンジニアの需要はどんどん伸び、給与額はどんどん上がり、それとともに生活コストもどんどん上がる……という循環が何年も続いてきた。「これはバブルだ」と言うと、反対する人はほとんど居ない。新卒での就職と共に高給を得た若手エンジニアは自信に溢れているが、良い時も悪い時も経験したことがあるベテランとしては、この揺り戻しがいつ来るのかと不安を感じてしまうのもまた事実である。

この記事の寄稿者

宮城県仙台市出身。宮城県仙台第一高等学校卒業、東北大学工学部情報工学科卒業、東北大学大学院情報科学研究科修了。幼稚園から大学院まで、通った学校すべてが半径3kmの円内に収まっている。日本ヒューレット・パッカード社在籍中に米国駐在。日本帰任後に米国移住を決意、Agilent Technologies、Amazon.comを含むシリコンバレーやシアトルエリアの企業5社に勤務。現在は Microsoft Corporation AI & Research Group にて Senior Applied Scientist として働く。

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