次もトランプが勝つ! アラバマ特別選挙予備選が占う次期大統領選

次もトランプが勝つ! アラバマ特別選挙予備選が占う次期大統領選


 トランプ政権の司法長官になったジェフ・セッションズ(元アラバマ州選出上院議員)の後任を決める「特別選挙共和党予備選」が9月26日に行われ、元アラバマ州最高裁首席判事のロイ・ムーアが勝利した。

 ムーアと一騎打ちで戦ったのは、セッションズの穴を埋めるためにアラバマ州知事に任命され、暫定的に上院議員を務めていたルーサー・ストレンジだった。ストレンジは元アラバマ州司法長官で、体制側からの受けが良い政治家だ。一方、ムーアは首席判事時代に州政府の敷地にモーゼの十戒を刻んだ石碑を設置し、連邦政府からその撤去を命じられた後、断固とし撤去を拒絶したため2003年に辞任に追い込まれた、という過去を持つ筋金入りの保守派クリスチャンである。

 そのため共和党本部は、「上からの命令に従わないムーアは扱いにくく、ストレンジは御し易い」という理由でストレンジを推し、選挙戦に大きな影響力をもつ全米ライフル協会も共和党幹部の意向に従い、ストレンジを支持した。

 しかし、不法移民の安い労働力を歓迎する大企業と癒着した共和党幹部たちの政策にうんざりしているアラバマ州民は、「ワシントンの体制に立ち向かう反逆児」というイメージを持つムーアを支持し、予備選キャンペーンが始まって以来、どの世論調査でも一貫してムーアがストレンジに大差をつけた。そこで共和党スーパーPAC(政治資金管理団体)は3,000万ドルもの大金を投じてムーアを叩くTVコマーシャルを流し、選挙の3日前にはトランプ大統領が、前日にはペンス副大統領がアラバマを訪れて応援演説を行い、ストレンジに投票するようにと人々に呼びかけた。しかし、それでもムーアが投票率10%の差で勝利を収めた。

 アメリカのメディアは「この結果はトランプの影響力低下の象徴だ」と報道しているが、事実はその逆だ。ムーアに投票した人々の多くは熱狂的なトランプ支持者で、「大企業寄りの共和党幹部からトランプを守り、リベラルなイヴァンカ夫妻にトランプが洗脳されることを阻止するべき」という一心から、真の保守派であるムーアをトランプ応援団長としてワシントンに送り込みたい、と願ったのである。彼らは、「不法移民を追放し、壁を造り、トランスジェンダー入隊を禁じ、キリスト教を尊重し、アメリカの利益を最優先する」というトランプの公約を支持するからこそ、体制に媚びないムーアに投票したのだ。

 リベラルなアメリカの主要メディアは、カウボーイ・ハットを被り、馬に乗って投票所に現れたムーアのことを「いまだに十戒を信じている時代遅れの田舎者の奇人」だとして小馬鹿にしている。しかし南部では、自分のキャリアを犠牲にしてまで十戒を守ったムーアは、「人間が作った法律よりも、神の法を重んじる真のクリスチャン」として崇拝されており、今でもthe Ten Commandment Judge(十戒判事)というあだ名で多くのクリスチャンから敬愛されている。それを裏付けるように、今回の選挙ではアラバマ州のみならず、テキサス州やミシシッピー州に在住する大勢のクリスチャンたちも、「司法界の殉教者を政界で復活させよう!」と、アラバマの共和党支持者たちに電話を掛けてムーアへの投票を呼びかけ、見えないところで積極的にムーア支援活動を行っていた。

 アメリカの主要メディアの記者たちは、南部のクリスチャンを見下し、無教養な田舎者の南部人とはできる限り接触を避けたいという傾向が強い。そのため、予備選を取材するためにせっかくアラバマ州へ出張しても、「ここではストレンジの選挙CMしか流れていない」という表面的な事実や、「ムーアは演説中にポケットから銃を取り出して振り回した危険な人物だ」というようなリベラルな視点からのリポートしかせず、州民の本音を反映することができなかった。

 もし大手報道機関が、南部の教会で潜伏取材をして信者たちの心境を聞き出していたら、ムーアの当選を予測し、勝利の理由を正しく分析することができたはずだ。昨年の米大統領選と同様、今回の予備選でもアメリカのメディアが大幅に焦点のずれた分析をしている理由は、リベラルな記者やリポーターたちが南部の教会の底力を把握できないからであろう。

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