海水から作られる食用塩のマイクロプラスチック汚染が明らかに

海水から作られる食用塩のマイクロプラスチック汚染が明らかに


 海水や水道水、大気などは人間にとってなくてはならないものだが、それが汚染されていても「目に見えない」ため、自分たちがどれほどの汚染物質を体内に摂取しているのかは分かりにくい。そんな「見えない汚染」を調べた最新の研究のひとつにより、世界の海水から採取する食用塩のほぼすべてに、微細なマイクロプラスチックが含まれていることが明らかになった。

 『ガーディアン』紙が先月入手した情報によると、米国ニューヨーク州立大学のシェリー・メイソン教授がミネソタ大学と共同で行った研究で、海塩(海水から作られた食用塩)にプラスチック成分が含まれていることが分かった。これは、水道水のプラスチック汚染に続き、地球環境のいたるところにプラスチック粒子が広がり、食物連鎖に入り込んでいることの新たな証拠となる。

 同研究では、米国の食料品店で売られている世界各地からの食用塩に含まれる微細なプラスチック粒子「マイクロプラスチック」を分析した。その分量から推定して、米国人は毎年660個を超えるマイクロプラスチックを体内に取り込んでいると考えられるという。しかも、これは米公衆衛生局の定める一日あたり2.3グラムの塩を元にした計算で、実際には米国人の90%がそれ以上の塩分を摂っているため、プラスチック摂取量はさらに多い可能性がある。

 海塩は、海水から水分を抜くだけという製法のため、含まれていたプラスチックがそのまま残る。塩の中から見つかったプラスチック成分の大部分は、顕微鏡でしか見えない大きさのマイクロファイバー(超極細繊維)と、ペットボトルなど使い捨てプラスチックの破片だ。『ガーディアン』紙によると、現在、毎分100万本のペットボトルが生産・購入され、その数は2050年までに4倍になる見込みだが、回収・リサイクルの速度はまったく追いついていないという。国連は毎分ゴミ収集車一台分(年間1260万トン)のプラスチックが世界の海に流れ込んでいると報告しており、今やプラスチック汚染は「気候変動に匹敵する脅威」だと言う環境学者もいる。

 食用塩の中に初めてプラスチックが発見されたのは2015年、中国で売られていた塩の調査だった。今春にはフランス・英国・マレーシアの研究者グループが、8カ国から集めた17種類中16種類の塩に、ポリエチレンとポリプロピレンを主とするプラスチック粒子を発見した。今年8月、スペインの研究者も21種類の食卓塩すべてからペットボトル原料のポリエチレン・テレフタレートを検出した、と英国の総合学術誌ネイチャーの電子ジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ」に発表している。

 プラスチックの体内摂取が人の健康にどのような影響を及ぼすかは、まだわかっていない。プラスチックを取り込んでいない人間のコントロール・グループ(統制群)を見つけられないため、対照実験が不可能だからだ。同研究を指揮したメイソン教授は、「微細なマイクロプラスチックが塩を含めた多くの食べ物や飲み物に含まれていることを知れば、消費者は塩のブランドを取り替えようとするかもしれないが、中国産の塩も米国産の塩もひとつの海から来ているため、それは解決にならない。我々は環境中に広がるプラスチック汚染の問題を直視し、プラスチックに代わる素材を見つけなくてはならない」と語っている。

引用元:Sea salt around the world is contaminated by plastic, studies show
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