ハロウィンのお菓子

ハロウィンのお菓子


 もうすぐ、ハロウィンだ。アメリカでは、オレンジ色のかぼちゃを削ってジャック・オー・ランタンをつくり、多くの家庭では大きな袋に小さなお菓子がたくさん入った詰め合わせを買ってハロウィンの準備を進める。そして、子供たちが仮装をして、お菓子を集めに近所を歩き回る一夜のために、家々はお化けや魔女、骸骨などの不気味な装飾で飾られる。

 ハロウィンは、死者の霊をしのんだり、悪霊から身を守るための古代ヨーロッパの祭りや伝統から進化したと信じられている。今日では、子供たちや地域社会が楽しむ行事、そして、ほとんどの休日と同じように大量消費の機会になっている。

 ハロウィンの夜、仮装した子供たちは、その日のために飾られた家や玄関灯が点いている家を探す。そして、ドアをノックして「トリック・オア・トリート!」と叫ぶ。これは遊び心のある脅しで、文字通り訳すと「お菓子をくれないと悪戯するよ!」という意味だ。なかには、お菓子の有無に関わらず、かぼちゃを割ったりするような小さな悪戯をするティーンエイジャーもいるが、ほとんどの子供たちは、お菓子をもらいに行くだけで、悪戯はしない。子供たちは「トリック・オア・トリート!」と叫んだ後、それぞれのバックを差し出す。そして、それぞれの家の大人たちは、子供たちのコスチュームを褒めたり、怖いふりなどをしながら、各自のバックにお菓子を入れてくれるのだ。

 この日の 子供たちは、お化けだけでなく、好きなテレビ番組やアニメ、ビデオゲームのキャラクターなどに扮装する。なかには大人でも、この日にコスチュームを着ることを楽しむ人もいる。家庭によっては、精巧でユニークなコスチュームを作るために、ものすごい努力をするが、親たちは子供たちが欲しがる使い捨ての輸入されたコスチュームを喜んで買う。それにより、コスチュームを作る時間と面倒を節約することができるからだ。

 僕が子供だった頃、両親は僕と兄のためにコスチュームを作ってくれた。僕らは、お化けやカウボーイ、野球選手になった。両親は僕らと一緒に近所を歩き、僕らがドアをノックしてお菓子を集めている間、他の親たちと挨拶したり話したりしていた。そしてその夜の終わりに、僕らのバックの中身を見て、僕らが持つべきではないものを受け取っていないかを確認した。当時は、果物や各家庭で手作りしたお菓子やポップコーンを貰うことは珍しくなかった。それらは一般的に安全だった。なぜなら、僕の両親は近所のほとんどの人を知っていたし、誰が何を子供たちに渡していたか見ていたからだ。最近は、昔のような近所づきあいをしている人は少ない。だから大抵の家庭では、手作りや市販のパッケージに入っていないお菓子は、家に戻った後、そのままゴミ箱に捨てることが多い。

 また、その日は誰もが皆、お菓子を配るわけではない。人によっては、その夜に外出するか、家中の明かりを消して、誰も家にいないように見せかける。また、お菓子を入れた箱を玄関先に置き、自由に持っていくようにと張り紙をする人もいる。歯ブラシをあげたり、安いプラスチックのおもちゃをあげたり、1セント硬貨がたくさん入った小さな袋をあげたりする人もいる。ほとんどの子供たちは、ハロウィンに貰う新しい歯ブラシなんて喜ばないが、親たちは一般に承認している。そんな中で子供たちにとってのその日のヒーローは、ハロウィン・サイズの小さなお菓子(一口サイズ)ではなく、普通サイズのお菓子をくれる人だ。そして親たちの中でのヒーローは、子供たちがお菓子をもらうために玄関先に来た時、親たちのために温かい林檎サイダーやビールを用意してくれる人だろう。

 僕が今、住んでいる家の近所には子供たちがいないため、ハロウィンの夜にはお菓子を集めにこない。でも万が一、誰かがドアをノックするかもしれないので、家の中には適切なお菓子を用意しておく。もしハロウィンのすぐあとに子供たちが僕の家にお菓子をもらいに来たら、僕は大盤振る舞いするだろう。ハロウィンの後はいつも、僕の家にはたくさんのお菓子がある。スーパーマーケットでは売れ残ったハロウィン用のお菓子が大セールになるからだ。ハロウィンのお菓子が並んでいた棚を空けて、そこにサンクスギビング(感謝祭)用の商品を陳列するために。

この記事の寄稿者

 アメリカ中西部オハイオ州の小さな田舎街に生まれる。オハイオ州立大学に通った後、アメリカ各地を転々と暮らしながら旅をした経験を持つ。これまでに就いた職業は飲食業、ツアーガイド、ミュージシャン、セールスマン、オフィス勤務、物書き、長距離トラック運転手、花屋さんなど多岐に及ぶ。現在はワシントン州にある国際輸送業関連会社に勤務し、平日は会社でデスクワーク、週末は趣味のハイキング、ランニング、写真撮影などに勤しんでいる。料理と食べること、そして自分と異なる文化を知ることが何よりも好き。文化の違いを学ぶだけでなく、共に美しい地球上で生きる者として、その差異の中にも人間として何か共通点を見つけることを常に心掛けている。

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