トランプ大統領夫人、ネットいじめへの「模範」を説く

トランプ大統領夫人、ネットいじめへの「模範」を説く


 先月ニューヨークで開催された国連総会で、ドナルド・トランプ大統領は国連で初の演説を行なったが、メラニア・トランプ大統領夫人も、世界各国の指導者の家族を招いて開催された国連昼食会の席で演説した。夫人は麻薬中毒、いじめ、貧困、人身売買、文盲、飢餓など、世界の子供たちが直面する様々な問題に焦点を当て、「大人として私たちには責任がある」と訴えた。その演説の中で夫人は、ネットいじめなどについて、「自分たちがまず模範を示して」子供たちを指導することの重要性を強調。これを受けてアメリカのメディアは、トランプ大統領のツイッターによる個人攻撃の数々を例に挙げて、夫人のスピーチを揶揄した。これについてRedとBlueはどう言うか?

出典『TIME』
元記事:Melania Trump Urges Adults to Teach Children About Cyberbullying 'By Our Own Example'

RED: タイム誌は全てをドナルド・トランプに関係させたがる
“Time Magazine thinks everything in the world is about Donald Trump”

 すべてがトランプに関係すると考える米主要メディアとは反して、私の周囲では驚くほどドナルド・トランプを中心に回ってはいない。メラニア・トランプが国連で短い演説を行い、その一部としてネットいじめについて触れた。すると、ジャーナリストや政治評論家は「ネットいじめとソーシャルメディアの危険性」について議論を広げるのではなく、メラニア・トランプを批判し、その延長でトランプ大統領のツイッター使用について批判した。

 ソーシャルメディアには中毒性がある。18歳未満の子供たちがFacebookなどのソーシャルメディア・ネットワークのサービスにアクセスできるのは危険だ。2015年の『メディカル・デイリー』誌によると、薬物や麻薬の使用に関連する強迫性の行動や脳の活動の多くが、ソーシャルメディア使用中にも発生すると報告されている。ひとつだけ違うのは、ソーシャルメディアをやり過ぎても死ぬことはないが、両者とも人間の頭に中毒に似た習慣性をもたらすのは間違いない。さらにソーシャルメディアは若者の外見、趣味、宗教、家族、友人について広範な人々が意見を言ったり、時には侮辱や脅迫をしたり、いじめをすることも可能にする。家族以外の人々からの承認を求めている若者たちにとっては、それは破壊的なものになり得るし、まれにはうつ病、不安症、自殺などに繋がる考えに発展しかねない。

 しかし、これがドナルド・トランプとはどういう関係があるのか? 関係など、ない。何百万、いや、もしかすると何十億の人がソーシャルメディアを使っているが、メディアと共産無政府主義になりたがりのANTIFA以外の誰も、米国大統領がソーシャルメディアで140文字以下のテキストを送ることなど気にかけていないだろう。私が気にかかるのは、たとえば核武装した北朝鮮の独裁者やイランのテロリスト、米国の不法移民などについて大統領がどうするかである。


BLUE:メラニア・トランプは夫のツイッターをフォローしていないのか?
“Does Melania Trump Not Follow Her Husband on Twitter?”

 大統領夫人たちは伝統的に、子供の肥満、アルコール依存症、平等の権利などそれぞれに目標を掲げて社会に貢献してきた。メラニア・トランプが彼女のトレードマーク・プロジェクトとして「ネットいじめ」をとりあげたのは非常におもしろい。それはとても価値のある課題だが、彼女の夫ドナルドは、ネット上で最も目に付くいじめをしている有名人だ。彼は、俳優や世界の指導者、彼自身の政党のメンバー、スポーツ選手などへ、ネットという公共の場で嫌がらせや侮辱をすることで世界中の人に知られている。彼は自分の有権者に印象付けるために喜んで特定の企業や宗教を非難し、不正行為をしているとしてよその国のすべてを非難する。下品で、無礼で、意地悪で、そのあげく自分の攻撃力が弱められそうになると事実をさっさと忘れ去ろうとする。トランプは、多くの人々が彼の言うことなら何でも信じることを知っており、それをうまく利用しているのだ。

 トランプは典型的ないじめっ子であり、インターネット上で彼を避けるのは不可能だ。それなのになぜ彼の妻は、いじめに関心を集めようとするのだろうか? もしや、助けを求めているのだろうか? それとも謝罪のつもりなのか? 彼女の夫が何かの有罪判決を受けた時に、自分が裁判所でよく見えるようにしておくためだろうか? 演説の中で彼女は、「大人は子供たちのために良い手本をネットで見せなければならない」と言ったが、自分の11歳の息子が父親であるトランプのツイッターを見たことがないことを願っているにちがいない。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

トランプ大統領に関する記事 >

この記事の寄稿者

関連する投稿


権利意識が社会を変える:アメリカ女子アイスホッケー(前編)

権利意識が社会を変える:アメリカ女子アイスホッケー(前編)

アイスホッケーの在米コーチである著者が、アメリカのプロスポーツ・ビジネスの構造や考え方、ユース・スポーツの育成、アプローチ方法などを情報満載でお届けする、若林弘紀のコラム『スポーツで知るアメリカ』。平昌オリンピックの開幕まで、あと約1カ月。今回は注目の女子アイスホッケーで、なぜ北米が優位なのかを解説する。


トランプ大統領は現代のロビン・フッドだ

トランプ大統領は現代のロビン・フッドだ

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、アメリカ国内でも報道されない保守の声をお届け。トランプ支持がなぜ悪い? 西森マリーの「アメリカ保守派の考え方」。先日、新税制改革法を通したばかりのトランプ大統領。彼こそが「現代のロビン・フッド」だと評価する保守派の考え方とは?


【Red vs Blue】トランプ政権、米疾病管理予防センターに「7つの用語」の使用禁止を通達

【Red vs Blue】トランプ政権、米疾病管理予防センターに「7つの用語」の使用禁止を通達

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は、先月半ばに現政権が米CDCに対して「多様性」などの用語の使用禁止を通達したことについて、両者が意見を戦わせる。


絶叫&爆笑必須! 世界一シュール(かも知れない)動物園

絶叫&爆笑必須! 世界一シュール(かも知れない)動物園

シアトルから車で数時間、オリンピック山脈の麓の街スクイムにある「オリンピック・ゲーム・ファーム」。アメリカでも知る人ぞ知る穴場だが、これほど動物との距離が近い動物園はなかなかない?


ミレニアムのテレビは「コード・カッティング」

ミレニアムのテレビは「コード・カッティング」

進化を続けるオンライン事情により、日々豊かに変化していく人々の暮らし。そんな世界で賢く生きる術とは? デジタルマーケティング専門家、ティム・ポールが解説するコラム『オンラインと僕らの生活』。最近はアメリカの一般家庭でも自宅用の電話を引かず、携帯電話だけにする人が増えたが、テレビもまたその流れを追っている。






最新の投稿


【Red vs Blue】NYタイムス紙の詩織さん報道 レイプ被害者に対する日米の視点の違い

【Red vs Blue】NYタイムス紙の詩織さん報道 レイプ被害者に対する日米の視点の違い

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は米メディアが取り上げた日本の「詩織さんレイプ被害事件」について。通常は意見が対立するレッドとブルーだが……?!


 1月第1・2週ニュースピック! スマホからホワイトハウスまで

1月第1・2週ニュースピック! スマホからホワイトハウスまで

先週アメリカでは、どんなことが起こり、何が話題になったのか? 米大手メディアが拾わないような現地ニュースも含め、アメリカ人たちが「これは見逃せない!」と思ったニュースをピックアップ!今回は2週間の拡大版。背筋が寒くなりそうなテック・ニュースなどに注目!


シアトル市の新しい税金にコストコもため息?

シアトル市の新しい税金にコストコもため息?

アメリカでは、日本ではあまり馴染みのない不思議な税金が課せられることがある。新年から導入されたシアトル市の新しい税金には、消費者だけでなく、コストコのような量販店もため息交じりだ。


訳が分からないアメリカの不法移民問題

訳が分からないアメリカの不法移民問題

保守とリベラル派の対立が激化し、「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。1,100万人以上とされるアメリカの不法移民。トランプ政権発足後、取り締まりが強化されているが……。


権利意識が社会を変える:アメリカ女子アイスホッケー(前編)

権利意識が社会を変える:アメリカ女子アイスホッケー(前編)

アイスホッケーの在米コーチである著者が、アメリカのプロスポーツ・ビジネスの構造や考え方、ユース・スポーツの育成、アプローチ方法などを情報満載でお届けする、若林弘紀のコラム『スポーツで知るアメリカ』。平昌オリンピックの開幕まで、あと約1カ月。今回は注目の女子アイスホッケーで、なぜ北米が優位なのかを解説する。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング