「アメリカ・ファースト」の米商務省 カナダ製ジェットに過重関税

「アメリカ・ファースト」の米商務省 カナダ製ジェットに過重関税


 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト主義」が、いよいよ実際の政策として現れてきたようだ。

 今月6日、米商務省は、カナダの重工業大手ボンバルディア社のジェット旅客機「Cシリーズ」に、約80%もの反ダンピング関税を課すことを提議した。これは、4月に同社の不当なダンピング(国際商取引法上、人為的な安値で海外に製品を売ること)を訴えた米ボーイング社の主張を認めたものだ。この関税はボーイング社のもうひとつの訴え(ボンバルディア社が国外競争上、カナダ政府補助金から不当な利益を得ているとしたもの)に対して前週発表された、219%の相殺関税とは別につけ加えられるため、「Cシリーズ」には合計300%近くの関税を課すことが仮決定された。

 最終決定は来年2月、国際貿易委員会(ITC)によって行われるが、もしこの二つの関税が承認されたら、米国内で販売されるカナダ旅客機の値段は4倍となり、事実上、ボンバルディア社を米国市場から締め出すことになるだろう。

 米商務省のウィルバー・ロス長官は、この関税は米国とカナダの貿易条件を公平にするための取り組みだと説明。同長官は、「我々は引き続き、米国企業とその従業員を守るため最善を尽くしながら、この決定の正確性を検証していく」と話したが、ボンバルディア社は、米国内のカンザス州ウィチタでもジェット機製造や飛行テスト、サービスセンター運営を行っており、1,600人の従業員がいる。

 一方、米ボーイング社はこの提議を歓迎しているが、これらの関税がITCに承認されるためには、同社がボンバルディア社のビジネス手法によって直接の被害を被ったことを証明しなくてはならない。

 ボンバルディア社は、この提議は「米国商取引法の甚だしい拡大適用かつ悪用」であり、関税差額の計算において「航空産業の現実を完全に無視している」と、米商務省の対応を批判。この関税は同社が2016年以降、米国アトランタに本社をおくデルタ航空に75機もの「Cシリーズ」旅客機 CS100 を販売することで合意した、数十億ドル規模の取引に関係してくる。この発表を受けて、デルタ航空社CEOのエド・バスティアン氏は、「我々はそのような関税の支払いを強要されない」として国際貿易委員会へ抗議した。

 カナダと英国の両首脳はこの決定に強く反発した。ボンバルディア社は北アイルランドでも数千人を雇用しているため、この論争はイギリス連合王国全体を巻き込んでいる。メイ英首相は、英国軍を顧客としてきたボーイング社に対し、「これは長年のパートナーに期待するような態度ではない」と非難。両国首脳はトランプ米大統領にこの件への介入を求めている。

 この関税決定の行方によっては、アメリカを代表する重工業企業ボーイング社は今後、国際軍事産業の契約競争で痛手を負う可能性も高いだろう。現政権の「アメリカ・ファースト主義」が、世界経済の流れを俯瞰した上で、国際貿易委員会の決定にどのように影響するのかが注目される。

引用元:Bombardier Hit With New U.S. Jet Duties After Boeing Complaint
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