ソフトバンクがアメリカを制覇する日

ソフトバンクがアメリカを制覇する日


 現在、アメリカのビジネス界で最もその動向が注目される日本企業と言えば、何といってもソフトバンクであろう。孫正義氏は日本の実業家としてアメリカでも知られているが、ここ最近、アメリカで彼の名を目にしない日はほとんどない。

 孫氏が一般のアメリカ人にも知られるようになったきっかけは、トランプ大統領のツイッター・コメントによる部分も大きい。選挙を勝ち抜き大統領への就任が決まったトランプ氏が、「マサが500億ドルをアメリカ企業に投資し、5万人の雇用を新たに生むことを約束してくれた」とツイートしたのは昨年12月7日のこと。二人のツーショット写真が日本のメディアでも取り上げられていたので覚えている人も多いと思うが、このツイートはアメリカでも特に保守層の間で拡散され、「リベラルはトランプ政権誕生に納得していないようだが、彼は偉大な大統領になる。すぐさま公約通りにアメリカの雇用に働きかけをしてくれた」と、歓迎モードだった。

 「あの日」に孫氏が交わしたトランプ大統領との約束は、着々と守られつつあるようだ。10月16日には、かねてから噂されていたソフトバンクによるUber社への投資が、来週にも合意に達する見通しであることが報道された。このニュースは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌が主催する「Dライブ」というテクノロジー会議に出席したUber役員の一人、アリアナ・ハフィントンが明らかにしたもので、その投資額は100億円にもなる可能性が高いという。これが実現すれば、ソフトバンクはUberの株式の20%前後を取得することになり、同社の大株主に躍り出ることになる。

 このニュースとほぼ同時に、ソフトバンクがアメリカの携帯電話会社で業界大手第4位のSprintとドイツテレコム傘下にある業界第3位のT-Mobile USを経営統合させる可能性が高まったというニュースも浮上した。この統合が実現すれば、業界1位のVerizon Communicationと第2位のAT&Tに迫る規模になる。

 ソフトバンクがSprintを買収したのは、今からちょうど5年前の2012年10月15日のこと。ソフトバンクはその後、T-Mobile USとの経営統合を目指していたが、アメリカ連邦通信委員会(FCC)などからの承認が取れずに中断していた。統合の発表は、早ければ10月中に行われるとみられている。

 さらに10月17日、『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌が、ソフトバンクがオーストラリアのレンドリース・グループとインフラ関連の合弁事業を立ち上げ、全米に約8,000の携帯電話基地を取得することを伝えた。ソフトバンクは、グローバルにテクノロジー分野へ出資することを目的とした「ビジョン・ファンド」を保有し、すでに93億ドル調達していると言われているが、第二の大型ファンドを調達する動きにも出ており、さらなる事業投資をアメリカ国内で進めるのではないかとみられている。

 立て続けにアメリカ市場で積極的な動きを見せるソフトバンクに対して、アメリカの投資家たちも舌を巻いているが、こうした動きが急激に進んでいる背景には、トランプ大統領が昨年、孫氏と会談した際に「検討する」と回答した様々な規制の緩和が功を奏しているのかもしれない。ソフトバンクの積極的な動きが何を意味し、最終的に何を求めているのか――今後の同社の動きからは目が離せそうにない。

引用元①:SoftBank's deal to invest in Uber 'very likely' in the next week, Arianna Huffington says
引用元②:SoftBank Venture Seeks 8,000 Cellular Sites Across U.S.
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