49ersが試合開始前の国歌演奏中にひざまずき、ペンス副大統領は退場

49ersが試合開始前の国歌演奏中にひざまずき、ペンス副大統領は退場


 NFL(全米フットボール連盟)の選手の間で、人種差別に対する抗議行動として試合開始前の国歌演奏中に起立せずに膝をつく動きが広まり、トランプ大統領がこれに対して批判的な発言をしていることは、10月12日の本コラムに掲載したが、アメリカでは騒ぎが続いている。

 今月8日に行われたサンフランシスコ49ers(フォーティナイナーズ)戦にペンス副大統領が観戦に訪れたが、試合開始直後に退場した。副大統領はその理由を「選手たちが国旗と米軍に対して敬意を払わないのは許せない」とツイッターで説明。これに対し49ersのエリック・リード選手は、「軍にも国旗にも関係ない。(この抗議は)平等と社会的な抑圧を訴えるためだ」と言い、「我々が抗議行動をすることをペンス副大統領は知っていた。これは単なるスタンドプレーで、我々の努力を踏みにじろうとする行動に過ぎない」と副大統領を非難している。さて、このニュースをRedとBlueはどう受け止めたか?

出典:『NBC Bay Area』
元記事:Pence Leaves 49ers Game After Players Kneel During Anthem

RED: NFLはようやく光を見た
“The NFL is finally seeing the light”

 社会正義という名の元で憤慨するアメリカの愚か者たちほど苛だたしいものはない。彼らは、全米フットボール連盟というエンターテイメント業界の100万ドル・プレーヤーたちに、仕事中に抗議行動をすることを許したのだ。それは許されるべきことではない。人々はフットボール選手たちが、比喩的に言うならば国歌に唾を吐き、星条旗を侮辱し、フットボールを仕事としてプレーできる機会を与えてくれている国に対して腹を立てているのを見るために、高額を支払って(広告、チケット、グッズ販売を通して)NFLの試合を見ているのではない。

 とはいえ、NFLのチケットの売り上げが大幅に減少し、TV試合中継の視聴率が落ちた後で、ダラス・カウボーイのオーナー、ジェリー・ジョーンズは「国歌演奏中に抗議行動をした選手はベンチ入りにする」と発表した。さらにNFLは、このナンセンスな抗議行動を連盟全体で禁止することを考慮しているという。これはNFLが過度な愛国主義者だからではないだろう。私が思うにNFLは、選手たちが自分たちとそれぞれのチームをバカにすることなどは問題にしていないが、現実的に収益がかなりの打撃を受けているため、これ以上、選手たちの子供っぽい行動で経済的痛手を負うわけにはいかないと判断したのだろう。


BLUE:マイク・ペンスのスピーチの後、観客も退場した
“People Walked Out of Mike Pence's Last Speech, Too”

 NFLフットボール選手たちが国歌演奏中にひざまずくのは、多くの黒人たちが警官によって殺されたことに対する抗議を表明するためだ。国歌演奏中に起立するのはアメリカの伝統であるため、選手たちの行動に対して憤慨する人もいる。しかし一方で、銃規制が厳しすぎるからという理由で、抗議行動のひとつとして近所のスターバックスに銃を持って入店する人に対して、憤慨する人たちもいる。国歌演奏中に起立するのと同じように、不公正に対して抗議するのはアメリカの伝統である。我々はアメリカが国家になる前から、抗議運動を行なってきた。

 今月トランプ大統領は、ツイッターでフォロワーに向けて「NFLの試合で選手の誰かが国歌演奏中に抗議行動をしたら、会場から去るように」というメッセージを出した。おそらくペンス副大統領は選手がひざまずいたことに、本当に憤慨したのかもしれない。あるいは、ただ自分のボスが命じたことに従っただけかもしれない。しかし、100ドルかそれ以上する高額のNFLチケットを買って入場した通常のフットボールファンは、選手がひざまずいたかどうかには関係なく、そのまま試合を観戦するだろう。そしてボスに逆らうことを夢見るファンたちは、自分の心に正直に勇気を持ってひざまずく選手たちを賞賛するだろう。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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