EV自動車レースを制するのはテスラではなくバス会社?

EV自動車レースを制するのはテスラではなくバス会社?


 電気自動車(EV)市場の競争がますます本格化している中、注目のテスラ社はEV乗用車「モデル3」の出荷の遅れと格闘し続けている。それをよそに、EV市場の進化と普及の動きは乗用車よりも、バス業界で加速しているという。ロサンゼルス、シアトル、ニューヨークなど米主要都市の公共交通機関が、環境に配慮して将来的に二酸化炭素排出量ゼロのEV車両への完全移行を決めたため、EVバスの需要が高まっているのだ。

 急成長する米国のEVバス市場で、現在、主導権を競っているのは中国のBYD社と、米カリフォルニア州のプロテラ社だ。この二社に加えて、北米大手輸送車両メーカーのニューフライヤー社も販路を拡大している。

  中国のEV市場を支配するBYD社は、「世界最大のEVメーカー」を自称し、米国市場での成功を狙っている。今月、カリフォルニア州ランカスターに米国最大規模のEV車生産工場をオープンしたばかりだ。創業者の王伝福氏は、10月6日の開業式典で、「年間1,500台のEVバスを生産すると同時に大量の雇用を創出し、グリーン・テクノロジー(環境技術)が環境のみならず、ビジネスにおいても優れていることを証明する」と宣言した。同社は長年、投資家のウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイ社(同社株の約8%を保有)からも巨額の出資を受けている。

 元テスラ社員のライアン・ポップル氏が率いるプロテラ社も、7月、ロサンゼルス近郊に2番目のバス工場を開設した。 同社は技術面で突出することを目指しており、先月、同社のEVバス「キャタリスト」を、1回の充電で1,100マイル以上走らせる最新バッテリーパックの実演を行った。同社チーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)のマット・ホートン氏は、「部品を自前で設計して製造すれば、ずっと低価格で高性能な製品が作れる」と語り、ベルギーの長距離バスメーカー、バンホール社ともバッテリーパックの供給契約を結んだことを明かした。

 ニューフライヤー社も最近、アラバマ州アニストンの研究開発施設にさらなる投資を行った。EV車に特化するBYD社やプロテラ社とは異なり、ニューフライヤー社はEV、ディーゼル、天然ガス、ハイブリッドと、さまざまな動力の選択肢を提供して顧客のニーズに応える戦略を採っている。同社のポール・ソーブリーCEOは「当社も二酸化炭素排出ゼロに向かう動向は見ている」と環境への配慮を強調し、ディーゼルからEVへの移行は「劇的には変化しないが着実に進むだろう」と予想している。

 これまでEVバスの普及は、高価格、航続距離、充電施設などの問題がネックとなっていた。しかし近年は性能が高まり、一台あたりのコストは数年前の約100万ドルから約70万ドルまで引き下げられた。ディーゼル・バスの約40万ドルに比べるといぜん高価だが、EVメーカーは燃料費とメンテナンス費の低さから、EVバスの割高分には十分お釣りがくると主張している。

 EV車両全体の中で、EVバスの売り上げが占める割合はまだ小さいが、1日に数百人を運ぶ都会の乗合バス1台を、個人乗用車1台と比較すれば、そのインパクトは大きい。BYD社の王氏は「我々の生産するEV車が全米に配備されれば、“新しい標準”になるだろう」と話している。今後も、EV車の覇権をめぐる攻防から目が離せない。

引用元: Take A Seat, Tesla; The Real Revolution In EVs For The Masses Is On The Bus
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