「マインドフルネス瞑想」がアメリカを救う?

「マインドフルネス瞑想」がアメリカを救う?


 「マインドフルネス瞑想」がアメリカ国内でブームになって久しい。今や有名企業の社員研修やビジネススクールの授業などでも取り上げられ、そのルーツとも言える仏教への関心も高まっている。そんな中、『モラル・アニマル』、『ノンゼロ』などのベストセラーで知られる科学系作家、ロバート・ライト氏の最新刊『なぜ仏教は真実なのか』が話題だ。なぜ、これが話題なのか? それは同書が「マインドフルネス瞑想によるアメリカ救済シナリオ」を真剣に説いているからである。

 「アメリカ救済」などと言うと大げさに思うかもしれないが、著者のライト氏は真剣だ。アメリカでは昨年の大統領選挙を通して、政治的分断が生まれた。その様は「党派の対立」と言うよりも「部族的」とも呼んだ方が語彙が柔らかく、説明が分かりやすくなるかもしれない。同氏によれば、この「部族間の闘争」を引き起こしているのは心理学上の「認知バイアス」であり、そこで重要な役割を果たしているのは、認知ではなく感情だという。

 その例として「確証バイアス」と「根本的な帰属の誤り」という二つの認知バイアスがある。「確証バイアス」とは自分の世界観を支持する情報は受容・保持し、反する情報は拒否・無視しがちな心理傾向を指す。人々がソーシャルメディア上でフェイクニュースであっても無批判にリツイートしたり、シェアーしてしまうのは、その情報が、その人が観念上で属している「部族」に好都合(そして敵の「部族」には不都合)であり、それを拡散することでポジティブな感情を味わえるからだという。

 「根本的な帰属の誤り」は、同じ部族の仲間の過ちは「状況」のせいとして擁護し、敵や競争相手の過ちは彼らの「属性」によると決めつけることで、こちらも感情によって引き起こされる。しかも感情は人間をひとつの思考に固執させるため、ひとたび相手を敵と分類すると、そのレッテルを変えさせるのは難しい。そのため、認知バイアスを通して互いを見るアメリカ人が多いほど——自分がどちらかの部族に属していると考える思い込みが強いほど——、部族間の和解は遠ざかるという。

 著者は、「マインドフルネス瞑想」こそが、これらの認知バイアスを弱め、部族間の橋渡しをするのに役立つと主張している。その理由のひとつが、アメリカでは瞑想はかなり一般に浸透しつつあること。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の2012年調査では、成人アメリカ人の1,800万人が瞑想をし、2,100万人がヨガを行っており、数字はさらに増加中だ。しかも「マインドフルネス瞑想」の目的は、愛や思いやりといった温かく曖昧な感情を養うことではなく、むしろ冷静で客観的な観察であるため、宗教的な抵抗が少ない。「毎朝リラックスして20分から30分」、自分の中に湧き上がる感情に気づき、それについて考えることで、反射的に感情に従うのではなく、熟考して決めるようになり、結果として認知バイアスへ流されずに済むという。また、その効果は瞑想中だけではなく、一日中続くらしい。 マインドフルネス瞑想が感情処理にもたらす利点は、脳の研究で科学的にも検証されているそうだ。

 無自覚な感情が引き起こした認知バイアスによって人々が分断されるのは、誰にとっても無駄な苦しみであり、アメリカ人は「感情の支配を弱める瞑想の練習」という仏教からの処方箋に注意を向けるべき時かもしれない、とライト氏は述べている。大勢のアメリカ人がこの瞑想を一斉に始めるのは難しいだろうが、感情的な人が生活に瞑想を取り入れれば、感情的なフェイクニュースの拡散が少しは減るかもしれない。

引用元:How Mindfulness Meditation Can Save America
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