スピーチが上手いアメリカ人たち

スピーチが上手いアメリカ人たち


 そもそも、「人を惹きつける」のは、どんな人だろう? リーダーシップがあり、各分野で人々のロールモデルになるような人などは明らかに人を惹きつけるが、スピーチの上手い人は瞬時にして人を惹きつける。

 私は人のスピーチを聞くのが好きだ。スピーチの上手い人の話にはワクワクするし、惹きつけられる。スピーチが上手い人は、人間の集中力はどれくらい持続できるか、どういうことに心や体が反応するかなどの習性を考慮し、聴衆を飽きさせないように時折、声の速度やトーンを変えて話すような技術もあるため、聞き手を話の中にどんどん引き込むのが可能なのだ。

 こうした技術的なことは、もちろん大事だ。しかし最もスピーカーの力が評価されるポイントは、不測の事態にどのように対応するかにかかっていると言える。ビジネス・プロフェッショナルや講演講師など誰であろうとも、知らない人たちに向けて初めてスピーチをするときに最も恐れることの一つは、自分が発言したときに聴衆から批判的な反応が起こったらどうしよう、ということだろう。これは私のアメリカ人起業家仲間の間でも、よく話題に上がるトピックでもある。仕事柄、批判を恐れる方や、批判を受けて悩む方のサポートをする機会も少なくない。

 アリストテレスの言葉に、"To avoid criticism, say nothing, do nothing, be nothing. (批判されない方法は、何も言わず、何もせず、何者にもならないこと)” という名言があるが、アリストテレスが言うように、人の前でスピーチをする際に、受ける批判を避ける道はないと感じる。

 私がこれまで聞いた「不測の事態」への対応として、最も素晴らしいと感じたある著名な起業家の例を紹介しよう。それは彼がスピーチを終え、質問タイムの時に起こったことだ。参加者の中の1人の男性が挙手し、「あなたの話に自分は納得できない。あなたは有名だから、そんなこといえるだろうけど、今聞いたのは理想に過ぎない。こんな話、聞いてられるか!」と言い放ったのだ。スピーチを批判した男性が会場から出て行こうとしたその時、このスピーカーは男性の発言に対して返答をしようとした。しかし、その男性はそれでも席を立って会場から出て行こうとしたのだが、スピーカーはこう会場に語りかけたのだ。

 「この部屋を出て行かれる前に、ひとつだけ言わせてください。こんな大勢の前で、私の意見にまっこうから反論するのは簡単なことではありません、あなたは勇気と意見をもった素晴らしい方だ。みなさん、この方に大きな拍手を送りましょう」と。

 会場に居合わせた参加者約250名は、スピーカーの提案に応じて一斉に拍手喝采した。すると怒りに任せて会場を出ようとしていた男性は、拍手にほだされて席に戻り、大人しく最後までこのスピーカーの話を聞いたのである。このスピーカーのスマートでほがらかな誘導には、うならされた。アメリカ人の中で長年生活していても未だに驚くことがあるが、こうした驚きから学ぶことは、時にとても貴重だ。

 アメリカ人は、日本人よりもスピーチをすることに慣れている。何せプリスクール(日本でいう幼稚園)時代からプレゼンをさせられるのだから。キンダーガーテン(小学校内にある年長組)に上がると、各自のプレゼンに対して、声の大きさ、アイコンタクト、姿勢、表現力、参考資料などの項目に分けて、点数を付けられる機会などもある。恥ずかしがるシャイな子もいれば、胸を張って堂々と発表する子もいるが、このように小さな頃から人前で話す機会を与えられるため、成長する流れの中で、日本人に比べて多くのアメリカ人は人前で話す技術を自然に身に着けるのだろう。

 私も大勢の前でスピーチをする機会が少しずつ増えているが、毎回吐き気がするほど緊張する。そんな私の話を聞いて下さる方々の役に立つためにも、私も自分のスピーチ技術を向上させるべく、日々精進していきたいと思う。

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この記事の寄稿者

 高校卒業後に単身で渡英。ロンドンに4年間留学し、ビジネスを学ぶ。2003年に結婚。直後に渡米し、その後ロサンゼルスで起業。経営者、妻、一男一女の母、講師、一女性として様々な試練や失敗から学びながら、ビジネスの成功とプライベートな生活を両立させるという永遠のテーマを追求し、解決策の数々を個人でも実践している。
 これまでに1,000人を超える経営者、起業家、個人事業主、企業の営業チームなどを対象にサービス向上と商品の売り上げを2倍以上に伸ばすためのサポートを提供。セールス戦略やリーダーシップ・セミナーなどをロサンゼルス、シリコンバレー、日本で開催している。

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