英語文法の変化 意図的な「選択」より、時代の「偶然」によるもの?

英語文法の変化 意図的な「選択」より、時代の「偶然」によるもの?


 あらゆる言語は変化する。文法学者たちが言語を固定的に記録しようとして、この変化に抵抗しても、それは無駄なことだ。しかも、言語の変化に影響を与えてきたのは、語の意図的な選択による「自然淘汰」だけではなく、ただの「偶然」だったかもしれない——という興味深い研究結果が、英語文法の数世紀にわたる変遷を追跡した言語学者らによって発表された。

 ペンシルヴァニア大学が『ネイチャー』誌に発表した論文の共同執筆者ジョシュア・プロトキン氏によると、生物の進化と同様、言語の進化においても、「偶然」が重要な役割を果たしてきたという。言語における「偶然」の影響はこれまで十分に認識されてこなかったため、この新しい研究は、英語文法の変遷の仕組みの解明に寄与するものだと言えそうだ。

 同氏の研究チームは、1810年以降に書かれた10万以上の米国英語のテキストから、少なくとも二つの異なる過去形をもつ36個の動詞を取り上げ、規則形 "-ed" 形(例:spilled)と不規則形(例:spilt)の使用例を比較した。そのうち、能動的な「選択」による増加を示していたのは、たった6語(woke, lit, weaved, snuck, smelled, dove)。つまり、他の大部分の過去形では、どちらの語の使用が増えたかは、人々がどちらを耳にして真似たかという「偶然」に左右されてきたことを意味するという。

 通常、言語が変化する時は、「より覚えやすい規則形に変わる」、というのが支配的な見方だが、プロトキン氏らの分析によれば、使用数が増加した6つの動詞のうち、4語(woke, lit, snuck, dove)は不規則形だった。これには、「その時代に広く用いられていた言葉に音が似ている語かどうか」が関係している可能性があるという。たとえば、米国英語で、dive の過去形として dived よりも dove が好まれるようになった時期は、自動車が発達した時代と一致しているらしい。車での移動を表す drive は dive と発音が似ているため、 その過去時制 drove に近い dove が多く使われるようになったというわけだ。一見、偶然に変化したように見える他の動詞でも、同様の効果が作用していたかもしれない。

 エディンバラ大学・言語発達センターのクリスティン・カスクリー博士も、同時代の語彙の影響というこの説に同意している。ただし、他の要素が関わっていた可能性も捨てきれず、今回の研究結果が、英語以外の言語にも適用可能かどうかは不明だと指摘している。同氏に言わせれば、それほど「英語はくせもの」なのだそうだ。

引用元:Resistance to Changes in Grammar Is Futile, Say Researchers
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