ユリ・グリエルの差別行為にアジア系アメリカ人が激怒

ユリ・グリエルの差別行為にアジア系アメリカ人が激怒


 10月27日のMLBワールドシリーズ(大リーグ野球)で、ヒューストン・アストロズのユリ・グリエル選手がアジア人を揶揄する差別的ジェスチャーを行なったことで、来シーズンの開幕5試合の出場停止処分が下された。

 グリエル選手は、ロサンゼルス・ドジャースのダルビッシュ有投手から本塁打を打った際に、指で両目尻を吊り上げる真似をしてスペイン語でアジア人の蔑称「チニート」と発言し、その様子が生中継のテレビカメラに捉えられ、アジア系アメリカ人をはじめ、各方面から非難が巻き起こった。翌日、本人の謝罪メッセージがMLB公式サイトを通じて発表されたが、ワールドシリーズ4戦に出場して打席に立った際は客席から大ブーイングを浴びせられた。

 グリエル選手の差別行為と周囲の反応に対するRedとBlueの見解は?

出典『The Los Angeles Times』
元記事:Yuli Gurriel's offensive gesture provokes outrage among Asian Americans

RED: 言うだけでは金はかからない
“Talk is Cheap”

 これは、まったく意味のない話だ。ひとりの野球選手が差別的な行為をしたからといって、それがどうだというのだ。嫌ならテレビを消せばいい。野球場にいて、それが我慢できないなら出て行けばいい。誰かに、もしくは何かによって不快感を与えられたと問題を感じるのなら、愚痴をこぼすのはやめて、行動を起こすべきだ。それよりも、もっといいのは無視、黙殺することだ。

 なぜかって? いつでも、何であっても、それは誰かにとって不快な材料になり得るからだ。何かが不快だと他人がこぼすのを一体何度、聞かされなくてはならないのか? 不快の原因となった問題の人物が、自分もしくは自分の家族や名誉を個人的に攻撃したのではない限り、そんなことは忘れることだ。特定の人種全体を侮辱するような人物は、そもそも初めから無価値なのだ。————どうして彼らの言うことや信じることに、注意を払う必要があるのか? そんなことをしたら、彼らの言動に価値を置くことになってしまうのに。

 野球選手のユリ・グリエルは、野球の試合中に差別的なジェスチャーをした。これには驚いた。この子供は33歳だ。彼はもう少し大人になって、きちんとしたスポーツマンシップを学ぶ必要があるだろう。いずれにせよ、彼は自分の幼稚な信念を、誰にも押し付けることはできない。彼は野球選手だ。お金のためにスポーツをする、いわばエンターテイナーだ。グリエル選手の特定人種への侮辱に対して、彼に謝罪を求めるのは、ばかげた提案だろう。謝罪を要求する基準は何だ? グリエル選手のような、野球を通して人を楽しませる以外には何もできない人物に対しては、左派は、いち早く謝罪を要求する。

 その一方で、イスラエルのすべてのユダヤ人を殺害すると誓ったイランのような国のリーダーからの謝罪は、いつ要求するつもりだろうか? あるいは、米国を核兵器で絶滅すると脅している北朝鮮の愚かな独裁者からの謝罪要求はどうだ? 攻撃的なのはどちらだ? 国内の野球選手の差別行為か、核兵器を手にしている狂った男か? 

 「言うは易し」だから、人はあれこれ簡単に文句を言う。しかし、謝罪などを要求しても、結果的には無意味なのだ。


BLUE:人種差別にいい訳は効かない
“There's No Excuse for Racism ”

 右派の人間は、得てして差別的な行いを「大した問題じゃない」と一蹴する傾向にある。そして、双方が白人でない限り、誰かが他の人種をからかうのは構わないと考える人がアメリカには大勢いる。そのため、キューバ出身の野球選手ユリ・グリエルは「ヒスパニック」系だから、「アジア人」のダルビッシュ有選手をからかってもいいと、考えるわけだ。まったく、どうかしている。

 人種差別は重大な問題であり、差別するのが誰なのかは関係ない。自分自身あるいは大多数の文化にとって普通のことが、全ての人に通用するとは限らないのだ。人種差別は学校や職場において、人から機会を取り上げる。人種差別は人を殺す。

 プロ・スポーツ選手は、高い道徳規範を守る必要がある。彼らがメディアに取り上げられる際、自分が所属するチームやクラブ、都市や国を代表することになるのだ。子供たち、そして大人たちでさえも、スポーツ選手を模範として崇めることが多々ある。だからこと、もしもプロ・スポーツ選手たちが差別的な行動をとると、それは彼らのファンに対して、「君たちも人を差別しても構わないんだよ」というメッセージを送ることにもなってしまう。

 人種差別は決して受け入れられるものではないし、その後の試合でグリエルが大ブーイングを浴びせられたのは驚くに当たらない。彼が謝罪したのは正しいことだ。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

米ケロッグのコーンフレークの箱が人種差別的だと炎上

https://bizseeds.net/articles/492

 先日は石鹸ブランド「ダヴ」で知られるユニリーバ社が「黒人女性が白人に変身するCM」を流して米国内で炎上したニュースが話題になったが、今度は子供たちに大人気のケロッグのコーンフレークのパッケージに描かれた「コーンたち」が、子供たちに人種差別を植え付けるものだとの指摘を受け、大変なことになっている。

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