アメリカの学生運動  キャンパスでの人権と言論の自由の境界線

アメリカの学生運動  キャンパスでの人権と言論の自由の境界線


 アメリカでは政治的な学生抗議運動が盛んだ。なかには自分たち、そして他のアイデンティティーをもつマイノリティーの権利をサポートするという目的を持ちながら、デモや反対運動に参加する学生も多い。実際、トランプ政権になってから、アメリカでは様々なプロテストやデモが行われており、最近は特に、白人至上主義に対しての運動がよくニュースになっている。

 バージニア州シャーロッツビルでの衝突事件は、世界中の多くの人々が衝撃を受けた事件だろうが、この件に限らず、日本のメディアではなかなか取り上げられない事件は、他でもいろいろ起きている。そのひとつに挙げられるのが、アメリカの大学のキャンパスの中で起きているプロテストの数々である。

 有名なのはカリフォルニア大学バークレー校で起きている学生運動だ。発端は今年2月に右派メディアの編集者の講演をめぐっての抗議デモだった。このデモの原因は、スピーカーとして招待されていた右派若者層のカリスマ的存在だったマイロ・ヤノポロス氏のトランプ大統領を支持する姿勢、そして彼の差別的な発言に反対する学生たちが、その講演の中止を求めたことだった。当初、このデモは平和的で、ポスターを掲げたり、声をあげる程度だったが、そのうちに一部の学生が放火をしたり、警察が学生に対して催涙ガスを使用するなどしたことで学生たちが暴徒化し、最終的にはキャンパスが閉鎖された。この一件で学生一人が逮捕され、暴徒によって窓が壊されたり、発電機が故障したことで、大学に10万ドルの損害が出たという。

 カリフォルニア大学でのプロテストは、この一件では収まらなかった。3月にはトランプ支持派のグループが “March 4 Trump” (トランプへのためのマーチ)という名のプロテストを行い、負傷者だけでなく逮捕者もでた。4月には “Rally Against Hate”(反憎しみラリー)というグループと、”Say No To Marxism” (マルクス主義にはノーと言え)という二つのプロテストが衝突した。最近では9月下旬の”Free Speech Week”(言論の自由ウィーク)を祝ってトランプ支持者がイベントを行い、それに反対するプロテストが行われた。

 そもそも、どうしてカリフォルニア大学(UC)のバークレー校、そして他のキャンパス内のプロテストは複雑で、これだけ物議を醸しているのだろうか? 理由として挙げられるのは人権問題と言論の自由の衝突だ。

 人権はアメリカ、そして国際社会でも常に重要視されている問題だが、ここ最近、アメリカではマイノリティーの権利を守ろうという声がさらに強くなってきた。マイノリティーに含まれるのは、白人以外の人種、女性、移民者、LGBTQとそのコミュニティー、障害者などだ。マイノリティーの人たちとその支持者は、トランプ大統領の発言やポリシー、そして白人至上主義は基本的な人権を侵していると考えている。

 しかし共和党、トランプ支持者側は、彼らの思想、意見を表現できないのは「言論の自由に反している」と考える。共和党の意見がどんなに排他的であっても、彼らに言論の自由の場を与えないということは、「アメリカ憲法内の権利章典修正第一条を犯しているということ」なのだ。この権利章典修正第一条は、言論、信教、出版、集会の自由を妨げる法律の制定を禁止し、アメリカの「自由」というコンセプトの元になっていると言っても過言ではない。

 私の通うコロンビア大学でも、私がこの秋に入学してから既に2度、このようなプロテストが行われた。コロンビア大学の共和党のグループが、イギリス人の白人至上主義者であるトミー・ロビンソンをスカイプによる講演会に招いた。その際は会場となった建物の外に、たくさんの学生プロテスターが集まった。なかには建物内に入り、トミー・ロビンソン本人に質問をしたり、叫んだりしてイベントを妨害する行為も見られた。こうした妨害をした生徒たちは、大学のポリシーを侵害したとして学校側にIDを確認され、罰が下されるのではないかと言われていたが、多くの生徒や教授からの反対で今回は処罰が下されないことになった。しかし、共和党のグループからすると、「自分たちの言論の自由を奪われた」という意見がある。一方で、プロテスター側は「自分たちの存在価値がなくなることを願う人を、なぜキャンパス内に招くのか」という思いがある。

 ここで注目されるのは、大学側の反応だ。コロンビア大学は多くの共和党寄りの卒業生から寄付金をもらっているため、大学側がプロテスターに完全に味方することはなかった。コロンビア大学の学長リー・ボリンジャー氏は「言論の自由」についての授業を教えている教授でもあるが、学校を代表する者として、個人的な意見を方針決定に反映することはなかった。

 同じように、フロリダ大学でもスピーカーを巡っての問題があり、多くの学生がプロテストに参加した。フロリダ大学のケースでは学長が抗議者の味方に立ち、反白人至上主義者であるとはっきり自分の意見を表明した。しかし、フロリダ大学は州立大学であり、大学の施設は国の所有物であるため、どんなスピーカーやイベントであっても使用を許可しなければいけないという結果になった。自分たちの意見をはっきりと表し、デモに積極的に参加する若者たちを相手にしているからこそ、大学側の大人たちも学生側の意見を聞き入れることが重要になってきた。

 こういったキャンパス内での衝突は、「共和党」対「民主党」の争いを表すだけではなく、「左派」(社会主義者、無政府主義者、リベラル派)対「右派」(保守派、ネオナチ、白人至上主義者、外国人追放支持者、ホモフォビア)という対立軸も含まれる。もちろんプロテストの参加者も、その時々に変わるかもしれないが、こういった枠組みができてしまっているのが現実だ。

 平和構築のためには、他の人の意見や世界観にも耳を傾けることが重要だ。ヘイトスピーチ、憎悪表現がサポートされているキャンパスに通うのは気分が悪く、許されるべきではないという意見も理解できる。トランプ政権に代わってから、ますます分極化が激しくなり、嫌悪や憎しみを露わにする人が増えた。どんなに違いがあろうとも共存し、人々が学びあい、感謝しあえる社会になること祈るばかりである。日本も、多様な社会の重要性が求められており、世界で起きていることは、決して他人事ではないはずだ。自分たちにも繋がっていることとして、もっと国際問題について考えることが必要だと思う。

トランプ大統領 白人至上主義集会には批判コメントせず、火に油

https://bizseeds.net/articles/309

 アメリカ東部バージニア州シャーロッツビルで12日、集会を開催した白人至上主義や極右思想を掲げるグループ数百人と、それに反対する市民たちの間で激しい衝突がおきた。

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この記事の寄稿者

1997年生まれ、21歳。東京都出身。青山学院初等部・中等部を卒業後、米国バージニア州の女子校、St. Margaret’s Schoolに2年通う。2015年にコネチカット州のWestminster Schoolに転校し、卒業。現在はニューヨークにあるコロンビア大学・バーナードカレッジにて都市計画と国際関係、教育を専攻し、国際貢献の分野を志している。





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