シリコンバレーの夫婦のカタチ

シリコンバレーの夫婦のカタチ


 アメリカに移住し、国際結婚をして11年。シリコンバレーの文化や暮らしがやっと見えてきた気がする。今回はシリコンバレーで暮らす夫婦について触れていきたいが、それを語るにはまず、シリコンバレーの住宅事情からお話ししたい。

 私の住むシリコンバレー(米カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア)は、高い給与を得ている人が多いということは(平均年俸約1,500万円)、本サイトの寄稿者である竜氏も以前の記事で触れていたが、収入に比例するかのごとく、住むためにかかる費用、つまり住宅費(家を買う、借りる値段)が非常に高い。シリコンバレーの中心地のひとつであるクパチーノ市の2018年11月現在の平均的な一軒家の市場価格※は$1,932,900。日本円に換算すると、2億2,000万円以上にもなる。スタジオ(日本で言うワンルーム)の1カ月の賃貸料は最低でも2,000ドル〜(約23万円〜)。この数字を聞けば、いかにシリコンバレーの住宅費が高いかというのがお分かり頂けるだろう。

※参考:https://www.zillow.com/cupertino-ca/home-values/

 しかも、大手IT企業の業績はすこぶる調子が良いので、住宅費はまだまだ上昇傾向にある。我が家は2012年に一軒家を購入したが、現在の値段は購入した値段よりも40%も上昇している。嬉しい気持ちにもなるが、シリコンバレー以外の場所に引っ越すか、今よりも小さい家に買い換えない限りは今の家を売っても得はないので、価値が上昇していても何とも言えない複雑な心境だ。私のご近所さんたちは、子供が大学に入学したり、社会人となって独立をすると早々に家を売って、夫婦二人だけで住む小さな家やコンドミニアム(日本でいうマンション)を買うか、シリコンバレーよりも安い他州に引っ越して住宅費の差額で得たお金を隠居生活に充ててエンジョイしている。

 今回はキーワードをいくつかあげて、「シリコンバレーの夫婦」の在り方について、説明することにしよう。

共働き

高給取りのシリコンバレー・エンジニアでも夫婦共働きでないと、現在は一軒家どころか、コンドミニアムを購入するのも難しい。子供のいる家庭は必然的にデイケア(保育所・託児所)を利用する必要があるケースも多く、年齢が高くなれば利用費は安くなるものの、乳児を預ける場合は月20万円以上もコストがかかる。デイケアのコストが高いため、妻が働くのであればある程度の収入が見込めないと働く意味がなくなってしまう。シリコンバレーでそれなりの家に住み、それなりの暮らしをしていくには、伴侶の収入も大事になるため、結婚を考える際には女性の収入を気にする男性も少なくない。

 妻もバリキャリとなると、夫が家事・育児を「手伝う」程度では生活が回らない。アメリカでは多くの場合、家事・育児は「夫婦で一緒に行う」のが基本だ。二人では家事が回らないという夫婦は、定期的にメイドサービスを頼み、外出中の子供の世話に関してはベビーシッターにお願いするのは、ここシリコンバレーではごく普通なことだ。夫婦共にキャリア志向が強く、どちらも仕事に集中したい場合は、子供の世話にはナニー(教育から食事の面倒までみてくれる)を雇っている夫婦も多いし、アジア系の家庭に関しては母国から呼び寄せた祖父母に育児を任せるといったケースも多くみられるように思う。

 親子関係が独立しているアメリカでは、仕事と家事でいっぱいいっぱいな夫婦で、ナニーを雇ってまで子供が欲しいと思わない、もしくは親に子供の世話をお願いするという選択肢を持たない場合は、「とても子育てをする時間と気持ちの余裕がない」として「子供を持たない」という選択をしている夫婦もいる。

主婦もしくは主夫

 共働きが多い一方で、夫が仕事に集中したい、保育料が高いということから、妻は働かず、家事育児を全面的に担当している家庭もある。とはいえ、「家事・育児は妻がやるのが当たり前」と考える夫は少ない。夫は時間のある限り育児も行い、週末は外食したり、夫が庭でBBQを仕切ったりして、妻の家事の負担を軽くするように努力する場合がほとんどだ。「夫は外で働き、妻は家で家事育児」という夫婦の場合、ジェンダーロール(性別の役割分担)によって家庭内の仕事を分けている人も多く、庭の手入れ、家や車の修理などに代表される体力仕事などは、夫が率先して行っている家庭が多い印象を受ける。また、夫が家庭に入って「主夫」になるパターンも珍しくない。私の夫の会社にも、「主夫」の夫を持つ女性社員は数名いる。

 我が家では、私がほとんどの家事を行っているが、全く料理のできない私の夫は毎食事後に「ありがとう」と言ってくれるし、食事後も私が洗い物をしている間に、テーブルやカウンターを拭いたり、食器を片づけたり、できることをしてくれる。ゴミ出し、掃除機(アメリカの掃除機は大きく重い)での掃除は彼の仕事だ。また、大きな修理はできないが、家の調子の悪いところはすぐに直してくれるので、とてもありがたい。私の父は偉そうにしている父親ではなかったが、家ではほぼ何もしない人だったので、そんな父と比べると、私の夫はあれこれと家のことを責任もってやってくれるので大変頼もしく感じる。「家事は妻がやるのが当たり前」という固定観念がない彼は、私を経済的に支えているとはいえ、全く家のことをしないことに罪悪感を感じるようだ。

オープン・リレーションシップ

 日本では聞くことがないと思われる「オープン・リレーションシップ」という夫婦関係にも触れておきたい。これはシリコンバレー特有というわけではないし、アメリカでも少数派だと思うが、私の周囲にもいる夫婦の形なので紹介しよう。

 オープン・リレーションシップとは、結婚をしていながらも、夫・妻以外の異性と関係を持つことを相互に認める関係のことだ。夫婦関係が希薄だが経済的な問題や育児の関係で結婚を継続した方が「お互いにとって得」というケースや、精神的には深くつながっているが、夫もしくは妻に「異性としての魅力を感じない」というケース、または自由奔放にそれぞれの人生を謳歌すべきという価値観を優先しているケースなど、オープン・リレーションシップを選ぶ夫婦の理由は実に様々である。

 浮気や不倫は、アメリカの夫婦関係においては日本よりもずっと重罪だ。日本ではよく言われる「男は浮気するものだ」、「浮気の1回くらいは仕方ない」という考えは、アメリカではまずない。一度の浮気でもバレたら即離婚、となる方が一般的だ。そういう背景があるため、オープン・リレーションシップは相手に隠れて異性と付き合わないという点で、「妻・夫に誠実でありたい」という前提を死守しながらも、合理的にそれぞれが他の異性との関係も楽しめると言う、新しい夫婦の形のひとつなのかもしれない。

 以上、住宅事情を入れて4つの例を挙げたが、アメリカ、特にシリコンバレーの夫婦のカタチはそれぞれだ。「人種のるつぼ」と言われているアメリカでも、特にシリコンバレーは外国人が多い土地柄のため、外国人同士の結婚も多く、家庭によって文化・習慣が異なる。よって、「これが当たり前」、「こうであるべき」というものがない。私たち夫婦も国際結婚がゆえに、ぶつかり合いながらも自分たちが最も落ち着く夫婦のカタチを見つけた。

 アメリカで暮らして感じるのは、「夫婦はひとつ」ということだ。この国では結婚すると、その後の行動はほぼ夫婦単位。州によって若干の法律は異なるものの、結婚後に得た収入や財産は、あえて分けるというアレンジメントをしない限りは夫婦共有。お互いの仕事をサポートし、妻が主婦であっても家事・育児はなるべく一緒に行い、夫婦関係がうまく行かないときは「結婚カウンセリング」に行って問題解決に取り組む(アメリカではカウンセリングも健康保険の対象になるので行きやすい)など夫婦で助け合い、何でもシェアーし、苦楽を共にしていく。日本の場合「生活の面倒を見る人と、見てもらう人」という図式の夫婦の形が見られるケースも多いと思うが、アメリカにおける夫と妻はあくまで「人生そして生活のパートナー」なのである。

シリコンバレーの給料は低い?

https://bizseeds.net/articles/41

 IT業界に興味がある人ならば、シリコンバレーのエンジニアの収入についての噂を聞いたことがあるだろう。超一流の大企業やユニークなベンチャー企業がひしめき合い、優秀なエンジニアがたくさん集まる。皆かなりの高給取りで、有名企業ならば大卒新入社員でも年収は1,000万円を軽く超える。

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この記事の寄稿者

OLから、唯一の日本人として2004年にNFLサンフランシスコ49ersチアリーダーに合格し活動。その後、ネバダ州立大学にてピラティスライセンスを取得。2006年にエンジニアと国際結婚をし、シリコンバレーに移住。現在、アメリカではDK Body International セールス&マーケティング担当・サンフランシスコエリアのコーディネーター、日本では一般社団法人プロフェッショナルチアリーディング協会代表理事を務める。TBS「マツコの知らない世界」“チアリーディングの世界”のナビゲーターとしての出演し、日本でも話題になった。

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