テキサス人と保守キリスト教徒が、今年のクリスマスを歓待する理由

テキサス人と保守キリスト教徒が、今年のクリスマスを歓待する理由

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、アメリカ国内でも報道されない保守の声をお届け。トランプ支持がなぜ悪い? 西森マリーの「アメリカ保守派の考え方」。今回は多人種国家アメリカのクリスマスで、「メリー・クリスマス」と気軽に言えない状況に不満を持つ人たちの話。


「メリー・クリスマス」と声を掛けて、なぜ悪い?

 ニュースとジャーナリズムに関する博物館「ニュージアム」が、2015年に行った「合衆国憲法はアメリカをキリスト教国と定めていると思うか?」という世論調査がある。結果は51%が「Yes」、44%が「No」、5%が「分からない」であった。

 「Yes」と答えた人の多くはトランプ大統領支持者である。彼らは、アメリカの基礎を築いたのは、「英国国教会による弾圧や迫害を逃れて信仰の自由(自分が信じる宗派のキリスト教を信じる権利)を求めてメイフラワー号で新大陸アメリカに渡った清教徒たち」であり、アメリカは「キリスト教の信条に基づいて建国された」と信じている。そのため彼らは、クリスマス・シーズンには「メリー・クリスマス!」と言うのがアメリカの伝統だと思っているのである。

 しかし、米リベラル派は、「アメリカは多民族・多文化国家なので、神の子イエスの誕生を祝うキリスト教の祭典を、非キリスト教徒に押しつけるべきではない」と訴え、ユダヤ教の神殿清め祭りや、アフリカ人の祭典もある年末には「ハッピー・ホリデイズ」という言い方を使用するべきだと言っている。

 とはいえ、クリントン元大統領の時代までは、リベラルな人々も年末はごく普通に「メリー・クリスマス!」と言っていた。なぜなら当時のアメリカ人は、政治的に正しい言葉遣いよりも伝統を重んじ、クリントン元大統領夫妻も中道派の票を得るために自分たちが敬虔なキリスト教徒であることをアピールし続けていたからだ。

 しかし、2001年の同時枢軸テロの後、「アメリカがアンチ・イスラムにならないように」という配慮から、ブッシュ政権が過剰とも思えるほど在米イスラム教徒に気を遣ったため、小売店や政府機関、公立学校などがクリスマス・シーズンには「メリー・クリスマス」ではなく、「ハッピー・ホリデイズ」というフレーズを使うようになった。

トランプ大統領が、その流れを変えた

 オバマ前大統領は、大統領候補だった間には自分がキリスト教徒であることをアピールしていたが、大統領就任後は一貫してキリスト教の影響力を弱体化させる政策を採っていた。そして、イスラム教過激派によるテロが起きる度に、「中世のカトリックの方がひどいことをした」、「中絶クリニック爆破犯は、右翼キリスト教徒だ」と、キリスト教徒を糾弾する発言を繰り返した。さらに、米公立学校でキリスト教の祈りを捧げたフットボールのコーチを批判する一方、オバマ政権の司法省はイスラム教徒の教師が有給休暇を取ってメッカに巡礼に行けるように手配し、イスラム教徒が仕事中に祈りを捧げることを許さない会社を罰した。それに加えてオバマ前大統領夫妻は、ホワイトハウスが年末に出すカードに一度も「メリー・クリスマス」と書いたことがなく、ホワイトハウスのクリスマス・ツリーには毛沢東や派手な女装で有名なお姉系コメディアンの顔をあしらった飾りをつけたため、キリスト教徒たちは、オバマとリベラル派は「War on Christmas and Christianityキリスト教・クリスマス撲滅キャンペーン」を行っている!」と、嘆いていた。

 しかし、2015年の暮れに、共和党候補だったトランプ現大統領が「メリー・クリスマス!と言わない店をボイコットしよう!」と米国民に呼びかけ、「私が大統領になったら、アメリカでまたメリー・クリスマス!と言えるようにする」と断言。当時、米テキサス州ではテキサス選出のテッド・クルーズ候補の支持者が多かったが、この一言を聞いてトランプ候補に鞍替えした人が続出し、翌年の予備選と本選でもトランプが圧勝した。

 トランプ現大統領は、選挙戦中の約束を守り、昨年の当選後に大々的にクリスマスを祝って「メリー・クリスマス!」というフレーズを連発し、キリスト教徒たちは「トランプ大統領のおかげで、アメリカにクリスマスが戻って来た!」と大喜びし、トランプ政権の到来を心の底から歓迎したのである。

 彼らは今年も、「トランプ大統領のおかげで堂々と、メリー・クリスマスと言える」ことに感謝し、米南部の福音主義者たちはトランプ大統領をクリスマスの救済主として絶賛している。

 ちなみに、アメリカの保守派・中道派キリスト教徒が、非キリスト教徒にも「メリー・クリスマス」と言いたがる理由は、「自らの命を犠牲にして全人類の罪をあがなってくれたイエスの誕生を祝う、という喜びをあらゆる人々と分かち合いたい」と思っているからであり、決してキリスト教を押しつけようとしているわけではない。非キリスト教徒も、「メリー・クリスマス」という一言を「喜びのお裾分け」の挨拶としてポジティヴに解釈することができれば、いちいち腹を立てずに済むのではないか、と思う師走である。

アメリカ経済を司るユダヤ人のビジネス

https://bizseeds.net/articles/370

 一般的に「アメリカ人」というのは陽気で明るく、ガレージが付いた大きな家で、家族揃ってのんびりと幸せに暮らしている、というイメージがステレオタイプではないだろうか。

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この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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