【Red vs. Blue】ワシントンポスト紙、ロイ・ムーア氏に関連する作り話の罠を見破る

【Red vs. Blue】ワシントンポスト紙、ロイ・ムーア氏に関連する作り話の罠を見破る

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は、保守派の活動家がリベラルな新聞社を騙して、嘘の記事を報道させる罠を仕掛けた話について両者の意見を乞う。


 11月、アラバマ州上院補選に共和党から立候補していたロイ・ムーア氏から、10代の頃にセクハラ行為を受けたという女性5人が名乗りを上げた。このスキャンダルを利用して、保守系政治活動家のジェームズ・オキーフ氏が運営する調査組織「プロジェクト・ヴェリタス」が、『ワシントンポスト』紙を騙そうとし、問題になっている。彼らは「15歳の時にムーア氏に妊娠させられた」という作り話を携えた女性を同紙に送り込んだ。女性の話が報道されて後で嘘と分かれば、同紙に恥をかかせることができ、セクハラ・スキャンダル全体の信ぴょう性が損なわれるという算段があったと見られる。

 しかし同紙は、女性の話に矛盾があることを見破り、女性が「プロジェクト・ヴェリタス」の事務所に入っていく様子を見届けて嘘を確信。隠しカメラで撮っていた女性とのインタビューの様子をメディアで流した。

 12月12日の上院選投票の結果、当選確実とされていたムーア氏だが、スキャンダルが災いして、共和党の強い地盤であったにも関わらず民主党候補のダグ・ジョーンズ氏に僅差で負けた。まるで映画のようなこのニュースに関して、RedとBlueの見解はいかに?

出典『BBC』
引用元:Washington Post uncovers fake Roy Moore story 'sting'

[Blue リベラル派] 人はメッセージが気に入らないと、メッセンジャーを責める

If You Don't Like the Message, Blame the Messenger

 右派は「フェイク・ニュース」について、わめき立てるのが好きだ。そこで右翼組織は、意図的にフェイク・ニュースを作り出そうとしたのである。そうすれば、フェイク・ニュースに対して苦情を言うことができるからだ。これは、右派についての悲しい真実を示している。小細工をして社会を操る方法しか、権力を掴んで、それを維持する方法がない、ということを認識しているのである。

 彼らの戦略の全貌は、彼らがお膳立てした半分は本当の話と、全くの作り話だけを一般の人々が信じるように仕向けることだ。トランプは、自分がやりたいことと現実が異なることがあると、自分の好きなテレビ局以外のメディアを非難したり、脅したりする。そして、右派はそのトランプのやり方に大喜びで同調する。

 これは非常に危険なゲームだ。トランプと彼の支持者は、アメリカのメディアを政府に承認された会社のみに制限したいと本当に考えているのだろうか? それでは、異議を唱える声はすぐに消されてしまうロシアと同じレベルに我々を置くことになってしまう。トランプは昨年、プーチンについて「彼は非常に賢いってことを、私はわかっていたんだ」と発言したが、それは、こういうことを意味していたのだろうか。

[Red 保守派] ワシントンポスト紙は新聞社ではなく、公衆の敵だ

The Washington Post is not a news organization; it’s a menace to the public

 メディアの注目を浴びたロイ・ムーア氏への告発は、12月に予定されていたアラバマ州上院議員選挙の直前に起こった。そのタイミングを考えれば、当初から信ぴょう性に欠けているのに、ワシントンポスト紙はそれを見抜けなかった。ムーア氏が、本人の言葉の通りの性格と誠実さを持っているかもしれない、ということを新聞社は見抜けなかったのだ。

 ムーア氏は米陸軍ウエストポイントの卒業生であり、ベトナム戦争退役軍人であり、アラバマ最高裁判所判事である。同紙は、ムーア氏のこれまで8回の選挙において、今回のようなセクハラの訴えが、ひとつとして起こっていない事実に、基本的な調査さえ行っていない。そして、セクハラ行為があったと主張をしている女性側に、偏見や何らかの目的があったのではないかという、基本的に行うべき調査もしていない。全くゼロだ。

 同紙はムーア氏に対する全く偽の告発を1分も疑わず、複数の話を報道してきた。しかし、今回ワシントンポスト紙は、偽のロイ・ムーア物語で同紙に恥をかかせようとした者を見破った。で、それを聞いて、私に何をしろと言うのだ? 拍手喝采か? ワシントンポストは恥を知るべきだ。同社は新聞社ではなく、公衆の敵だ。アメリカ市民は、人々を正直に保つためにニュースに頼っている。しかし、悲しいことにワシントンポスト紙は、自社そのものを正直に保つことさえできない。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

【Red vs Blue】ロールモデルの喪失:かつて、役人は尊敬されていた

https://bizseeds.net/articles/593

 このところ、アメリカでは著名人がセクハラで告発されるケースが続出している。そして、それは芸能界やメディア業界だけでなく、政界にも広がっており、トランプ大統領も20人近い女性から非難されている。

トランプ大統領に関する記事 >

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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