日本版統合型リゾート「IR」への指針

日本版統合型リゾート「IR」への指針

巨大カジノホテルがひしめくラスベガスは世界一の観光都市とも謳われる。その地で観光産業のノウハウを学び、職を求めて体当たりし続ける著者が綴る等身大体験コラム、塚原ミキヒトの『ラスベガス就活奮戦記』。日本のカジノ構想を語る上で、最も重要なのは統合型リゾートIR(Integrated Resort)の実現ではないだろうか?


日本のIRをネバダ大学がサポート

 大学を卒業した今でも、時間がある時にはカジノ・マネジメントの講義を聞きに行ったり、研究グループのミーティングや調査を手伝っている。教室や研究室はいつも和気あいあいとした雰囲気で、世界のカジノ・ビジネスについてお互いの意見を交換し合う。そういう活動を通して、ラスベガスがあるネバダ州の大学と日本のカジノ情勢との間に実はとても大きな繋がりがあることがわかった。

 日本進出を狙うラスベガスのカジノ企業にとっては、日本版IRの本格始動に向け、国会で決議される具体的な内容が非常に重要になることは明らかだ。そんな中、ネバダ州立大学の国際ゲーミング研究機関は、日本の大型IR建設にあたり大きな鍵を握る論文を発表した。

 ネバダ大学カジノ研究機関の役員らは、日本のIR推進本部への指針として2つの調査レポートを提示。今年9月に事業出資者に向けて先行発表され、11月初めに一般公開された。100ページにもなる『日本の統合型リゾートの社会経済的影響について』では、依存症や軽犯罪への対策と観光市場の大幅な拡大を目指す日本のゴールに特化した上での調査とその内容が記載されており、この内容がカジノ法案を整備する上で活用されていくと見られている。

 このレポートの別冊で全31ページの『実践的視点からみるカジノ賭博規制制度とその成り立ち:ネバダ州カジノにおける犯罪組織排除のケース』には、カジノの法規制が日本のカジノ・マネジメントにおいて、如何に組織犯罪の撲滅に役立つかを指し示している。この資料の中には、歴史上マフィアとの関係性に悩まされてきたネバダ州のリゾート界が、如何にしてハイレベルな法規制の下に今日の安全な事業運営を行なっているかが具体的に説明されており、ネバダ州が実施している厳格な審査基準を含む身元確認のやり方なども示されている。

 ネバダ大学カジノ研究所の所長、ボー・ベルナード氏は過去5年間に渡り日本を訪れ、IR設立への大きな一歩となったカジノ法案成立を見届けてきたという。今夏には、日米経済協議会がネバダ大学のカジノ研究機関に情報提供を依頼し、同機関の役員や研究員らも日本を訪れ調査も行なった。また9月には、400人以上の政治家、事業主やギャンブル依存症専門の臨床医などを含む多くの関係者が集まったアジア・ゲーミング・サミット2017(台湾)の中で、調査での発見などについてプレゼンテーションが行われた。「大切な一歩をようやく踏み出すことが出来た。多くの参加者が集ったプレゼンテーションでは人々の興味・関心がより一層増したことだろう」と、語るのはネバダ大学カジノ研究機関の役員、ブレット・アバーバネル氏だ。2018年後半に国会に提出される予定の具体的なカジノ法案 について、アバーバネル氏は現状を「慎重且つ丁寧に審議されている」と述べている。その実行法案作成にあたり、IRを具体的にいくつ、どこに建設するか、またリゾートの大きさやカジノの入場規制の有無などについて話し合われているようだ。法律には特定条件を満たしたマネジメント・プログラム導入や、またカジノ・ビジネスの経験が深いネバダの企業と地域性や土地に詳しい地元の日本企業との連携が求められる予定である。

IR実現に向けての今後の展望とは?

 ギャンブル依存症対策の一環として、日本政府は無料の医療機関を設ける準備もしているという。歴史上、パチンコへの依存症が問題点としてあげられる日本にとって、公共の医療機関は強調されるべき点でもある。多くのカジノ企業が顧客情報やマネジメント・システム、債権回収、マネーロンダリング対策などを有している一方で、日本企業は地元の地域性についてより詳しいという点においてビジネスのアドバンテージを持っている。日本進出を考えるラスベガスのカジノ企業にとっても新規参入を目指す日本企業にとっても、パートナーシップは大きな利益に繋がることだろう。当コラムでも紹介したセガ・サミー社もまた強力なブランド力を持ち、ラスベガスのカジノ産業での営業権も11月正式に承認された。カジノ・ビジネスの直接的な運営経験はなくとも、パートナー探しに役立つコネクションや資産も持っているかもしれない。

 ネバダ大学のレポートでは、大阪、東京と横浜がIRへの最有力候補だと述べられ、国際的な観光業を発達させることで日本への経済に大きな利益を生み出すことだろうと結論づけられている。ネバダ大学の研究員らは、ラスベガスにある、いかなるカジノ事業者にも日本での営業権獲得のチャンスはあり、また多くの出資者達が興味・関心を持っていると言っている。

 日本でカジノ法案整備に携わる人の中には、現地住民に入場料を課し、プレーできるゲーム数も2つまでと規制しているシンガポールのカジノ・ビジネス・モデルを参考にしようと言う人もいる。しかし、専門家の中には東京とシンガポールとの大きな人口基盤や土地代・建築費用などの違いから、既存のカジノ・ビジネスをモデルにしないよう勧めているため、今後の進展が気になるところである。

株取引とカジノが合体? 最新型カジノ企業への就活

https://bizseeds.net/articles/388

 毎年、多くのコンベンションが開催されることでも知られる都市、ラスベガス。なかでも最先端のテクノロジー産業が集まる「IoT Evolution Expo」は、世界中の注目を集めるコンベンションのひとつだ。

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