トランプ大統領は現代のロビン・フッドだ

トランプ大統領は現代のロビン・フッドだ

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、アメリカ国内でも報道されない保守の声をお届け。トランプ支持がなぜ悪い? 西森マリーの「アメリカ保守派の考え方」。先日、新税制改革法を通したばかりのトランプ大統領。彼こそが「現代のロビン・フッド」だと評価する保守派の考え方とは?


リベラル派はロビン・フッドを勘違いしている?

 トランプ政権が通した税制改革法は、ほとんどの納税者の税率が数パーセント下がる、という画期的な税法だ。しかし、リベラルな視点のジャーナリストが圧倒的に多い米大手メディアは、法人税が35%から21%に大幅に下がったことに焦点を当て、「トランプの税法は大企業のみが得をする、逆ロビン・フッド税法だ」と言っている。

 実は、逆ロビン・フッド( Robin Hood in reverse)という表現は、共和党の税法案を批判するときに民主党が必ず使う常套句だが、保守派はこのフレーズを聴くたびにリベラル派の誤解に当惑する。

 大きな政府が国民全員に均等な機会と均等な生活水準を与える社会を目指すリベラル派は、「ロビン・フッドは金持ちからカネを奪い、貧乏人に富を再分配したリベラル派の鑑だ」と思っている。しかし、ロビン・フッドは単に金持ちを憎み、そのために金持ちからカネを奪っていたわけではない。ロビン・フッドの伝承には、「イングランドを征服したノルマン人に抵抗したサクソン人(イングランドの民族)の英雄」、「ノルマン人に領地を略奪されたイングランド貴族のレジスタンス」、「暴君ジョン王と手下の悪代官に反抗した、弓と剣の名手」など複数のバージョンがあり、そのすべてに共通して描かれているロビン・フッド像は、「圧政者に奪われた領地や所有物、重税という形で巻き上げた被支配階級のおカネを”取り戻す”ために戦った英雄」というものだ。つまり、ロビン・フッドは、単に貧富の差をなくすために金持ちから金を奪って富を再分配した人ではなく、支配階級が不正に略奪した被支配階級の所有物を「奪還」した英雄なのである。

オバマ政権の三大スキャンダルが保守派の考え方をさらに強固に

 小さな政府を望む保守派は、民間での経済活動の経験がない役人や政治家は予算(国民の血税)の使い方を知らないため、あらゆる側面で政府の介入を最小限にとどめるべきだと考えている。オバマ政権時代、保守派のこの信念をさらに深めるスキャンダルがいくつも起きたが、その中で特にひどかったものを3つご紹介しよう。

 まずは、ソリンドラ談合スキャンダルだ。オバマ政権は、オバマ選挙キャンペーンの大口寄付者が推薦したソリンドラ(太陽エネルギー会社)の素性を吟味せずに5億3,500万ドル(約603億円)の助成金を与え、17カ月後にソリンドラは倒産し、巨額の助成金が露と消えた。

 二つ目は、オバマ司法省・環境保護庁のスラッシュ・ファンド。これは、オバマ政権の司法省、環境保護庁が、不正行為で起訴された銀行や会社に「罰則」としてLa RAZA(不法移民恩赦、国境廃止を主張する団体)などの左傾団体へ「寄付」をするように命じたもので、結果少なくとも15億ドル(約1,691億円)が左傾団体に寄付された。

 そして、最後は国税庁スキャンダル。オバマ支持者の国税庁の役人が、300個以上の保守派草の根グループに税控除を与えることを拒否し、グループ幹部の会社の会計監査を行ったり、FBI調査員を送り込むなどの嫌がらせをした。

 オバマ政権時代にこのような不祥事が続いたため、保守派は「政府は税金をむだ遣いするだけで、国税庁の力が増すとろくなことがない」という思いを、さらに強めたのである。そのため保守派は、カネの使い方を知らない官僚や悪代官なみの国税庁から税金を奪還して、お金の正当な所有者である国民に返してくれたトランプ大統領のことを、現代のロビン・フッドとみなして、感謝しているのである。

 ちなみに保守派は、企業は経営者+従業員で成り立っている人々の集団であるため、法人税減税で企業が栄えれば従業員の給料も上がり、企業がさらに投資をすれば経済が活性化し、雇用が創出されて好景気になり、アメリカ全体が得をすることになると信じている。一方、リベラル派は、「企業=金持ち」、「金持ちが金持ちになれたのは、そもそも何か悪いことをして中産階級や貧者から搾取したせいだ」と考えている。

 この2つのイデオロギーは全く相容れないものであり、二者の溝が埋まる可能性はないため、2018年もトランプ大統領は、民主党議員の協力を得られないまま苦戦することになるだろう。

貧富の格差拡大 アメリカは5家族に1つが「貧乏家庭」

https://bizseeds.net/articles/596/

アメリカの家庭といえば、広い芝生の庭がある大きな家をイメージする人が多いだろう。しかし今月、5家族にひとつのアメリカ家庭が借金を返済しながら毎月ギリギリの生活を送っている事実を記した報告書が発表された。

労働者に関する記事 >

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

関連する投稿


米中間選挙: 保守派の見解「信じるな!世論調査とCNN」

米中間選挙: 保守派の見解「信じるな!世論調査とCNN」

テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は中間選挙に向けて、世論調査の結果を掲げて議論するリベラル派に対して、「その質問はフェアーか?」と質問の仕方に疑問を持つ保守派の声を現地からレポートする。


【Red vs. Blue】トランプ大統領、ロシア疑惑調査文書の機密解除指示を撤回

【Red vs. Blue】トランプ大統領、ロシア疑惑調査文書の機密解除指示を撤回

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領が 突然、自身のロシア疑惑調査の機密を解除した背景に関して保守派、リベラル派が意見を交わす。


「投票せよ!」米中間選挙前に沈黙を破ったオバマ前大統領

「投票せよ!」米中間選挙前に沈黙を破ったオバマ前大統領

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住で、トランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は政権交代後、公式発言を控えてきたオバマ前大統領が久々に披露した演説について。前大統領の演説から今のアメリカに必要なことや、再生に向けて著者が感じたこととは……。


米中間選挙:保守派がSNSによる“選挙介入”を恐れる理由

米中間選挙:保守派がSNSによる“選挙介入”を恐れる理由

テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、保守派たちはグーグルなどのリベラル派IT企業やソーシャル・メディアによる“選挙介入”を恐れている、という現地からの声をレポートする。


【Red vs. Blue】トランプ支持者が「大統領は腐敗していない」と信じるのはなぜか?

【Red vs. Blue】トランプ支持者が「大統領は腐敗していない」と信じるのはなぜか?

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された新聞記事について各派のアメリカ人が見解を披露する。今回はトランプ大統領の元顧問弁護士が「大統領が不倫相手に口止め料を支払った」と認めたことを巡って激論を交わす。






最新の投稿


召しませ、完璧なステーキ

召しませ、完璧なステーキ

アメリカ人には、「肉好き」が多い。厚みのあるステーキは、アメリカ料理の定番のひとつだが、ステーキの調理は簡単のように見えて実は難しい。焼き加減によって硬くなり過ぎたり、生焼けになったりと、上手く肉が焼けない悩みを持つ人は多い。そんな悩める人々の救世主となるグッズとは?


ソーシャルメディア時代にぴったり!写真映えするビタミン剤

ソーシャルメディア時代にぴったり!写真映えするビタミン剤

ちょっと変わったマルチビタミンが注目を集めている。特に変わっているのはその「形状」だ。今まで見たことがないような新しいデザインの錠剤は、写真映えするという理由から、たちまち世間に浸透した。一体、どんなビタミンなのだろう?


米中間選挙: 保守派の見解「信じるな!世論調査とCNN」

米中間選挙: 保守派の見解「信じるな!世論調査とCNN」

テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は中間選挙に向けて、世論調査の結果を掲げて議論するリベラル派に対して、「その質問はフェアーか?」と質問の仕方に疑問を持つ保守派の声を現地からレポートする。


成功への選択「未来予想図」2018年10月12日~10月18日

成功への選択「未来予想図」2018年10月12日~10月18日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


静脈探し技術で患者の不満を解消

静脈探し技術で患者の不満を解消

 病院で看護師に「血管が見つかりにくい」と言われたことのある人に朗報だ。検査時などの採血の際、静脈の位置がなかなか見つからず、何度も針を刺されて痛い経験をしたことがある人も少なくないだろう。でも、これがあれば今後はそれほど痛い思いをしなくて済むかもしれない。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング