【Red vs. Blue】NYタイムス紙の詩織さん報道 レイプ被害者に対する日米の視点の違い

【Red vs. Blue】NYタイムス紙の詩織さん報道 レイプ被害者に対する日米の視点の違い

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は米メディアが取り上げた日本の「詩織さんレイプ被害事件」について。通常は意見が対立するレッドとブルーだが……?!


 2015年4月、当時インターン生だった伊藤詩織さん(現ジャーナリスト)は、TBSワシントン支局長(当時)の山口敬之氏から性的暴行を受けたと警察に告発した。ところが、逮捕直前になって「上からの指示」で執行停止に。昨年10月、事件の全貌を現し、不起訴になった理由を検察に問うた伊藤さんの著書『Black Box』が文芸春秋社から出版され、12月末、『ニューヨーク・タイムズ』紙が伊藤さんのインタビュー記事を掲載した。
 同紙の記事では、性的暴力に対する日米社会の受け止め方の違いを浮き彫りにしている。

 日本では、 世間が「男性と2人きりで食事をした女性にも問題がある」という冷たい視線を被害者の伊藤さんに向けていることや、加害者の山口氏が「もしも彼女が自分をコントロールできていたら、何も起こらなかった」と、酔って意識を失った伊藤さんに責任を被せていることが報道されたが、これらの日本的な「被害者バッシング」を、アメリカ人男性の保守派レッドとリベラル派ブルーはどう受け止めたのだろうか?

出典『New York Times』
引用元:She Broke Japan’s Silence on Rape

[RED 保守派] 行動規範の欠如

Codes of Conduct

 伊藤さんの性的暴力の訴えといったような深刻なケースについてコメントするのは難しい。アメリカ人として私は、法や裁判所は、不完全ではあるものの真実を見つけ、罪を罰し、無実を救うために努力していると信じている。

 しかし、この件においては、山口氏の振る舞いに対していくつかの所見を述べたい。事件について我々が知っていることは、山口氏と伊藤さんは食事に出かけたこと、2人が一緒にタクシーに乗ったこと、そして伊藤さんはお酒を飲みすぎたことだ。これらの事実だけを見ると、夜の会合はこの時に終わっているはずである。この場合、取るべき行動は、伊藤さんを無事に家に送り届けることであり、もしも彼が自分のホテルの部屋に連れて行くのであれば、彼女の酔いが冷めるまで邪魔をせずに寝かせてあげることで、それ以外にはない。

 翌朝の山口氏の視点は、自制心ゼロの男の姿を描いている。タクシー運転手の証言から、伊藤さんは前夜、気分が悪くてタクシーの中で嘔吐していることがわかっているため、この全体像における折衷案は非常に良くない。もし山口氏が、紳士らしく名誉ある態度で行動し、女性のためにコーヒーを注文して自分は部屋を出ていれば、スキャンダルは発生しなかっただろう。

 ここでわかっている事実関係のみでは、本当に何が起こったのか、私には判断することはできない。しかし、いかなる状況下においても、山口氏が行動規範に準じて自己規律と自身をコントロールしていれば、これら全てのことは不必要だったはずだ。

[BLUE リベラル派] 欧米では決して女性の過失にならない

In the West, It Was Never Her Fault

 「もし、彼女が自分自身をコントロールできたら、何も起こらなかっただろう」。同紙記事によると、これは意識のない女性とセックスをした事実に対して、山口氏という男性が、相手の女性を責めた発言だ。女性が「ノー」と言っていないからといって、それが「イエス」を意味するわけではないことを学ばずして、男は一体どうやって大人になれるのだろうか? この発想でいくと、電車の中で居眠りしている女性は、誰とでもセックスして良いと言っている、ということになってしまう。なるほど、山口氏のような男がいるから、日本には「女性専用列車」というものが存在するのだろう。

 自身をコントロールできなかったのは明らかに山口氏の方であり、その逆ではない。事件が起きた夜、もし山口氏が本物の紳士であれば、伊藤さんに手を触れることなく、安全に家まで送り届けたはずだ。日本人から見ると、アメリカ人というのはまったくマナーを知らない輩だと見えているかもしれないが、私たちは女性の弱みにつけ込むことだけは決して許さない。アメリカでは、酔っ払った女性や眠っている女性、または「イエス」と言っていない女性とセックスをしようとするのは、ルーザー(負け犬)だけである。そういうことをしようとする男は、刑務所に入れられる前に、顔を殴られるに違いないだろう。

 抵抗できない女性は、人間であって、おもちゃではない。山口氏はアメリカで働いていた経験があるようだが、アメリカにいる際に成長するための知識を学ぶ機会を逃してしまったようだ。次に彼がどこかで酔っ払って「自分をコントロールできなかった」時には、女性たちに顔を殴られることだろう。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者  
 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント
 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

【Red vs Blue】セクハラは党政治よりも大きな問題だ

https://bizseeds.net/articles/582

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。最近は毎日にように「まさか、この人が?」という文化人や有名人の過去のセクハラ行為が次々とメディアに取り上げるが……?

日本文化に関する記事 >

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

関連する投稿


テキサス人が選んだ2018年のフェイク・ニュース トップ5

テキサス人が選んだ2018年のフェイク・ニュース トップ5

 テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。年末を迎えた今回は、テキサスに暮らす保守派たちが選んだ「2018年のフェイク・ニュース トップ5」を著者の解説つきで紹介しよう。


文化の「盗用」について考える

文化の「盗用」について考える

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。アメリカに住んでいると、たびたび話題になるのが「文化の盗用」。当事者としてこの問題を扱うことになって感じたこととは?


ペプシコの名物CEO退任 女性CEO企業数が昨年より減少

ペプシコの名物CEO退任 女性CEO企業数が昨年より減少

アメリカのトップ500企業において、昨年は史上初めて女性がCEOの企業数が32社まで増え、全体の約6%となった。しかし今月6日、ペプリコのリーダーとして12年間、同社を牽引してきた敏腕女性CEO、インドラ・ヌーイ氏が秋に退任することを発表し、米大企業における女性経営者のパイオニアが経営の第一線から退くことを惜しむ声があがっている。


エリートだけが会員になれるデーティング・アプリは社会問題?

エリートだけが会員になれるデーティング・アプリは社会問題?

  アメリカでも結婚相手やパートナーとの出会いに繋がるオンライン・デーティング・サービスの需要は高く、各社は年齢層や地域を限定したり、人種や宗教で括ったり、真剣度の差などを売りにして競っている。そんな中、「会員になれるのは、男女ともエリートのみ」と厳しく限定したデーティング・アプリが注目されている。


黒雪姫は必要ですか?

黒雪姫は必要ですか?

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。政治、人種、宗教等の中立性を重視する「ポリティカル・コレクトネス」をめぐり、子供劇団で繰り広げられる悩ましい問題とは?






最新の投稿


成功への選択「入浴剤」2019年1月18日~1月24日

成功への選択「入浴剤」2019年1月18日~1月24日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


アメリカの本当の顔とは?

アメリカの本当の顔とは?

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、時代の変化に柔軟性のない共和党(保守)に対して、民主党(リベラル)がいかにそうした変化を受け入れて柔軟であるかを軸に、アメリカのあるべき今後の姿について語る。


誰でもシルク・ドゥ・ソレイユに挑戦できる! ラスベガスで新体験

誰でもシルク・ドゥ・ソレイユに挑戦できる! ラスベガスで新体験

エンターテインメントの街、ラスベガスは、カナダに本拠地のあるシルク・ドゥ・ソレイユのアメリカ拠点としても知られている。現在ラスベガスでは6つのショーが上演されているが、その本場の舞台に出演中の日本人パフォーマーが、新しいビジネスをスタートさせた。ラスベガス旅行を計画している人には特に注目の新情報だ。


あれから1年、#MeToo はどうなった?

あれから1年、#MeToo はどうなった?

アメリカ生活20年強。翻訳家の高柳準が、アメリカ文化とそれにまつわる矛盾を語る「アメリカで暮らしながら想うこと」。今回はハリウッド界に端を発する「#MeToo」について。女性差別問題は根深く、複雑化しやすい。性別や文化により、セクハラと性犯罪の違いに対する意識の違いを浮き彫りにしたこの運動、あれからどうなったのだろう?


アメリカ版の福袋? 女子力アップの「サブスクリプション・ボックス」

アメリカ版の福袋? 女子力アップの「サブスクリプション・ボックス」

日本の1月の風物詩のひとつである「福袋」。今年も85,000円もする「ジャイアント馬場福袋」があっという間に完売したり、新たな出会いを願う人のための「婚活福袋」が登場したりと世間を賑わせたが、アメリカにも福袋の発想に近い商品がある。それは若い女性を中心に人気を博している「サブスクリプション・ボックス」だ。その箱の中身とは?


アクセスランキング


>>総合人気ランキング