トランプ大統領に対する「抵抗勢力」の狙いは、トランプ潰しではない

トランプ大統領に対する「抵抗勢力」の狙いは、トランプ潰しではない

ヒッピーやリベラル派が多く住むオレゴン州ユージーン。彼の地のファーマーズ・マーケットで働きながら、米政治・社会について論破することが趣味なリベラル派市民、ロブ・スタインが語る「今日のアメリカ」。先日、NYタイムス氏が掲載したトランプ大統領のロング・インタビューを読んで、リベラル派の彼は何を思ったのだろうか?


本質的に非民主主義的なアメリカの選挙制度

 先月28日の『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたドナルド・トランプのインタビューの中で、トランプは、彼自身と政権に対して「抵抗勢力」と彼が称する者たちが行っている「ロシアと共謀して大統領選に不正に勝ったという告発」について論じた。

 トランプは、共謀にまつわる告発は、民主党にとって何よりも「選挙に負けた言い訳」だと言ったが、それはある程度、正しいだろう。もし、あの大統領選において公明正大に行われなかった点があるとすれば、トランプが言うように、クリントン陣営は選挙運動を適切に行わなかったという責任を免れられる。クリントンはあの選挙戦で無数の失敗を犯したが、トランプはその失敗のひとつを、「選挙人(※1)の票を得るための出馬と、一般投票で勝つための出馬とは、まったく違う仕事だ」と、的確に指摘した。

 しかし、トランプの正しさは部分的なものだ。ロシアとの共謀案件をトランプに対して最も強硬に追及する人々は、「トランプに負けた責任をクリントンに免れさせたい」ことと、「トランプ政権を否認したい」という動機とは別に、おそらくもっと深く、より狡猾な動機を持っている。

 我々の民主主義に対する大いなる脅威としてロシアの介入に注目を集めれば、アメリカの民主主義のより根本的な失敗や、そのシステムがどのように仕組まれているかということから、注意をそらすことができる。そのシステムとは、意義ある社会変化を起こすことをほぼ不可能にし、大部分のアメリカ人に社会政策に影響を与える声をほとんど持たせないようにするために、内部から仕組まれているものだ。アメリカの民主主義を脅かしているのは、DNC(民主党全国委員会)のサーバーをハックして民主党内部の動きに関する情報を漏洩したり、ヒラリー・クリントンに投票しないよう一部の人々を先導した可能性のあるフェイスブック広告を買ったロシアではない。問題の根本は、むしろアメリカの政治団体や選挙が、「本質的に非民主主義的である」と言う点にあるのだ。

 民主党はロシアの共謀に執着するより、「選挙人制度」をやめさせる戦いの先頭に立つことで抵抗するべきだ。選挙人制度は、 誰が大統領に選ばれるかにおいて重要な決定権をもつ「人口の割合」を制限し、非民主主義的である。 小さな州に住む人に不均衡な重みを持たせているため、選挙運動を2〜3の接戦州だけに集中させてしまう。カリフォルニア州やテキサス州の有権者を気にする大統領候補はいないので(編集部注:カリフォルニアはリベラル民主党、テキサス州は保守共和党)、その州の有権者たちにとって重要な問題は見向きもされない。

トランプの「抵抗勢力」とは、そもそも誰のことなのか?

 「抵抗勢力」はなぜ 米国上院(世界で最も非民主的な立法機関だと思う)を根本的に改革するための運動を先導しないのだろうか? 州ごとの上院議員の割り当てには多くの矛盾が存在する。「約4千万人のカリフォルニア州民のもつ選出議員数が、60万人以下のワイオミング州民と同じだ」であり、「米国の人口の18%以下の代表でしかない上院議員が、どんな法律でも通過させることができる」ということで、「フィリバスター(議事妨害)法のせいで、人口のたった11%を代表するにすぎない上院議員らが、どんな法律でも妨害することができる」ということを可能にさせている。この種の少数派のための規則は、民主主義とは全く相反する。それなのに、「抵抗勢力」はなぜ、公的資金を含む選挙資金の徹底改革を要求しようとはせず、彼らの選挙資金調達につきものの非民主的な介入と影響力を特定産業に許し続けているのか? 「抵抗勢力」はなぜ、有権者の選択を制限する小選挙区制選挙区を終わらせることを要求しようとはせず、代わりに比例代表制や優先順位付き連記投票制(※2)の改革を要求するのだろうか? 優先順位付き連記投票制は、より純粋に多種多様な人々を代表する議員の選出につながるかもしれないのに。「抵抗勢力」はなぜ、勝手な選挙区改定をやめさせるために戦わないのか? 

 そして、「抵抗勢力」はなぜ、民主主義のために戦わずに、ドナルド・トランプとだけ戦っているのだろうか?

 その答えは、こうだ。民主党の対トランプ「抵抗勢力」は、民主主義のことなど少しも考えていないのである。彼らはただ、現状と、二大政党複占状態における彼らの立場と、それに伴う寄付金・講演料・企業の役職を維持することしか考えていない。彼らは、本当はトランプでも他の共和党員の誰が大統領であっても構わないのだ。彼らは、連邦議会で民主党が少数党でも、大部分の州が共和党に牛耳られても構わない。彼らは、実際に民主主義の利益になるよう体制がひっくり返されるのを見たり、彼らの特権的地位を失う危険を冒したりするよりは、むしろ現体制において少数派であることを好むのである。

 合衆国憲法の制定者たちは、民主主義に深い疑念を抱いており、エリート層だけが権力を行使できるようにする条文を書いた。近代政党の指導者たちは、共和党でも民主党でも、国民主権に対する蔑視を共有している。彼らは、永遠の敵対関係を演じる一方で、アメリカをできる限り非民主主義的に保つという責務において連帯しているのだ。

 アメリカ人の大部分が、国民皆保険や良質な公教育、環境保護条例、軍事予算の大幅削減などを望んでいる。現体制の下では、これらの事柄がいつか実現するということは基本的に不可能だ。「米国の民主主義を打倒する」ためにロシアが共謀したという主張は、ドナルド・トランプに敵対する民主党公式の「抵抗勢力」と結びついた多くの他の主張と同じく、民主党の共犯関係を我々に忘れさせるために作られている。アメリカにおける非民主主義的な現状を維持し、人々の意志が打倒され続けることを確実にするための戦いにおける、民主党の共犯関係を。

 これに、騙されてはいけない。本当に民主主義のために戦いたいなら、そうした「抵抗勢力」に抵抗しなくてはならない。この「抵抗勢力」を我々のために戦わせなくてはならないのだ。ただトランプに対して戦わせておくだけではなく。

※1 )選挙人:米大統領選挙において、50州とワシントンDC(コロンビア特別区)での一般投票の結果に従い投票する人のことを指す。全米に538名おり、州の人口に応じた数定員が割り当てられる。最大人数が割当てらたカリフォルニア州は55人、最小のアラスカ州やワイオミング州などは3人で、18倍以上の差がある。しかし、この数字が定められたときから現在までの人口変動から、現状の割合には問題があるという声が高い。

※2 )優先順位付き連記投票制:単一の選挙区で二つ以上の候補を選択することができる投票方法である。
引用元:Excerpts From Trump’s Interview With The Times
ヒラリー・クリントンに関する記事 >

ヒラリー・クリントンの司法取引

https://bizseeds.net/articles/386

 ジャーナリストのエド・クレイン氏の記事によると、米司法省がヒラリー・クリントン氏に対し、私的な電子メールアドレスを使用して機密文書の取り扱いをした問題について、調査を再開する旨を伝え、もし有罪を認めれば司法取引をする用意があると申し出ていると報じた。

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