アメリカの大手メディアが伝えない「不法移民の実態」

アメリカの大手メディアが伝えない「不法移民の実態」

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、不法移民の親に連れられてアメリカに渡り、アメリカで育った子供たち「ドリーマーズ」に対する保守派の意見


夢見る「ドリーマーズ」は、本当に可哀想な子供たちなのか?

 これまでに何度も書いてきたが、アメリカの大手メディアは9割方がリベラルな思想の持ち主だ。オーナーも、編集者も、記者も、たいてい都会のリベラルな大学を出て、裕福な人々が住む地域で暮らしている。そのため、彼らの報道には田舎に住む人々やブルーカラーの労働者たちの意見が全く反映されない。

 たとえば今、アメリカで大問題になっているDACA(不法移民の親に連れられて不法入国した子どもの強制退去を中止したオバマ大統領勅令)に関しても、大手メディアは都会のエリートの視点からしか報道していない。

 米大手メディアの大半は、DACA対象者のことを 「ダーカの子どもたち」、または「ドリーマーズ」(2001年に議会で否決された未成年外国人育成救済教育法Development, Relief and Education for Alien Minors Actの頭文字)、つまり「夢見る人々」と呼び、あたかもDACA対象者全員が「あどけない子どもたち」、あるいは「前途有望な人々」であるかのように見せている。そして、彼らについて報道する際には、医師や学者、兵士になった極一部のDACA対象者と、彼らを支える「働き者の親たち」のみを例にあげてフィーチャーし、「DACAの子どもたちも、その親である不法移民も、アメリカにとって重要な資産です」と、彼らがアメリカで役に立っていることを連呼している。

 しかし、DACA対象者の平均年齢は子供ではなく、25才(最年長は36才)の大人だ。移民研究センターや移民法改革連盟の調査によると、彼らの24%は英語が話せず、49%は高校中退者で、7人のうち1人はメディケイド(政府が負担する低所得者向け医療費補助制度)の対象者である。

刑務所の囚人5人に1人が非アメリカ国籍

 さらに、国土安全保障省は「2017年8月までに不法移民の2,139人が犯罪を犯して有罪になった」と発表し、同省が司法省と行った外国人囚人に関する調査では、「連邦刑務所の囚人のうち58,766人(囚人の5人に1人)は非アメリカ国籍で、そのうちの35,334人は不法移民」であることが明らかになっている。

 移民法改革連盟は、アメリカ在住不法移民人口を1,250万人と見積もっているため、不法移民の0.28%が連邦刑務所の囚人ということになる。一方、アメリカ人の人口は約3億2,600万人なので、連邦刑務所のアメリカ人の数はアメリカ人総数の0.072%で、単純に計算しても不法移民の犯罪率が非常に高いことが分かる。また、防犯リサーチ・センターの調査では、アリゾナ州のDACA対象者数は同州人口の2%で、アリゾナ州の刑務所に収容された囚人の8%を占めていることがわかっている。

 このような調査の結果は、トランプが勝った州では地元ニュースが伝えており、テキサス州やアリゾナ州など不法移民が多い州では、不法移民による犯罪の被害者も多い。また、ミシガン州やオハイオ州、ウィスコンシン州、ペンシルバニア州などでは、不法移民による安い労働力と、彼らが持ち込んだ麻薬の被害を被っているため、州民たちにとっては、不法移民退去は死活問題ともいえるほど重要だ。

 しかし、米大手メディアは不法移民に関する不利なデータはほとんど報道しないため、リベラルな州に住んでいる人々は、不法移民の実態を知らずに、「DACAの子どもたちに冷たい保守派やブルーカラーの労働者は、同情心に欠ける人種差別者だ」と、トランプ支持者を蔑んでいる。

 ヒスパニック系人種が票田のリベラルな民主党議員は、不法移民を守るために政府機関を閉鎖したり、リベラルなカリフォルニア州では不法移民のための弁護士の費用や不法移民の大学入学費や授業料を州政府が賄っている。アマゾン社のジェフ・ベゾスCEOもリベラル派として知られるが、DACA対象者1,000人に3,300万ドルの奨学金を約束している。

 このようなリベラル派による「不法移民最優先策」を見れば、不法移民から実害を受けたエンジェル・ファミリー(不法移民に殺された被害者の遺族)や、ブルーカラーの人々が、「アメリカ人優先政策」を唱えるトランプ大統領を支持し続けるのも、無理はないことがわかるだろう。

引用元:
■司法省、及び国土安全保障省の外国人の囚人に関する調査
https://www.justice.gov/opa/pr/pursuant-executive-order-public-safety-department-justice-releases-data-incarcerated-aliens-0

https://www.dhs.gov/sites/default/files/publications/Alien_Incarceration_Report_OIS_FY17_Q4_2.pdf

■防犯リサーチ・センター
https://crimeresearch.org/

■移民研究センター
https://cis.org/

■移民法改革連盟
https://fairus.org/

訳が分からないアメリカの不法移民問題

https://bizseeds.net/articles/619

保守とリベラル派の対立が激化し、「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。1,100万人以上とされるアメリカの不法移民。トランプ政権発足後、取り締まりが強化されているが……。

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この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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