南部では、トランプ大統領は嫌われていない

南部では、トランプ大統領は嫌われていない

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などを、ジョーンズ千穂がアーカンソー州より徹底紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は、長年アメリカを二分する「人工妊娠中絶手術問題」を、南部在住の著者が一般人目線で、ご近所さんの意見をまとめてみた。


日本は「トランプはダメ」だと思い込み過ぎでは?

 先日、日本に帰省した際、会う人ごとに同じ質問をされた。

「トランプは、正直どうなの?」

 日本に住んでいる人からすると信じ難いのかも知れないが、アメリカ南部に住んでいる私に聞こえてくる声は、「トランプ、頑張れ!」である。

 たまに首を傾げたくなるようなツイートをする彼に困惑することもあるが、『ニューヨーク・タイムス』紙やCNN等の反共和党メディアは、トランプに関する目を疑ってしまうようなニュース、つまりは彼らが仕立て上げた嘘のニュース(トランプ大統領がフェイク・ニュースと呼んでいるもの)を報道することが多い。そういうリベラル派が報道するニュースのほとんどは、その後にトランプ側が事実を証明しているのに、反トランプの人達は政権が説明した事実には目もくれないし、大々的に批判をした報道番組ではフォローアップもほとんど報道されない。

 事実として、トランプ政権になってから株価は上がり、失業率は2000年以来初めての4.1%まで下がり、GDPも上昇している。これらに加えて、南部に住むクリスチャン(キリスト教信者)たちがもっと喜んでいることがある。

トランプは「人工妊娠中絶手術の反対」を訴えた初めての米大統領

 それは、トランプがアメリカの大統領として初めて「人工妊娠中絶手術の反対」を訴えたことだ。クリスチャンの中には、トランプがもし人工妊娠中絶に賛成ならば投票しなかった、という人がいるほど、クリスチャンにとって人工妊娠中絶は大問題であり、だからこそ米大統領選挙において歴代候補者が必ず国民から尋ねられる質問なのである。

 クリスチャンにとっては、「受胎=神様から命を与えられた」、つまりは受胎の瞬間から人命があると解釈されている。人工妊娠中絶手術は、神様から与えられた贈り物(命)を人の手で殺めること、いわゆる殺人なのである。

 私が住むアメリカ南部には、「自分はクリスチャンだが、場合によっては人工中絶手術には賛成」などと言う人は、「本当のクリスチャンではない」とする強い意見を持つ敬虔なクリスチャンも多い。私からすると、「では、レイプ被害などによる望まぬ妊娠をした場合はどうなるのか?」という疑問も湧くのだが、人工中絶手術反対派は、与えられた命にそのレイプ犯の罪をかぶせるべきではないという意見だ。その命の誕生は、レイプの事実とは別物であり、赤ちゃんには罪はないので、その赤ちゃんが授かった命を絶やすということは、殺めること、つまりは殺人となるそうだ。もう誕生した命なので(受胎した時点で人間と判断される)、その場合は産まれた子を養子に出すか、シングルマザーとなるかだが、そういう場合の米国における救済制度は整っているというのが彼らの意見である。

 確かに、そういう支援制度は多々あるし、養子縁組は米国内では珍しくない。子供のいない夫婦は、「恵まれない子供を助けるためにも、養子縁組をしてはどうか?」と、親切に“お勧め”されることも多い。クリスチャンか否かにはかかわらず、アメリカには「養子縁組をする=良いことをした/良い人間」という風潮があると思う。

 この人工中絶手術の賛否にかかわる問題は、長い間、全米をほぼ二分する問題となっている。1970年代に最高裁判所が「人工中絶手術は違法ではない」と定めたが、それ自体が、反対派が半数近くいる中で充分な協議や投票もされず、「民主的な決断ではなかった」として長年クリスチャンたちの怒りをかっていた。そこに、トランプが米大統領として初めて「人工妊娠中絶手術の反対」を訴えたことで、敬虔なクリスチャンたちは大喜びしているのである。

 アメリカの政治家なら誰もが触れたくないとされる「人工妊娠中絶手術の賛否」問題。国内の80%ほどの人口がクリスチャンというアメリカでは非常に大きな課題だが、果たしてこれが解決される日は来るのだろうか。

トランプ大統領に対する「抵抗勢力」の狙いは、トランプ潰しではない

https://bizseeds.net/articles/627

ヒッピーやリベラル派が多く住むオレゴン州ユージーン。彼の地のファーマーズ・マーケットで働きながら、米政治・社会について論破することが趣味なリベラル派市民、ロブ・スタインが語る「今日のアメリカ」。先日、NYタイムス氏が掲載したトランプ大統領のロング・インタビューを読んで、リベラル派の彼は何を思ったのだろうか?

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この記事の寄稿者

 東京都出身。アメリカ人航空機パイロットの婚約者の米本土転勤に伴い、一般企業を退職。K-1 Visa にて渡米したのち結婚。現在、アメリカ南部アーカンソー州在住。移住後はパイロットを夫に持つ婦人の会や、日本語補習学校を通じての活動、現地日本人や移民•マイノリティーへの支援、生活アドバイス、ネット上でのアメリカ生活に関する相談・コンサルテーション、翻訳、通訳、観光案内など、国際線パイロットの夫のスケジュールに翻弄されながらも、さまざまなボランティア活動に力を注いでいる。

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