読書と保守とリベラルと

読書と保守とリベラルと

保守とリベラル派の対立が激化し、「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。アメリカ社会ではごく一般的な、近所の主婦たちが集まる「ブック・クラブ」。主婦たちのリアルな思想の井戸端会議の実態とは?


アメリカ人は議論好き

 アメリカに住んでいると、よく見かけるサークルのひとつに、「ブック・クラブ」というものがある。毎回ひとつの本を取り上げて、その本について議論を交わす集まりで、共通の趣味をもった人たちや、近所に住む人たちなど、様々なグループが「ブック・クラブ」を開催している。アメリカ人は往々にして議論好きだ。こうした機会があると、ここぞ!とばかりに自分の考えを披露する。

 ブック・クラブで仕入れた情報を、今度は家に持ち帰り、そこでもまた議論をする。小さな子供でも分かるような話題であれば、子供にも議論に参加させる。大人たちは例え実用的とはいえないような子供の意見でも黙って聞く。こうした姿勢で子供のうちから自分の考えを述べさせる習慣があるのは、この国の強みかもしれない、と思う。とにかく、その持論が正しいか正しくないか、使えるものなのか否かは別として、第三者に対し「自分の意見を自分の言葉で語る」ということにおいては、アメリカ人は本当に達者と言ってよいだろう。

ブック・クラブは情報収集の場

 私は「ママ友」が主宰するクラブに参加している。そこにはホームスクールで子供を教えている人が半数近くいる。ホームスクールとは、子供を学校には通わせず、自宅とグループで子供を教えるというスタイルの教育法で、私の住む地域ではホームスクール人口が高い。全米で約160万人近くの子供が、ホームスクールで学んでいると言われているが(2017年現在)、子供を自宅で教えている親たちにとっても、「ブック・クラブ」は重要な情報収集の場なのだそうだ。学校に通わせていれば入ってくるような地域の情報を、ブック・クラブで収集するのだ。彼ら以外にも、クラブで選ぶ書籍の内容や、集まる人などの属性を選んで、情報収集の目的でクラブを利用する人も多い。

 ちなみに私の会は保守派、リベラル派、そして中間層とバラバラの思想背景の人が参加しているので、そんな特性を生かし、「あえて政治に関する話」をする機会にしている。取り上げる本はもっぱら小説だが、政治や思想の話がしやすい書籍ばかりだ。

思想が違っても求めることは同じ?

 前回、私たちが選んだ本は、Stephanie Drayの『America’s First Daughter』。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーにもなった大作で、アメリカ独立宣言の主要な作者としても知られる、第三代アメリカ大統領であるトマス・ジェファーソンの娘、マーサ・ワシントン・ジェファーソンを題材にした物語だ。ジェファーソンは妻を若くして亡くしているため、大統領時代は娘のマーサがファーストレディの役割を果たしていたが、現大統領の娘、イヴァンカ女史とマーサの共通点なども、話題に上った。

 この日、最も議論になったのは、 ジェファーソンと彼の奴隷だった黒人女性・サリー・ヘミングスの関係についてだった。アメリカでは「建国の父」として尊敬を集めるジェファーソンが、奴隷制度がまだあった時代に、黒人女性との間に子供までもうけていた可能性があるというのだ。

 ジェファーソンが生きた時代は現代とは異なり、白人と黒人が付き合うことなど考えられなかっただけでなく、しかもヘミングスは彼の奴隷である。この説が正しいのであれば、そんな時代に大統領が黒人との間に6人もの子供を持ったというのは、驚きでしかない。話題が人種に関わることだけに、この件について話は白熱していったが、かなり突っ込んだ思想の話をしても、議論の方向性は常にまとまっていた。最後には「人類は平等という時代に生きるのであれば、保守とリベラルはどう手を取るべきか?」という、ポジティブな方向に話が及んだので、ちょっと嬉しくなった。参加者の人種も様々なので、それぞれの立場で語る人種問題も共有できた。

 現在のアメリカの場合、支持する政党や思想が異なると、その時点で相手の話は聞こうともせず、「あいまみえない」という状況に陥ることの方が多い。しかし共通な趣味や楽しみなどを軸にしながら、じっくりと話せば、思想が異なるからと「分断している」ことをよしとしない人は、実はとても多いのだと感じる。友達の家で、お茶、クッキーをつまみながらの大議論――こうした「アメリカらしい」小さな活動こそが、思想の差異を埋めるためには、もっと必要なのかもしれない。

パープルと呼ばれる人――「中道派」とは誰を指すか?

https://bizseeds.net/articles/601

保守とリベラル派の対立が激化し、「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが「アメリカ」を語る。保守でもリベラルでもない立場をとるアメリカ人の考えは、なかなか表に出てこない。中道派とは、どんな人たちなのだろう?

アメリカの教育に関する記事

この記事の寄稿者

青山学院大学卒業。コマーシャルなどの映像コーディネーターを経て1998 年、宝塚歌劇団香港公演の制作に参加。その後プロデューサーに転身。株式会社MJ コンテスほか複数企業の代表として、ネバダ州立大学公認のピラティススタジオ日本進出事業や各種研修事業、2007 年に行われた松任谷由実の 「ユーミン・スペクタクル シャングリラⅢ」をはじめとする国内外の舞台・イベント制作など、さまざまな事業を展開。これまでにベストセラー数冊を含む70以上の書籍、DVD 作品を企画、プロデュース。現在も様々な事業を展開しながら“Go Tiny”(大切なものが、すべて半径5メートル以内にあることに気づこう!の意)というライフスタイルの提案も展開中。

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