なぜ、アメリカに「サンクチュアリー法」が必要なのか

なぜ、アメリカに「サンクチュアリー法」が必要なのか

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住で、トランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回のコラムは先日、全米でニュースになった「カリフォルニア州の新法律は不法移民を守るためのものなのか?」について、著者がリベラル派としての見解を述べる。


サンクチュアリー(聖域)とは何なのか?

 米移民税関執行局(ICE)の連邦職員たちが、北カリフォルニアの不法移民を対象に国外退去させる大々的な作戦を予定しているという動きを受けて、カリフォルニア州の司法長官は州内の雇用主たちに向けて「ICEの援助をすれば、州法に違反するとして起訴の対象となる」と発言した。

 同法長官は、2018年に法律となったばかりの議会法案450を照会している。この法律の項目内には、ビジネスが行われている敷地内(たとえば農場など)に、令状や裁判所の召喚状を持たないICE職員の立ち入りや個人情報の収集を行う行為に対して、雇用主が自発的にICEに同意することを禁じている。つまり、この法律は雇用主たちにICE(合衆国の法律下)と州の法律のどちらかを選ばせるものであり、雇用主たちを難しい状況に置く可能性がある。

 カリフォルニア州で働く人の10人に1人は、不法移民だと言われている。メキシコから、アメリカの国境を渡ってカリフォルニアにやってきた人々は、それまでよりも良い生活をするチャンスを掴むためにアメリカに来た。なかには本国での貧困や犯罪、戦争などから逃れるために非常に危険なリスクを負ってやってきた人たちもいる。不法移民はすでにカリフォルニアの文化に根付いた人々であり、経済の重要な部分(急所)を担っている状況だ。

 アメリカの多くの都市や州では「サンクチュアリー(聖域)」法を制定している。これらの法律では、地方自治体(州や市)は移民法を施行する連邦政府(全米)を拒否するとしているが、それは不法移民の国外退去処分を阻むという意味においてではない。サンクチュアリー法を通した州や市は、不法移民たちの ほとんどが法を守り、生産性が高い人々であり、彼らは社会の一部であることを認識している。そして、地方自治体の主責任は、その地域の安全を守ることだとも理解している。不法移民の人口は先述の通り少なくない。それらの人々が、連邦政府局員と鉢合わせすることを恐れて生活をすれば、どうなるだろうか。犯罪が起きても警察に通報しなくなり、子供たちを学校に行かせなくなり、病気でも病院にいかなくなる人が増え、結果として地域コミュニティー全体の安全性が弱まってしまうだろう。サンクチュアリー法は、不法移民にまつわる複雑な問題を「解決するもの」ではなく、地方自治体が「自らのコミュニティーを守る」という責任を優先させるために必要な措置なのだ。

すべての不法移民がいなくなったら、アメリカはどうなるのか?

 アメリカ人の生活に不可欠な重労働(たとえば農業や屠殺など)で、アメリカ人がやりたがらない仕事のほとんどは、不法移民たちが行っている。そんな中、もし、すべての不法移民が一斉検挙されて国外退去となれば、カリフォルニアの経済は荒廃するだろう。また、不法移民の中にはアメリカで生まれ育ち、アメリカ以外の国で生活したことがない人も多いため、もし一斉検挙が起きれば、数百万人とその家族が散り散りにされて路頭に迷うだろう。リベラル派を自負する私は、「すべての人々が尊厳と尊敬をもって扱われる価値がある」と信じている。米政府は、すべての人々がそのように扱われるように保証する義務があると思う。

 ドナルド・トランプはイジメっ子であり、不作法者だ。トランプは自己PRにかけては天才的だが、それ以外のことに関しては、まったく知性のない男である。彼は文学や美術にまったく興味がなく、自分が信じることに反対する考え方や意見をすべて不要としてしまう。彼が大統領になったのは、彼と同様な考え方をする投票者たちの共感を呼んだからだ。彼の支持者とは、たとえば「国境に壁を作る」とか、「アメリカをもう一度、偉大な国にする」などのシンプルなスローガンを掲げれば、複雑な問題も解決できると信じてしまうような輩を指す。とにかくトランプは、ICEの連邦職員たちに圧力をかけてカリフォルニア州を、つまり大統領選の宿敵だったヒラリー・クリントン候補を圧倒的大差で支持したリベラルな州を、罰しようとしているのだ。

 カリフォルニア州は人々の尊厳を信じて、トランプの職権乱用に立ち向かっている。この国の移民システムの難点を取り上げ、その微妙な問題点を解決するために正真正銘の努力をする知的で思慮深いリーダーがアメリカに現れるその日まで、独自の州法で人々とコミュニティーを守ろうと努力するカリフォルニア州に対して、私は心から拍手を送りたい。

今回のテーマに関する参考記事:
http://www.foxnews.com/us/2018/01/19/california-ag-will-prosecute-employers-who-violate-sanctuary-laws.html

トランプ大統領に対する「抵抗勢力」の狙いは、トランプ潰しではない

https://bizseeds.net/articles/627

ヒッピーやリベラル派が多く住むオレゴン州ユージーン。彼の地のファーマーズ・マーケットで働きながら、米政治・社会について論破することが趣味なリベラル派市民、ロブ・スタインが語る「今日のアメリカ」。先日、NYタイムス氏が掲載したトランプ大統領のロング・インタビューを読んで、リベラル派の彼は何を思ったのだろうか?

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この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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