トランプの「軍事パレード開催」発言を兵士たちはどう受け止めたか

トランプの「軍事パレード開催」発言を兵士たちはどう受け止めたか

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、「軍事パレードを開催したい」というトランプ大統領発言に対する兵士や保守派の意見を紹介する。


軍人をバカにするリベラル派と、大統領に感謝する保守派たち

 2月初旬、カリフォルニア州の高校教師が、「軍隊に入るような人間は、頭が悪い最低の人間だ。他に選択肢がなく、親に愛されなかった連中だ」と発言し、問題になった。

 大手メディアやリベラル派のエリートたちの大半はこの教師と同意見で、「軍隊は暴力的で人を殺すことを何とも思わないような、IQが低い右翼の集団」だと思っている。そのため、トランプ大統領が、「パリ祭の軍事パレードのようなものをアメリカでも開催したい」と言ったとき、9割方のメディアが、「トランプは北朝鮮、旧ソ連、ナチスのような全体主義的軍事国家を目指している!」と、恐怖を煽るような報道をした。

 私が住んでいるテキサス州の田舎には、退役軍人を含めた米軍兵士が多く住んでいる。彼らは皆、堅実で義理堅く、勤勉で信心深く、犠牲的精神にあふれ、何よりも人助けが好きな頼りになる人々だ。歩兵として前線で戦った人もいれば、戦闘機のパイロット、潜水艦のメカニック、ミサイルのエンジニア、軍医、サイバー・セキュリティ専門家もいて、少なくとも私が知る限り、「親に愛されなかった、頭の悪い最低の人間」とはほど遠い。皆、第一志望で軍隊を選んでおり、言うまでもないが、入隊の目的は戦争が好きだからではなく、国防である。

 彼らが入隊した理由は、一言で言えば「愛国心から」だが、これをもっと具体的に説明すると、「愛する人々を守りたいから。親兄弟、恋人、配偶者、子ども、隣人知人がアメリカで享受している自由と権利を守ってあげたい」ということになる。つまり、保守派にとって兵士たちは、「愛する人を守るために戦う勇士」なのだ。

 トランプ大統領も、兵士を「アメリカに住む人々の自由と権利を命がけで守ってくれる英雄」と見なしており、ことあるたびに彼らの勇気と犠牲的精神を褒め称え、頻繁に軍の基地や退役軍人病院を訪問し、兵士をさまざまな式典に招待している。それ故に、「軍事パレードを開催したい」というトランプ大統領の一言を、保守派は「大統領は軍隊を自慢したいのだ」と捉えて、「大統領が米軍を誇りに思い、兵士たちを敬愛している証拠」だと受け止めて感謝しているのである。

 とはいえ、軍事パレードには数百万ドルという費用がかかり、中東の戦地から兵士を呼び戻すことも大変だ。そのため、私の周囲の兵士や退役軍人たちは皆、「そのお気持ちだけ、ありがたく頂戴させていただくので、パレードにかかる費用を負傷した軍人の治療費にあてて欲しい」と言っている。

「愛国心」の解釈が異なる保守とリベラル

 ちなみに、リベラル派と保守派は、「愛国心」に関しても、全く異なる解釈をしている。リベラル派には、パトリオティズム(愛国心、Patriotism)という言葉を、ナショナリズム(国粋・国家主義Nationalism)と混同して毛嫌いし、軍人や保守派を「軍国主義の怖い右翼」だと思い込んでいる人が多い。

 一方、保守派の「愛国心」は、前出した通り、親類縁者への愛や隣人愛に根ざしたものであり、抽象的な「国」という概念や特定のイデオロギーを愛している、というものではない。また、保守派はナショナリズムとは、「自国に誇りを抱き、母国の発展と繁栄を望むこと」だと、非常にポジティブな解釈をしている。

 実はリベラル派も、パレスチナ人やチベット人のナショナリズムや、ユクライナ人の愛国心には非常に好意的であり、リベラル派の愛国心・ナショナリズム嫌いはアメリカに限ったことと言えそうだ。

 同じ言葉でも解釈が全く異なるので、リベラル派と保守派の会話が成り立つはずがない。連日連夜トランプに罵詈雑言を浴びせ、「トランプはイヴァンカと寝ている」などの大嘘を平然と報道するリベラルな記者たちが、「国家元首を罵倒しても投獄されないのは、米国兵士たちがアメリカがイスラム国の支配下に陥ることを防ぎ、我々の言論の自由を守っているからだ」と、認識する日が訪れることを、保守派は願っている。

将校には不人気? トランプ大統領、軍での支持率

https://bizseeds.net/articles/537

 波乱にとんだ大統領選挙から1年が過ぎ、トランプ大統領支持率を分析した記事が米メディア各紙でも多くみられるようになった。トランプ大統領はメディアに不人気ということもあり、新聞その他で見られる分析には概ね否定的な見解の方が目立っている。

米軍に関する記事 >

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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