アメリカの学生のソーシャルライフ

アメリカの学生のソーシャルライフ

アメリカ東海岸の寄宿学校を卒業後、難関コロンビア大学バーナードカレッジに入学した日本の若者は、アメリカの若者をどう見るか? 次世代を動かすアメリカの姿を紹介する光田有希の『取説:アメリカの若者たち』。今回はアメリカの大学生たちのソーシャルライフについて、同じ大学生の視点からそこに息吹く文化を紹介する。


どの大学でもパーティーばかり?

 ニューヨークでの大学生活を始めてから、日本の人たちから「アメリカの学生はどんなことをして遊ぶの?」と聞かれることが多くなった。確かに日本とアメリカでは、学生の遊び方やソーシャルライフの様子はとても異なる。今回は、その中でも二国間のソーシャルライフの2つの違いと、そこから生まれる文化を紹介したい。

 ひとつ目は、大学のあるロケーションが学生の遊び方にどう影響するか。日本では多くの名門校を含む大学は都市部にあるが、広いアメリカでは周りにほとんど何もなく、都市部へのアクセスが不便な場所にある大学が多い。大都市の中心にある大学などでは、私たちのイメージする「キャンパス」自体がなく、街と同化している。ニューヨーク州立大学やボストン大学がその例にあげられる。そういった都会の中にある大学でのソーシャルライフや遊びはとても多様で、いわゆる「パーティー」とされるもの以外にも、美術館やローカル・イベントなど、刺激のあるアクティビティのオプションがある。

 しかし、キャンパスが田舎にある大学では、周りにアクティビティが少ないため、みんなで飲んで踊るタイプのパーティー・スタイルのソーシャルがメジャーだ。そのため、お酒を飲むことやドラッグが学生の楽しみになってしまうこともある。例えば、ニューハンプシャー州にあるダートマス大学では、あまりにも生徒の飲酒習慣がひどかったため、ワインやビールなどのアルコール度が低いお酒は許可されているが、テキーラなど度数が高いお酒を所持することは禁止されている。アメリカは州によって法律が異なるものの、21歳にならないとお酒が買えない州が多いため、未成年飲酒や薬物使用などの問題も少なくない。

フラタニティーと、ソロリティー

 ふたつ目の違いは、アメリカの大学に存在する二大ソーシャル・グループ、「フラタニティー」と「ソロリティー」の存在だ。ハリウッド映画などで見たことがある人も多いと思うが、簡単にいうと、これらは大学内での社交団体、つまり「ソーシャル・グループ」であり、フラタニティーには男子生徒のみ、ソロリティーは女子生徒のみが参加でき、大学によってその種類や数の多さは異なる。語源はラテン語の兄弟・姉妹という意味で、今でも「ブラザーフッド・シスターフッド」という概念は大切にされている。ちなみにフラタニティーには、週末に生徒たちのために“パーティーを主催する”という役割もある。

 フラタニティーとソロリティーには誰でも入れる訳ではない。選抜制で、いわばオーディションのような「ラッシュ」と呼ばれる期間があり、キャンパス内のいくつかのグループに属する上級生と話し、外見、人柄、成績、家柄などが評価され、そうして選ばれた人だけがグループに入ることができるのだ。

 各グループ(ハウス、チャプターとも呼ばれる)がギリシャ文字で構成された名前を持っていることから、フラタニティーとソロリティーから生まれる文化・活動を合わせたものは「グリーク・ライフ」(ギリシャ=グリーク)と呼ばれている。グループごとにシンボルやモットー、ルールなどがあり、大学を選ぶ際にもその大学でどれだけグリーク・ライフが盛んかを気にする生徒もたくさんいる。グループに参加する目的には、奉仕活動やネットワーキングなども挙げられるが、ほとんどの生徒は社交目的でグループに入る。グリーク・ライフに参加すれば友達もでき、パーティーなどの社交場に呼ばれることも多くなる。

 しかし、グリーク・ライフを批判する声も少なくない。例えば、この「ラッシュ」という選抜期間だが、実際に成績や人柄で選んでいるのかというと、そういうわけではないようだ。ラッシュに参加した友達によると、話した内容よりも、顔や服装をチェックされている感じがしたと言っていた。

 また、フラタニティーやソロリティーに入るのにはお金がかかり、大学や種類にもよるが一学期ごとに7万円から、高ければ50万円ほど支払わなければならないグループもある。そのため「お金を払ってまで友達が欲しいのか」と批判する人もいる。特に米南部の大学ではソロリティーが盛んで、それぞれのグループが持つ「ハウス」と呼ばれる建物も、とても豪華な造りである。入会にもお金がかかり、イベントでのコスチュームなどにもお金がかかるとなると、低所得の学生たちにはとても参加しづらい環境だ。大学にもよるが、特にソロリティーに参加する学生は白人が多いため、こういった目に見えにくい人種および経済的な不平等による排外的な文化が大学にあることは長年、問題視されている。しかし、フラタニティーとソロリティーは長い歴史に裏付けられた欧米大学の文化のひとつだ。どちら側にも言い分がある難しい問題だと思う。

 私がアメリカの大学に通っていて最も強く感じるのは、パーティー・カルチャーが強くても、みんなしっかり勉強していることだ。英語の言い回しで “Work Hard, Play Hard” (たくさん働き、たくさん遊ぶ)というフレーズがあるが、まさにこの通りで、生徒のオンオフの激しさに驚かされることもある。週日は図書館にこもって猛勉強し、金曜日と土曜日の夜だけは思いっきりはしゃぐ子なども珍しくない。

 この、アメリカ人の勉強にも集中し、遊ぶときには遊ぶという文化は、社会人になっても続いていると思う。アメリカやヨーロッパでは「ワークライフ・バランス」(仕事とプライベートの生活のバランス)を大切にする。日本のように残業に残業を重ね、家族や趣味にかける時間やエネルギーがないというような働きすぎの文化は、欧米では良いものとは見られていない。

 日本では「大学のときくらいしか遊べない」、「社会人になったら働くことしかできない」と考えている学生が多いが、私は大学生でも社会人でも「バランス」が大切だと思う。遊びすぎてもいけないし、働きすぎてもよくないのだ。実際にメリハリのついた生活をしている日本の学生の友達もいるし、趣味や家族との時間をちゃんと大切にしている人も多く知っている。もちろん通っている大学や勤めている会社による違いは大きいと思うが、遊び方や働き方も「文化」の一部であるということを強調したい。だからこそ、メリハリのある豊かな生活のスタイルを、ひとりひとりが意識することが重要なのだ。

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この記事の寄稿者

1997年生まれ、21歳。東京都出身。青山学院初等部・中等部を卒業後、米国バージニア州の女子校、St. Margaret’s Schoolに2年通う。2015年にコネチカット州のWestminster Schoolに転校し、卒業。現在はニューヨークにあるコロンビア大学・バーナードカレッジにて都市計画と国際関係、教育を専攻し、国際貢献の分野を志している。

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