【Red vs. Blue】トランプ発言「米国は日本などに対して莫大な金額を損失している」

【Red vs. Blue】トランプ発言「米国は日本などに対して莫大な金額を損失している」

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々の見解を披露する。今回は「アメリカは日本などに対して莫大な金額を損失している」というトランプ大統領の発言と新貿易税について。


 トランプ大統領は先月12日、インフラ投資計画を発表する席で「長年にわたって米国を利用してきた貿易関係国」に対し、同盟国も含めて相互税を課すと発表した。「米国は中国、日本、韓国などに対して莫大な金額を損失している」とし、「これらの国々は過去25年間好き放題をしてきた。しかし、我々は政策を変更することにした」と語った。

 しかし、貿易アナリストたちは、諸外国に課せられている現行の比較的低い関税は長年にわたるWTO(世界貿易機関)との複雑な交渉の結果であり、その関税を変えるとすれば米国はWTOから脱退しなければならなくなると指摘。アメリカの多くの企業がグローバル化していることを考えると、アメリカ経済を損なうことになるだろうと分析し、大統領の推奨する「相互税」の実現は難しいと言っている。

 大統領の発言に関してホワイトハウスは、「相互税とは単に『そちらが課税し、こちらも課税する』と言う意味に過ぎない」と発表したが、相互税の具体的な内容については明らかにしていない。ビジネスの交渉手腕を誇るトランプ大統領の「貿易交渉戦術」をRedとBlueはどう読み解くか?

出典『ニューヨーク・タイムズ』
Trump Threatens New Trade Penalties, but It Could Be a Hard Bargain

[Blue:リベラル派]  トランプは今でも20世紀に取り残されている

Trump Proves Yet Again That He Is Stuck in the 20th Century

 新しい貿易ペナルティをかけるとの脅しは、アメリカにとって有益というよりも、トランプの気分を良くさせることのように見える。関税による脅しが貿易パートナーを混乱させる以外に、どんな意味があるのか想像しがたい。まず、協力を促す役には立たないだろう。最近トランプは、日本や他国の貿易は「やりたい放題だ」と言って非難している。

 実際にトランプは、1980年代以来の日米間の貿易に対して苦情を呈している。しかし、例えば車を例にとるなら、1981年にジョージ・ブッシュ政権が日本に自動車の輸出を自主的に制限するように頼み、それを受けて日本は自動車の生産をアメリカで開始した経緯がある。今ではホンダ、日産、スバル、トヨタなどは米国で製造されている。トヨタ、マツダは現在アラバマ州に新しい工場を建設中だ。それなのにトランプは、日本がアメリカの新車を十分に購入していないと不満を表明しているわけだ。アメリカの自動車メーカーには、日本の消費者が慣れ親しんだサービスと同レベルのディーラー・ネットワークに投資するだけの決意があるだろうか? アメリカのディーラーは、メンテナンスの無料サービスや、メンテナンスの予約をした車を顧客の家まで受取りに行くなどというサービスは提供していない。

 トランプは先月、家電も槍玉にあげた。韓国の人気ブランド、LGはアメリカに新工場を建築中だったにも関わらず、関税は課せられた。輸入洗濯機に課せられる新しい関税は、LGやサムソンよりも、それらを販売するアメリカの小売業者をこらしめることになる。 

 大統領になって以来、トランプはグローバル化した21世紀のビジネスの性質というものを理解することに失敗し続けている。さらに悪いことに、彼は21世紀のビジネスを全く理解できていないようだ。トランプは、化石燃料産業への熱意を示すために後ろを向き、同時にアメリカのハイテク企業が革新と創造を続けるために必要な、高度に熟練した労働者の雇用を可能にするビザ・プログラムに終止符を打とうとしている。大統領がお気に入りのツイッターは、まさに廃止が脅かされているプログラムのもとで雇われた、何百人もの熟練外国人労働者の助けを借りて作られたことを、彼は知らないのだろうか?

[Red:保守派] アメリカは貿易政策を平等な立場に置くだけ

America puts her trade policy on an even footing.

 この話で非常に重要なことが二つあるが、そのうちのひとつは同記事内では言及されていない。まず、トランプ大統領は何も、そして誰も脅していない。彼は単に、国に公正な貿易政策の原則を適用することを提案しているだけだ。

 私は、ニューヨーク・タイムズ紙が、「貿易ペナルティを科すことに対して米国を非難したこと」が問題だと提起したい。それが非難されるならば、これまでに非常に多くの米国の貿易関係国が、貿易ペナルティを科してきたことについてはどう説明するのだろう? 最も顕著なのは、最大で年間5000億ドルを超える中国との貿易赤字だ。かつてニューヨークの偉大な新聞であった同紙は、それをどれほど報道しただろうか。

 第二に、主にビジネス関連の記事でありながらニューヨーク・タイムズが報じていないのが、トランプ大統領のおかげでアメリカの法人税率が約半分に削減されたことだ。つまり、商品をアメリカに輸出し、販売する企業や会社にとっては、米国でビジネスを行うと、より多くの利益が上がることになる。将来の関税のいかんに関わらず、トランプ大統領はすでにアメリカを、世界のビジネスと自由貿易にとって非常に魅力的な市場に作り上げているのである。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

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「トランプ大統領」に関する記事

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

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