銃乱射事件生存者たちの「マトモ」な訴えが、マトモに伝わらない国

銃乱射事件生存者たちの「マトモ」な訴えが、マトモに伝わらない国

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住で、トランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は先月、フロリダの高校で起きた銃乱射事件後の米国内のリアクションについて、著者がリベラル派としての見解を述べる。


生存生徒による「真っ当なスピーチ」さえ攻撃する右派

 先月、アメリカの学校でまた銃乱射事件が起きた。精神を疾患していると目されていた若者が、合法的に購入した半自動小銃で17人を殺害した。彼が使用した銃は、できる限り効率的に素早く大勢の人々を殺害できることを念頭に置いて設計されたものだった。

 我々アメリカ人は以前にも、これに似た事件を何度も見てきた。なぜ、このような痛ましい事件を繰り返し見なければならないのだろうか?

  銃乱射事件の直後、上記と同じ問い掛けが、エマ・ゴンザレスさんら生存した生徒から米社会へ向けて投げかけられた。 エマさんは抗議集会で、アメリカ国民に対して、この問題を今度こそ真剣に考え、何とかしなければならない時が来たと熱のこもった訴えをして、主要な米報道機関のほとんどすべてが彼女の発言を取り上げた。

 毎回このような銃撃事件が起きたときに政治家たちから聞かれるお決まりのコメント、「事件を防ぐために、できることは何もなかった」、「厳しい銃規制が問題解決にはならない」、「解決策はもっと銃を増やすことで減らすことではない。なぜなら善人が銃を持てば、悪人の銃を止めることができる」などに対して、 エマさんはBS(=bullshit/ふざけんな!)と大声で叫んだ。彼女の演説は非常に的を得ていた。しかし、その的を得た演説は、瞬く間に極右派から攻撃された。

右派報道機関と呼ばれるものは報道機関ではない

 アメリカの政治は金によって動かされている。当然のことではあるが、政治家は当選するために票が必要だ。しかし、十分な資金がなければ、有権者にメッセージを伝えるための選挙運動ができず、よって票を得ることは難しい。そこで、裕福な人々や企業からの多額の献金を受け入れることになるが、 人々や企業が献金をするのは、その候補者が当選すれば彼らの事業が利益を得られるからだ。これは共和党か民主党のどちらかの問題ではない。公職に就くためには、とんでもない額の金が必要なので、あらゆる派閥の候補者は正当化できるすべての金を受け入れる。

 過去30年以上、アメリカの右派は企業の利害によって動かされている。献金企業は自身の利益に対して反対の有権者の票を操作するためならば、巧みなことをなんでもする。たとえば報道機関とタレントを買収し、アメリカ社会に恐怖や不安を与え、不和を起こさせるようなメッセージを絶え間なく浴びせたり、アメリカの抱えるすべての問題は、民主党とリベラル派によって作られていると人々が信じるように操作するのだ。

 知性のかけらを持つ人々は、FOXニュースが共和党の宣伝武器であり、それが実際のニュースですらないことを知っている。しかし、何百万人ものアメリカ人にとってFOXニュースだけが信頼できる情報源であり、それ以外の報道機関は噓をついていると本気で信じている。FOXニュースを信頼する人々は、民主党とリベラル派は自分たちの子供を中絶したいとか、自分の子供を同性愛者にしたいとか、自分の仕事を不法移民にあげたいと思っていると信じるように洗脳されているだけでなく、そういう人々が共和党に投票するように右派報道機関がでっちあげた多くのとんでもない主張を信じているのが実情だ。

 エマ・ゴンザレスさんは学校銃乱射事件の直後、とても説得力のある演説をした。その彼女を極右派報道機関は激しく攻撃した。それは道徳的に弁解の余地がない行動だ。それにもかかわらず、大勢のアメリカ人がこの極右派のBSメッセージを受け取り、ソーシャルメディアで広範囲に拡散した。そのひどいBSメッセージの中には、ドナルド・トランプの政策に対して反対の意見を表した、オリンピックに出場するアメリカ人選手たちが負ければいいと願う人までいた。

 右派や極右派のメッセージを拡散する人たちは自身を「愛国者」と名乗ったが、彼らはアメリカの理想と本当の愛国心にとっての恥だ。そんな彼らを心底バカにしたくなるが、彼らは洗練された強大な力によって操られ、その攻撃に耐える知的能力を持っていないのだから、気の毒だと思うべきなのかもしれない。

 政治献金をしている企業たちが政治家を使って国民を対立させ、自分の敵こそが国家の問題であると思わせることによって、自分たちが人口を意図的に支配する。これはアメリカが抱えている非常に大きな問題であり、この観点から見れば、なぜアメリカが銃規制をせず、国民にもっと銃を所持してほしいと推進するのかが理解できる。その上、そういうことを推進する輩は、アメリカの学校に通う子供たちが、定期的(もしくは予想通り)に虐殺されたとしても、何もせずに傍観することをいとわない人たちだ。それが、なにより大きな問題なのである。

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この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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