【Red vs. Blue】寿司「Nakazawa」の中澤氏、トランプホテル出店の「何が悪い?」に波紋

【Red vs. Blue】寿司「Nakazawa」の中澤氏、トランプホテル出店の「何が悪い?」に波紋

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々の見解を披露する。今回はニューヨークで「最も予約が取れないレストラン」に名前が挙がる高級寿司店の日本人オーナーシェフの発言について。


 アメリカ人にとって最も有名な寿司職人といえば、 ドキュメンタリー映画『二郎は鮨の夢を見る』の主役、ミシュラン3つ星の小野二郎氏だろう。同映画に小野氏の弟子として出演していた中澤大祐氏は、映画がきっかけでアメリカのレストラン事業家から声が掛かり、ニューヨークで高級すし店『Sushi Nakazawa』をオープン。2013年には『ニューヨーク・タイムズ』紙でベスト・レストランに選ばれ、「ニューヨークで最も予約が取れない店」と言われている。
 その有名すし店が、このほどトランプ大統領が所有するワシントンD.C.のトランプホテルに新店をオープンする。トランプ氏が大統領選中にメキシコ移民に対する差別的な発言をしたことから、当時入居していた高級メキシコ料理店がビルから撤退した経緯もあり、以来、同大統領所有ホテルの入居店舗は政治的な影響がついて回るようになった。しかし中澤氏は、「自分は移民だ。(アメリカの)選挙権もない。自分の夢を追うのに、あれこれ言われたくないし、もしこの国がそんなに嫌なら、他の国に行って移民になればいい」と発言したことで、トランプ反対派がざわついている。この中澤氏の発言を保守派とリベラル派はどう受け取ったか?

出典『ワシントンポスト』
中澤大佑、トランプ・ホテルに寿司レストランを開店。その何が悪い?
Daisuke Nakazawa is opening a sushi restaurant in a Trump hotel. And he’s not apologizing

【Red:保守派】どうして、こんなことが話題になるんだ?

How is this even a thing?

 ドナルド・トランプは、合法的かつ憲法に則って選ばれたアメリカの大統領だが、アメリカの左派にとっては、トランプに関連するものは何でもおぞましく、不名誉で、胸が悪くなるようだ。そのためトランプ大統領と一緒に写真に写ったり、大統領のために働いたり、大統領を認めたりする者は、ばかばかしいほど論争の的になる。

 それにしても、どうしてこんなことが新聞の話題になるのだろうか。中澤氏が「(嫌なら)どこかよその国で、移民になったらいい」と言っているのは、まったく正しい。アメリカは今でも、成功を収めるためのチャンスの土地であり、このNYの有名なすしシェフは、ただ彼の情熱を追っているだけなのだ。アメリカでは、自分のなすべきことをうまくやるかどうかが重要であり、その人が移民であろうと、市民であろうと関係ない。トランプホテルに中澤氏がレストランを開店することを、そもそもなぜ彼が「謝らねばならない」のだ?(注:ワシントンポスト紙の見出し。He’s not apologizing)

 トランプは、ナチス・ドイツの首相でもなければ、北朝鮮の独裁者でもない、米国の大統領だ。率直に言って、ドナルド・トランプの事業のために働くのは誇りにすらしてよいだろう。トランプは就任後15カ月に満たないうちに、米国経済にエネルギーを与えている(2018年度の第一四半期に5%の経済成長が見込まれると予想される)。

 同紙が中澤に、国民の半分が知りたがっている質問、「あなたは、トランプホテルが最高のグルメ・スポットになる手助けをするんですか?」を投げかけた。すると、中澤は笑って、こう言ったという(実に的を得た発言だ)。

 「私は移民だよ。投票権さえもない。それなのに他人が私の生き方を、あれこれ指図するのか? 自分の情熱にどう従い、どうやって夢を実現させたらいいかを? それは、ごめんだね。オバマホテルでなくて悪いけど、もし、この国やトランプに対してそんなに腹を立てているのなら、この国を出たらいい。よその国で、自分が移民になってみたらいいさ」 

【Blue:リベラル派】顧客がいるところが我が家だ

Home Is Where the Customers Are

 中澤氏は、どこであろうと彼が望むところで働く権利がある。彼が正しい場所を選んだかどうかは、市場が判断するだろう。私自身はこれからも“決して”トランプの所有地に足を踏み入れることはないだろうが、だからと言って中澤氏の失敗を望んでいるわけではない。

 トランプは、移民、外国人労働者のビザ、国連に対抗して相当に強い発言をしている。多くの人が忘れかけているかもしれないが、トランプはアメリカの南の国境沿いに壁を立てたがっている。しかし、もしもトランプが大統領に就任する以前に米国に移民してきた人が、トランプホテルの中にレストランをオープンして運営に必要な顧客を確保できるのであれば、それはそれでいいのではないだろうか。レストランは国ではないし、政治組織でもない。レストランはビジネスであり、レストランビジネスは時として残酷でもある。

 我々リベラル派はトランプを嫌っているかもしれない。しかし、トランプを嫌う一方で、人々が成功し、繁栄し、アメリカンドリームを実現することも望んでいる。我々は、トランプのネガティブな話題を望む以上に、中澤の成功を聞くことを望むのだ。歴史をきちんと記憶している者は、移民がアメリカの物語に豊かさを加えることを望んでいる。そもそも、この国はそうして始まったのだから。トランプのファンたちが、トランプの所有地を訪れて、他国から来てアメリカで成功した中澤氏のような人々により多く出会う方が、いいことかもしれない。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

【Red vs Blue】NYタイムス紙の詩織さん報道 レイプ被害者に対する日米の視点の違い

https://bizseeds.net/articles/622

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は米メディアが取り上げた日本の「詩織さんレイプ被害事件」について。通常は意見が対立するレッドとブルーだが……?!

「食」に関する記事

この記事の寄稿者

「市民の声」を分かりやすくお届けする公式企画。分断が進むアメリカで、対立する思想を持つ市民はひとつのニュースをどう読むのか?
 対立する思想を持つ市民たちによって深まるアメリカの「分断」。アメリカには二大政党の共和党(保守)と民主党(リベラル)があるが、それぞれの政党支持者は、どれだけ考え方が異なるのだろう?人口で見ると保守派、リベラル派の比率は約半々で、両者のものの考え方は、水と油ほど異なると言われている。日本からはあまり分からない「普通」のアメリカ人たちの思想の傾向。
 この連載では保守派共和党の公式カラーである赤、リベラル派民主党の青をタイトルに、アメリカ国内で報道された「ひとつの記事」に対して、保守派(赤)とリベラル派(青)のアメリカ人がそれぞれのどんな見解を示すかを対比するBizseedsイチオシの連載・特別企画!

関連する投稿


「MAGA」帽子とBTSのTシャツで語る「政治ファッション協奏曲」

「MAGA」帽子とBTSのTシャツで語る「政治ファッション協奏曲」

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などを、ジョーンズ千穂がアーカンソー州より紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は、全米で売られている「MAGA帽子」やメッセージTシャツについて。背景を知らずに購入すると、トンデモナイことに巻き込まれるかも知れない。


アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

アメリカの有権者、中間選挙でトランプと共和党による一党政権を拒否

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。中間選挙では民主党が躍進して下院を奪回したが、上院が共和党支配のままでは民主党の出来ることは限られている。確実に一歩前進したリベラル派だが、その先に続く道は険しそうだ。


【11/12追記あり】大統領よりも重要!?「最高判事」でアメリカが変わる

【11/12追記あり】大統領よりも重要!?「最高判事」でアメリカが変わる

保守とリベラル派の対立が激化し「分断された」と言われるアメリカだが、実際には中道派も多く存在する。二つの異なる思想の間で様々な思いを抱く中道派の視点で、グッドイヤー・ジュンコが語る。中間選挙が終わるや否や、アメリカ中が危惧する問題が勃発。大統領より時に重要で、国を揺るがしかねない最高判事問題とは?


中間選挙の結果がトランプ再選にとって好都合なワケ

中間選挙の結果がトランプ再選にとって好都合なワケ

テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守派の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。先日の米中間選挙で、トランプ率いる共和党は下院の過半数を民主党に取り返されてしまったが、保守派たちは「この方がトランプ再選に向けて好都合だ」と思っているのだ。


米中間選挙:今回は選挙に行く! 勢いづくアメリカの若者たち

米中間選挙:今回は選挙に行く! 勢いづくアメリカの若者たち

米中間選挙まで、あとわずか。 この選挙は米上院下院議員を選出するもので、この結果により議会の与党と野党が入れ替わる可能性があるが、4年に一度の大統領選に比べると中間選挙の得票率は低いのが通常だ。しかし、今回の中間選挙には、普段は投票しない大勢の若者たちが「投票しよう!」と立ち上がる動きが広がっていることが注目されている。






最新の投稿


成功への選択「脱、暴飲暴食」2018年12月14日~12月20日

成功への選択「脱、暴飲暴食」2018年12月14日~12月20日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


共和党の民意無視がアメリカを蝕む

共和党の民意無視がアメリカを蝕む

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、先の中間選挙で共和党州から民主党州に変わった州の現知事が、退任前に新しく就任する知事の権力を制限する法律を制定しようとする動きについて、著者の憤慨をまとめた。


アメリカで再注目されている「サードプレイス」の重要性

アメリカで再注目されている「サードプレイス」の重要性

日常生活の中で定期的に通えて、第三者と会話を交わせる場所「サードプレイス」が、個人や地域の活力を生み出す上で重要であると社会学者のレイ・オールデンバーグ氏が提唱したのは、今から約20年前のことだ。ネット社会が確立した今、アメリカでは再び、自宅でも職場でもない第三の場所、「サードプレイス」の重要性が注目されている。


マリファナ入り食品市場が広がるアメリカ

マリファナ入り食品市場が広がるアメリカ

マリファナ合法州が一段と増えたアメリカでは、葉に火をつけて吸引するだけでなく、成分を飲み物に混ぜたり、スイーツや料理に加えたりと、様々な嗜好品が誕生している。しかも、この市場は来年以降、さらに広がる見込みだという。


アメリカの若者のエクササイズ事情:運動というライフスタイルのかたち

アメリカの若者のエクササイズ事情:運動というライフスタイルのかたち

ニューヨークにある名門コロンビア大学バーナードカレッジの学生、光田有希が、アメリカの大学生たちに人気のアプリやサービス、学生たちのトレンドなどの情報をお届けする。今回は、アメリカの若者たちのエクササイズのトレンドについてお届けする。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング