アマゾンに勝負!  生き残りをかける小売食品業界を救う新事業

アマゾンに勝負!  生き残りをかける小売食品業界を救う新事業

アマゾン社をはじめ、多くの企業がオンデマンド食料品配達を急ピッチで進める中、小規模な食料品小売業はどうすれば生き残れるのか? ロボットが増えたら人間の仕事がなくなるかも知れないと心配する人々とは裏腹に、「優秀なロボットが増えれば人間も小売業も生き残れる」と謳うベンチャー企業が提案する解決策とは?


店舗裏のスペースを活用する小型物流センター

 調査会社のニールセンによると、2024年までにアメリカの消費者の70%がネットスーパー(オンデマンド物販)を利用するようになるという。そうなれば1,000億ドル(約10.6兆円)規模の市場になると予想され、インターネットでのオンデマンド対応をしていない中小食料品小売業は、存続が危ぶまれる可能性が否めなくなる。

 しかし、世界中のどの企業でもアマゾン・ドットコム規模のオンデマンド対応ができるわけはなく、システム移行への予算にも限りがある。そこで注目されているのが、オンライン食品店の発送や配達をスピードアップするAIおよびロボット技術を開発しているイスラエルのベンチャー企業、コモンセンス・ロボティクス社(Commonsense Robotics)が開発中の「ネットスーパーを運営する小売業者に向けたオンデマンド配送を実現するB2Bソリューション」だ。

 アマゾンを含め、ユーザーからオーダーが入った商品を管理し、仕分けや梱包をするのは従来、郊外の敷地に建設されたフルフィルメント・センターと呼ばれる大規模な建物で行われている。しかし、コモンセンス・ロボティックス社は都会の街中にある食料品店の便利な立地に注目。狭くても都市部の遊休不動産をフルフィルメント・センターとして活用すれば、小型ロボットと人間が協力して効率的に業務を遂行することでコストを抑えつつ、ユーザーの発注から1時間程度で食料品などの商品を配達できるとし、すでにイスラエルで試験的に業務をはじめている。

6年後には7割の人が食品をオンラインで購入する

 コモンセンス・ロボティクス社が提案するソリューションは、店舗裏に隣接する物置や倉庫もしくは地下駐車場など、合計でもテニスコート2面ほどの広さのスペースに、自動運転の小型ロボットとソフトウエア、ムーバブルなたくさんの四角い箱が協働する「小型の物流センター」を持つことにより、現在のアマゾンと同様、「店に行って買い物する消費者」と「オンライン注文をする消費者」の双方に対応できるハイブリッド型を目指せるというものだ。

 同社のこの開発は注目されており、先日も米カリフォルニアにあるプレイグランド・グローバル社などから2,000万ドルの資金を調達し、総調達額が2,600万ドルに達したばかり。同社CEOのエルラム・ゴレン氏は、昨年アマゾンが全米チェーンの高級スーパーマーケット「ホールフーズ」を137億ドル(当時約1兆5200億円)で買収したことについて、「これにより食品販売業界は一転した。アメリカ国内にある、アマゾン以外のすべての小売食料品店は200億ドルの損失を被った」とコメントしている。アマゾンのような巨大企業を相手にこのまま何もしなければ、中小規模の食料品小売業は存続が難しいと予想されるが、小売業には「立地の良いところに店舗がある」という強みがある。そのため同氏は、「所有する不動産の一部を使用して小型ロボットとの協働システム・ソリューションを導入すれば、莫大な予算をかけずともオンデマンド発送が実現可能となり、さらなる売り上げも期待できる」と話している。

 アメリカの食品業界関係者たちは、アマゾンはコモンセンス・ロボティックスのアイデア同様、近い将来、すでに全米展開しているホールフーズ・スーパーマーケットをアマゾンの小型流通センターとして配送拠点にするつもりではないかと見ている。アマゾンはこの分野ではすでに6年前に「Kiva Robotics」を7億7500万ドル(当時約827奥円)で買収して類似の仕組みを準備してきただけでなく、先月プライム会員がホールフーズの食品を「発注から2時間以内で受け取れるサービス」を米国4都市で開始すると発表したばかり。これまでのビジネスモデルが変わることが必須の食品流通において、今後の開発合戦から目が離せない。

参考記事
These Robots Could Help Grocery Chains Fight Amazon

「小売業界」に関する記事

この記事の寄稿者

関連する投稿


えっ、そこ? アマゾン第2本社、NY市とワシントンDC近郊に決定

えっ、そこ? アマゾン第2本社、NY市とワシントンDC近郊に決定

米アマゾン・ドットコム社の「第2本社」が、ニューヨーク市とワシントンDC近郊アーリントンの二拠点となることが発表された。昨年開始された「アマゾン誘致合戦」の結果は、アメリカに新しい大都市が誕生することを期待していた多くの企業や地域関係者を落胆させたが、同社はこの決定により、さらに成長の加速度を増しそうだ。


なぜ、アマゾンは毎日5,000本ものバナナを配り続けるのか?

なぜ、アマゾンは毎日5,000本ものバナナを配り続けるのか?

米アマゾン・ドットコム社の本社があるシアトルの街中で、無料のバナナ・スタンドを開始したのは2015年12月。昨年1月には配布100万本を達成し、来月末でスタンド開始から早3年が経とうとしている。同社は今後もバナナの配布を続ける予定だというが、なぜバナナなのだろう?


アマゾンCEOベゾス氏、20億ドルの慈善ファンドを立ち上げ

アマゾンCEOベゾス氏、20億ドルの慈善ファンドを立ち上げ

米アマゾンドットコムの創業者でCEOのジェフ・ベゾス氏が14日、20億ドル(約2,240億円)の慈善ファンド「Bezos Day One Fund」を立ち上げたことを公式ツイッターで発表した。このファンドは、ホームレス支援と幼児教育にフォーカスするもので、今年3月のForbes誌の長者番付の1位になったベゾス氏がこれまで行った寄付の中で最大のものとなる。


グウィネス・パルトロー率いるeコマース「Goop」、成功の秘訣

グウィネス・パルトロー率いるeコマース「Goop」、成功の秘訣

米People誌の選ぶ「世界で最も美しい人」に輝いたこともある、現役ハリウッド女優のグヴィネス ・パルトロウ。その彼女が創設し、CEOをつとめるeコマース「Goop」が、アメリカで絶大な人気を博し、急速にビジネスを拡大している。グウィネスのようなセレブなライフスタイルを新しい形で提案する「Goop」とは?


アプリ操作で簡単! ロボット・バーテンダーで本格的なカクテルを

アプリ操作で簡単! ロボット・バーテンダーで本格的なカクテルを

掃除ロボットやハンバーガーを作るロボットなど、次々と新しいマシーンが登場する中、カクテルを作ってくれるロボットが登場した。モバイル・アプリと連動して動くロボット・バーテンダーのキャッチコピーは、「あなたのパーソナル・バーテンダー」だ。自宅にロボットがいたら、飲み過ぎてしまいそう?!






最新の投稿


ロボットがバリスタ?! 話題の「Cafe X」

ロボットがバリスタ?! 話題の「Cafe X」

ベンチャー・テック企業がひしめく大都市、サンフランシスコ。一大観光地でもある同市のダウンタウンに今年、「ロボットがバリスタ」という無人コーヒー・バーが誕生し、話題になっている。洗練されたデザインのカプセルの中で、エスプレッソやコールド・ブリュー・コーヒーをロボット・バリスタが提供する「Cafe X」を紹介しよう。


来年は「カツサンド」がアメリカのトレンドに?

来年は「カツサンド」がアメリカのトレンドに?

アメリカでは年末が近づくと発表される、来年の「レストラン・メニューのトレンド」予想。今年の食トレンドは、「サステーナブルなシーフード」、「手作り調味料」、メルロー・カットなど牛ステーキの「新カット」などだったが、来年は日本が誇るB級グルメ「カツサンド」が、アメリカのレストランにおけるトレンドになるらしい。


成功への選択「脱、暴飲暴食」2018年12月14日~12月20日

成功への選択「脱、暴飲暴食」2018年12月14日~12月20日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


共和党の民意無視がアメリカを蝕む

共和党の民意無視がアメリカを蝕む

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は、先の中間選挙で共和党州から民主党州に変わった州の現知事が、退任前に新しく就任する知事の権力を制限する法律を制定しようとする動きについて、著者の憤慨をまとめた。


アメリカで再注目されている「サードプレイス」の重要性

アメリカで再注目されている「サードプレイス」の重要性

日常生活の中で定期的に通えて、第三者と会話を交わせる場所「サードプレイス」が、個人や地域の活力を生み出す上で重要であると社会学者のレイ・オールデンバーグ氏が提唱したのは、今から約20年前のことだ。ネット社会が確立した今、アメリカでは再び、自宅でも職場でもない第三の場所、「サードプレイス」の重要性が注目されている。


アクセスランキング


>>総合人気ランキング