【Red vs Blue】トランプ大統領「教師が武器を持てば犯罪の抑止力になる」と発言

【Red vs Blue】トランプ大統領「教師が武器を持てば犯罪の抑止力になる」と発言

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々の見解を披露する。今回は高校銃乱射事件を受けて、トランプ大統領が「教師が武器を持てば銃犯罪の抑止力になる」発言したことについて。


 先月、米フロリダ州の高校で17人が死亡した銃乱射事件の後、トランプ大統領は「教師たちが銃を持つこと」をTwitterで提案した。その後、ホワイトハウスで行われた会議において、同大統領は「教師が武器を持てば、犯罪の大きな抑止力になる」と発言。さらに「全米にいる教師の10〜40%が条件に合うはず。訓練を受けて銃を持つ教師にはボーナスを払おう」と提案した。

 同日開催されたホワイトハウスの会見で、報道陣が「全米の教師の40%に例えば1000ドルのボーナスを出したら10億ドルだが?」と質問すると、副報道官は「それが高すぎると思うのか?」と回答し、波紋を呼んだ。アメリカ国内の「学校の安全」を確保するための解決策は「教師たちが訓練を受けて銃を携帯すること」ではないだろう?」とする声と、「武装には武装を」という声で論争がおきている。リベラル派と保守派の考えはいかに。

出典『The Guardian』
White House indicates it could find funds to train and arm 1 million teachers

【Blue:リベラル派】本当の争点をごまかす策を講じているだけ

Smoke and Mirrors

 パークランド高校での銃乱射殺害事件の後、フロリダ州議会がその週に論議した内容は「学校における銃の危険性」や「銃の購入や所有が合法である現在の州法」についてではなく、「学校におけるポルノの危険性」についてだった(同州は全米ライフル協会を敵にまわしたくない)。そして驚くことに連邦政府もその週、「銃規制よりも、銀行の規制緩和の方が重要だ」と判断した。アメリカでは「銃規制をするべき」だという左派の意見を、右派はいつだってあざ笑うのだ。しかし今回の悲惨な事件を受けて、珍しく右派が解決策を提示した! 右派による学校における銃問題に対する解決策は……「もっと学校に銃を!」だと言う。

 こんなことは狂っていると考える人たちがいる一方、これこそがアメリカの自由を定義するものだと考えている人たちがいる。アメリカ人の80%以上が銃規制の強化を支持しているが、反対派は、「いかなる新しい規制も受け入れない」という姿勢だ。反対派は「ひとつ新しい規制を受け入れたら、次々に規制ができてしまう」可能性を恐れ、できる限りの攻撃を企てる。そのためアメリカ政府も銃の権利擁護者を怒らせることを恐れていることは明確だ。銃について何か言えば、票を失うからだ。

 銃を購入する際にもっと審査を厳しくすることを加えるのではなく、教師を武装させることを選択するのは、「子供が学校で射撃されない」という権利よりも、軍事兵器のような銃にアクセスできる方が重要だという選択をしていることになる。

 アメリカでは銃の所有を「特権」とは言わず、「アメリカの権利」だと言うが、ここには明確な違いがある。銃を所有する前に、その人が安全に銃を扱えるのかを確かめるべきなのに、どうもそうした流れにはならない。購入させてしまった後、しかも事件が起きた後に「この人物には銃を持たせるべきではなかった」などと新聞の見出しが踊るというのは明らかに間違っている。銃の購入は車の免許を取るよりも難しいべきだが、アメリカでは難しくないのである。

 より多くの銃を学校へ持ち込むこと(教師に銃を持たせること)は、現状の問題の回答になっていない。たとえば既に今月、ジョージア州で悩んでいた教師が教室で銃を発砲した。また、ある学校では警官が大勢の生徒がいる教室で銃の安全性を説明している最中に誤って自分自身を撃ってしまった。学校での銃撃事件の際、教師が銃を持っていたら、駆けつけた警官が混乱するのではないだろうか。事件現場に銃を持っている大人がいたときに、果たしてそれが銃を持つ資格のある教師なのか犯人なのか、とっさに判断できるだろうか? 誰もかれもが銃を持ったとき、子供や生徒達を挟んで全員が撃ち合いすることになるかもしれない。だからこそ、銃をもたせるべきではないのだ。

【Red:保守派】学校襲撃に対する本物の抑止力がやっと導入される

Finally a real deterrent to school shootings

 トランプ大統領は、アメリカの学校での銃撃を阻止するために、公立学校の一部の教師を訓練し、銃を隠して所持させることを提案している。このアイデアは特に新しいものではなく、実際にアメリカの学校(今回の銃撃が起こったフロリダ州の高校も含め)では、これまで安全対策として警備員または警察官を配備していた。

 しかし、これは教室内で潜在的な暴力から生徒を守るために、訓練を受けてから武装した教師が与える効果と同じではない。法に基づく社会は、市民が行儀よく振る舞い、犯罪を犯さないことに深い信頼をおいている。しかし、今回の学校銃撃事件のように騒乱や理不尽な暴力行為を犯した場合、警察官や軍隊、または特別治安部隊だけではカバーできない。なぜなら発砲が始まってからこうした機関に通報したのでは遅いからだ。教育機関がこうした悲劇的な事態が起こらないように銃を含めた武器の使用に備えるのは、理にかなっていると思う。

 悲しいことに、今日アメリカ人は選択に迫られている。教師に武装させて、頭のおかしい者が子供たちでいっぱいの校庭で銃撃をすることを抑止させるか、あるいは悲劇が起こるのに任せて受け入れるのか。銃所持が問題だと訴えてもアメリカでは解決にはならないし、社会から銃器を取り除いても暴力的な攻撃を防ぐことはできない。

 昨今のアメリカは、利己的な人間が増えてしまった。それを生んだ原因は、少なからずハリウッドやニュースメディア、学術界などが市民に対し、「自分の中の正義以外は認めないこと」というような、無責任なメッセージを植えつけてしまったことに起因すると言ってよい。自分の権利だけを主張するがゆえ、他人に対する基本的な敬意が払えない人や、自分のことだけを気遣い、自分の感情や個人的な快適さ、喜びにしか関心を持てない人は、社会が自分を守ってくれるということを信じ切っているために、自らが立ち上がり、社会のためには何かしようとは出来ないのだ。

 私はアメリカが礼儀正しく尊敬しあえる社会に蘇るまで、こうした恐ろしい悲劇的な銃撃事件が続くのではないかと恐れている。

記事トピックスは、過去のメジャーな事件やニュースも含みます。

寄稿者

ジム・スミス(Jim Smith)農場経営者

 1965年生まれ。アラバマの伝統的な保守派の両親のもとで生まれ育った影響から、自身も根っからの保守支持に。高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊。特殊部隊に所属し8年軍に従事するも、怪我が原因で除隊。その後テキサス州オースティンの大学で農経営学を学び、現在は同州アマリロ近郊で牧畜を中心とする多角的な農場を営んでいる。地元の消防団に所属し、ボランティアの消防隊員としても活動するなど、社会奉仕活動多数。妻と子供3人の家族5人暮らし。

ポール・クラーク(Paul Clark)データ分析コンサルタント

 1972年、オレゴン州のリベラルな街に生まれ、両親も親戚も学友も周囲は皆リベラルという環境で育つ。カリフォルニアのベイエリアにある大学へ進学し、英文学とコンピューターサイエンスを専攻。卒業後はベイエリアの複数の企業に勤務し、各種のデータ分析業務に従事。現在は家族と共にオレゴン州に在住。趣味はサッカーとクラフト・ビール造り。

【Red vs Blue】アメリカから見る「日本の少子化危機と日常生活への影響」

https://bizseeds.net/articles/626

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々見解を披露する。今回は米ビジネス・インサイダーの記事、「日本の少子化の危機」を読んで保守派とリベラル派がどう感じたかを問うた。

「銃乱射事件」に関する記事

この記事の寄稿者

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