シリコンバレーの成功者に聞く。Marvell Technology Group創設メンバー ガニ・ユスフ氏 前編

シリコンバレーの成功者に聞く。Marvell Technology Group創設メンバー ガニ・ユスフ氏 前編

IT業界の世界的聖地とも言えるカリフォルニア州のシリコンバレー。この地に在住して10年、元NFLチアリーダー齋藤佳子がシリコンバレーの見逃せない情報や、地元に飛び交う噂話などをお届け。今回はMarvell Technology社の創業メンバーのひとり、ガニ・ユスフ氏に独占インタビュー。ビジネスを成功させる秘訣を聞いた。


スタートアップ事業に参加した経緯

 マーベル社(Marvell Technology、以下マーベル)は、工場を持たない(ファブレス)半導体メーカーとして、1995年にカリフォルニア州立バークレー校(UCバークレー)の卒業生3名によって研究開発が盛んに行われているシリコンバレーの中心地で創業された。3名の創業者を含む、たった7名の創業者チームで立ち上げた会社だが、2012年には世界中に7,500名以上の社員を抱えるまでに成長し、シリコンバレーで大成功を収めたスタートアップ企業のひとつとして知られている。

 同社の創業チームのひとりであるインドネシア人のガニ・ユスフ氏から、アメリカにてビジネスで成功するための要素や、ワークライフ・バランスなどについて話を聞いた。

――― アメリカに来たきっかけは?

「1982年にインドネシアの高校を卒業後、得意だった英語を活かした方がよいと思い、アメリカに留学することに決めました。それぞれ違う大学でしたが、私を含めた高校同窓生20人がアメリカに留学したので、とても心強かったです」

――― 大学では何を専攻したのか?

「私は何かを描いたり、作ったりすることが好きなので、入学したカリフォルニア州立バークレー校では建築を専攻するつもりでした。けれども、1980年代初頭に半導体産業が始まり、電子工学を学ぶ方が将来性があると思って、電子工学とコンピューターサイエンス(EECS/Electrical Engineering and Computer Science)を専攻しました。勉強を始めたらEECSを学ぶことが楽しくなり、大学もとても気に入たので学士取得後も大学に残り、修士・博士課程を取得しました」

――― UCバークレーはスタンフォード大学と並び、大変優秀な大学。特にバークレー出身でその博士号を持つエンジニアは、シリコンバレーでは一目置かれる存在ですが、卒業後の進路は?

「ハードウェア・エンジニアとしてヒューレット・パッカード(HP)に就職をしました。 IT業界でHPは、“HP Way”と言う素晴らしい社風があることで知られていました。株主に利益をもたらすだけではなく、消費者、社員、そして社会に貢献する企業です。HPは社員を家族のように大切に扱い、社員同士も助け合い、どの社員も会社のために働くことを誇りに思っていました。また、よく働くだけではなく、よく遊びました。HPで働いていた時に経験したことが、その後の私の働き方の基礎となっています」

――― そのような素晴らしい企業であるにも関わらず、4年後にHPを退職し、大学の同級生達とマーベルの創業チームメンバーに加入したのはなぜですか?

「大企業で働くことも悪くないのですが、そのままでは大きな成功を手に入れることはできない、と感じていました。HPで昇進できる可能性も見えていましたが、あまりに大きな会社なので、頑張っても歯車のひとつでしかないだろうと。1994年の終わり頃、いくつかのスタートアップ企業が成功を収めていることをちらほら聞くようになりました。今思うと、企業家としての情熱が、“挑戦しよう”という気持ちを強く後押ししたように思います。私にとって、その挑戦はマーベルに加わることでした。もちろん、親しい大学の同窓生3人が創業者であることが大きな決め手でもありました。私たち全員が“大きな見返り(成功)を得るためにリスクを取る覚悟をしよう”と意見が一致し、私もマーベル創業チームに加わることになったのです。

シリコンバレーで成功を収めるために努力したこと

―――  奥様はあなたの決断に対して何と?

「妻は“あなたの心に従うべきよ”と私の決断を快く理解してくれました。また、彼女は、私の仕事の調子が良い時も悪い時も一喜一憂せず支えてくれたので、プレッシャーを感じずに仕事ができたのはありがたかったです」

――― マーベルを立ち上げた直後は多忙な生活だったのでは?

「とにかく働き詰めでした。家を朝早く出て、夜遅く帰って来て、休日もほとんどありませんでした。多忙を極める、これは起業する人たちの宿命です。ちょうど、その時に生まれた二人目の子供が起きている姿を、生まれてから3カ月間は見られませんでした。業績が順調に伸びてから、やっと夫そして父親としての役割や義務をどう果たすべきかを学びました」

――― 仕事と家庭のバランスをどのように取っていたのですか?

「とにかく出張が多かったです。私が担当していた研究開発チームは、アメリカ国内だけではなく、スペイン、イタリア、ドイツなど海外にもあり、海外出張もたくさんありました。どこへ出張に行っても、早朝便や夜行便の機内で睡眠をとり、金曜日の夜か土曜日の朝には家に着くようにして、週末は家族と時間を過ごすと決めていました。ビジネスマンであっても父親であることを、どこにいても忘れたことはありません。妻と協力して子育てをし、子供たちの成長を見守り、大人になっていく姿を見るのは、私にとって大きな喜びです」

――― 奥様が大変協力的だったとはいえ、あなたもどんなに仕事が多忙でも家族の時間を大切にし、家庭を奥様ひとりに任せることはしなかったからこそ、奥様も頑張られたのでしょうね。ビジネスマン、そして家庭人として多忙な日々を送る中、ストレスはどのように解消を?

「私のストレス解消法はエクササイズ(運動)をすることです。エクササイズの時間を確保するために、秘書にはその時間にはミーティングやアポイントを入れないようにお願いしました。仕事のちょっとした合間でも、体を動かすと心身ともに爽快になり、仕事の効率もぐんと良くなります」

――― 多忙だからこそ、エクササイズをして心身をリフレッシュし、体調を整えて仕事の効率を上げていく。まさにシリコンバレーらしいバランスの取り方ですね。

このインタビューの続きはこちら
「アメリカのビジネスで成功する秘訣とは」
「マーベル退職後、次なるビジネスは?」
についてうかがいます。

プロフィール

ガニ・ユスフ
Axonne社CEO兼共同創立者

カリフォルニア州立UCバークレー校にて、電子工学とコンピューターサイエンスの学士・修士・博士号を取得。卒業後、ヒューレット・パッカード社に入社。同社とアジレントテクノロジー社ではシニア技術者やマネージメントを担当。1995年、マーベル社の創業とともにエンジニアリング・ディレクター及びストレージ製品開発責任者として加入。2000年~2014年までマーベル社のコミュニケ―ション向け製品開発と、消費者向けビジネスグループの副社長を務め、データコミュニケーション製品開発と技術戦略の責任者も兼務した。昨年10月にアップル社に買収されたPowerByProxiの理事も務めた。今年3月に新会社Axonne社を起業、CEOに就任。

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この記事の寄稿者

OLから、唯一の日本人として2004年にNFLサンフランシスコ49ersチアリーダーに合格し活動。その後、ネバダ州立大学にてピラティスライセンスを取得。2006年にエンジニアと国際結婚をし、シリコンバレーに移住。現在、アメリカではDK Body International セールス&マーケティング担当・サンフランシスコエリアのコーディネーター、日本では一般社団法人プロフェッショナルチアリーディング協会代表理事を務める。TBS「マツコの知らない世界」“チアリーディングの世界”のナビゲーターとしての出演し、日本でも話題になった。

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