銃を規制しても問題は解決しない

銃を規制しても問題は解決しない

NYやLAなどの沿岸都市部に比べると、圧倒的に知られていないアメリカ南部。その文化、習慣、宗教観などを、ジョーンズ千穂がアーカンソー州より徹底紹介するコラム『アメリカ南部のライフスタイル』。今回は アメリカの世論を二分する銃規制問題に対して、銃を所持している一般人のひとりとしての意見を述べる。


「銃狩り」では、安全な暮らしは手に入らない

 全米を騒がせている相次ぐ学校内での銃乱射事件。日本でも報道されたので、ご存知の方も多いだろう。

 アメリカでは時折、銃規制に賛成派のメディアが、銃がほとんど出回っていない日本やイギリスが「どれだけ安全か?」という記事を発信している。銃規制賛成派は、アメリカからすべての銃がなくなるまで叫び続けるだろう。

 しかし、「もともと銃を所持する習慣のない国」と、「昔から銃と共に生活し、憲法にも銃を所持する権利が述べられている国」を比べるのはナンセンスだ。以前のコラムでも、私自身も米国生活において銃が必要という考えであることを書いた。でも、そのコラムにも書いたように「自衛のために合法に所持している私の銃の出番がないことを祈るばかり……」というのが基本姿勢だ。つまり銃を所持していても、銃規制に反対する他の人達と思いは同じなのだ。

 いたずらに刀狩りならぬ“銃狩り”をしても意味はない。そんなことをしても、銃を入手したい輩は違法に他国からそれらを密輸入するだろうし、“悪い人達”は違法銃を使って犯罪を続けるだろう。日本やイギリスのような島国ですら、違法に銃が流れ込んで取引されるのに、大陸に位置するアメリカが違法輸入を完全に防げられるわけがないのは明らかだ。南部のように銃を所有する家が多い地域では、押し込み強盗をしようとすれば自分が撃たれて終わりだと思わせる抑止力もある。もしも銃規制がされたら、丸腰で普通に生活している市民は、自分や家族の身を守る手立てが何もなくなってしまう。

メディアの騒ぎにのって学生の愉快犯も続出

 先日起きたフロリダの学校内での銃乱射事件がメディアで騒がれているのを受け、非常に悩ましい問題も多発している。

 例えば高校生たちが自身のSNSで「うちの学校が次に襲われるらしい」、「○○高校が狙われているが、乱射ではなく云々…」等といった発信、つまり流行りに乗りたいと考える「愉快犯」が増えているのだ。未成年なので書き込みの動機等は明かされていないが、すでに今年に入り何人もの逮捕者が出ている。愉快犯側の学生たちは逮捕されにくいように匿名で書き込みを続けているらしく、こうした情報に対して非常に神経を尖らせている大人たちを翻弄しているという。こうした行為が「冗談でした」では済まされない状況だということを理解していないようだ。

 そもそも、銃規制がここまで話題になったのは悲惨な事件が立て続けて起きているからだ。しかし、銃乱射事件が起きた学校や、昨年ラスベガスで起きたホテルからの乱射事件は、銃の持ち込みが禁止された「gun free zone」で起きている(フロリダやラスベガスのように銃の購入や所有が合法州でも、警察官や警備員以外は、学校はもちろん、ホテルや公共施設等への持ち込みを禁止しているところが多い)。持ち込みが禁止されている場所に銃を持ち込んだ人たちが罪を犯したのである。

 犯罪者たちのせいで、なぜ、自衛として銃を保持しているだけの善良な市民が、自らの生活に不安を覚えるような強制をされなければならないのだろうか? 銃を保持することで、自宅にセキュリティー・システムを入れているのと同様な安心を感じる生活を生まれたときからずっと送ってきた人々にとっては、お腹を空かせたライオンと一緒の檻の中で生活してくださいと言われているようなものなのだ。いつ襲われるか分からない危険と隣り合わせでは、とても安心して子育ても生活もできない。

 綺麗事を言うだけでは生きていけない、生々しい現実があるアメリカ生活。まずは学生たちの愉快犯問題が収束するように願いたい。

この記事の寄稿者

関連する投稿


教室にシェルターの設置が加速する?

教室にシェルターの設置が加速する?

今年2月、17人もの犠牲者を出したフロリダ州パークランドの高校における銃乱射事件。アメリカの教育現場ではこうした悲劇を防ぐための解決策が模索されている。そんな中でも注目の対策は?


【Red vs. Blue】トランプ大統領「教師が武器を持てば犯罪の抑止力になる」と発言

【Red vs. Blue】トランプ大統領「教師が武器を持てば犯罪の抑止力になる」と発言

米二大政党、共和党と民主党。保守派共和党の公式カラーは赤、リベラル派民主党は青。アメリカの分断は、両者の意見が大きく異なるためだ。当連載ではアメリカで報道された記事に各派のアメリカ人が各々の見解を披露する。今回は高校銃乱射事件を受けて、トランプ大統領が「教師が武器を持てば銃犯罪の抑止力になる」発言したことについて。


全米ライフル協会は人命より銃製造業者の利益を重視する悪徳組織か?

全米ライフル協会は人命より銃製造業者の利益を重視する悪徳組織か?

多様なアメリカでは暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はアメリカで銃乱射事件が起きるたびに問題視される「全米ライフル協会」(NRA)について、保守派の意見を述べる。


銃乱射事件生存者たちの「マトモ」な訴えが、マトモに伝わらない国

銃乱射事件生存者たちの「マトモ」な訴えが、マトモに伝わらない国

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住で、トランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は先月、フロリダの高校で起きた銃乱射事件後の米国内のリアクションについて、著者がリベラル派としての見解を述べる。


米大手企業、全米ライフル協会会員への優待サービスなど続々と中止に

米大手企業、全米ライフル協会会員への優待サービスなど続々と中止に

フロリダの高校で起きた銃乱射事件を受けて、米大手銀行や航空会社、大手レンタカー会社などが続々と、長年の大顧客である全米ライフル協会会員への優待特典や業務提携の中止を発表し、波紋を呼んでいる。






最新の投稿


成功への選択「どちらの招待が優先?」2018年7月20日~7月26日

成功への選択「どちらの招待が優先?」2018年7月20日~7月26日

ロサンゼルスを拠点に多くのセレブリティを顧客に持つ運命鑑定家、サラ・セイヤスが送る「成功への選択」。算命学、数秘術、占星術などをベースにしたオリジナル手法を用いて、あなたが切り開くべき幸運への扉のヒントを毎週アドバイスします。さて、あなたのビジネスを成功に導くのは、どちらの選択肢でしょうか?


トランプが世界に仕掛ける無謀な経済戦争

トランプが世界に仕掛ける無謀な経済戦争

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住でトランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回はトランプの支持者が多い、オートバイのハーレーダビッドソン社が海外へ移転せざるをえない結果を作ったトランプ大統領が、同社を攻撃している矛盾について。


プリンセスへの憧れ リアル・シンデレラ・ストーリーの影響力

プリンセスへの憧れ リアル・シンデレラ・ストーリーの影響力

今年の5月にイギリス王室のヘンリー王子と結婚したアメリカ人の女優、メーガン・マークル。サセックス公爵夫人になったリアル・プリンセスは、これまで皇室に入った女性たちよりも親しみやすい雰囲気があるとファンが多い。「メーガンのようになりたい!」と思っている熱烈ファンたちのトレンドを紹介しよう。


疲れたニューヨーカーを癒す、スーパー銭湯?

疲れたニューヨーカーを癒す、スーパー銭湯?

マンハッタンを望むニュージャージー州に昨年オープンした「SoJo Spa」。このスパでは、「韓国風の高級スパをイメージしたサービス」を売りにしているが、アジア式の風呂文化をアメリカ人に広めるのに、ひと役買っているという。


未来の起業家育成は地域が応援!

未来の起業家育成は地域が応援!

アメリカ全土で、子供のための「起業家教育」プロジェクトが盛んになってきた。全米で最も大きな起業家育成イベントは、「Acton Children's Business Fair」という、地域社会を巻き込んだ子供のための「起業フェア」だ。これは、どのように運営されているのだろう?


アクセスランキング


>>総合人気ランキング