空への夢の始まり14—自家用機免許を取得

空への夢の始まり14—自家用機免許を取得

外国人には狭き門である、アメリカ一般旅客機パイロットへの道。その難関を突破し、育児をしながら現役活躍中の青木美和が、「夢の叶え方」を航空産業最新情報と共にお届けする『Sky High America』。ようやく自家用機の免許取得の国家試験を受けるまでたどり着いた。しかし、管制塔が何を言っているかがわからない?!


管制塔を避けて飛んでも試験には受からない

 初めてのソロ・フライトを無事に終えた後もトレーニングは順調に進んだ。しかし、外国人にとっての難関とされる「管制塔とのラジオでのコミュニケーション」で、躓いてしまった。

 自家用機の免許を取得する際には、 ホームベースから50マイル以上離れた空港まで単独で行って帰ってくる「クロスカントリー飛行」を規定時間、飛ぶことも条件のひとつだ。空港には管制塔がないところもあるので、英語に不安がある私は、管制塔がない空港を選んで何度も練習を重ねた。

 しかし、免許を取得する際には、管制塔のある空港へ行かなければならない。それをクリアーするために担当教官と何度も同じ空路を通い、同じ空港を訪れては管制塔とのやりとりを練習した。少しすると、たいてい同じような会話が同じような場面で交されることがわかってきた。 当時は、女性で外国人のパイロットがシアトルの上空付近を飛んでいるのは少なかったせいか、私がよく訪れた空港の管制官たちは、私のオドオドした拙い英語でのやりとりを頑張って聞き取ってくれていた。

 管制塔のある大きな空港に単独でクロスカントリー飛行に出た時は、初めてのソロ・フライトよりも緊張した。 飛びながら、私はまるで幼児が“初めてのお使い”をさせられているような緊張を感じていたことを覚えている(ありがたいことに、この日は何もなく、想定内のラジオコールで済んだ)。

管制塔からの指示が聞き取れない?!

 トレーニングも最終段階に入ると、さらに長い距離を、いくつかの空港に離着陸しながらホームへ戻るという、「ロング・クロスカントリー飛行」があった。その日はとても天気がよく、たくさんの小型機がシアトル上空を飛んでいた。何事もなくスムーズにフライトが終わりかけ、最後は頻繁に訪れている、初ソロ・クロスカントリーを行った空港でタッチ・アンド・ゴーをしてから、ホームベースに戻るだけだった。

 慣れている空港なので、いつもの調子で管制塔に呼びかけた。しかし、管制塔からは予期してなかった返答が戻ってきたのである。「今、この空港上には7機の飛行機がいて、すべてが着陸しようとしている。お前は6番目だ。そこで360度右回りに回りながら待機するように」。しかし、私はこの指示を瞬時には理解できなかったのだ。

 いつも通りの返答がくると思い込んでいたため、早口でラジオから聞こえてきた英語が全く聞き取れなかった。焦って、「もう一回、言ってください」と連呼すると、管制官が苛立った声で「右回りに360度回っていろ!」と言い、なんとかそこだけは聞き取ることができた。

 言われた通りに、右旋回を不安げに行った。飛行しながら、「もしも、私のやっていることが間違っていたらどうしよう……」と、ぶつかりそうな飛行機が周囲にいないかとキョロキョロと確認しながら待機した。2周した頃に、着陸の許可が出た。その後、無事にホームベースに帰り、教官にその出来事を話すと、ネイティブにとっては簡単な管制塔とのやり取りも、私のように英語を第二外国語とするパイロットにとっては大変危険な状態にもなりえることを、教える側としても改めて認識したらしい。その後は、様々な状況を仮定した管制塔とのやり取りを、教官と共に繰り返し練習した。

 私の場合は、飛行機の操縦には苦労しなかったものの、自家用機免許の国家試験への道のりは、英語力の壁を乗り越えることが主な課題だった。この試験では、まず筆記試験を受けて、それに合格すると試験官との口頭試験(試験官の問いかけに対して英語で説明するテスト)と実地試験がある。不安だった口頭試験は、片言の英語でも試験官に正しい答えが伝わるように、キーポイントだけを強調する回答策を用意して臨んだ。そして、無事に試験に合格することができたのである。

(次号へ続く)

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この記事の寄稿者

愛知県豊橋市出身。高校卒業後、渡米。ボストン郊外のセーラム・ステート・カレッジで英語を学び、その後、航空学科のあるワシントン州グリーン・リバー・コミュニティ・カレッジへ。同校を経てセントラル・ワシントン大学に編入し、航空学で学士号、工業エンジニアリングで修士号取得。卒業後、同大学で操縦教官に就任。7年間の教官生活の傍ら、個人用ビジネスジェット機のパイロットも経験。2007年3月に 『Women in Aviation, International』 から奨学金を受けると共に、アジア人の女性パイロットネットワーク『Women in Aviation Asia』を発足。2008年1月、ホライゾン航空入社。不景気で一時解雇となり、グアムで遊覧飛行、飛行訓練、ドクター・ジェットの操縦を務めるも、2010年10月に同社復帰。同年、航空宇宙産業技術展2010ビジネスジェットパネリストも務めた。現在はオレゴン州に拠点を移し、家庭を持ち、子育てをしながら空を飛んでいる。

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