ホームレスから年収1千万円以上の職に就く道を開くために

ホームレスから年収1千万円以上の職に就く道を開くために

サンフランシスコのダウンタウンの一角、テンダーロイン地区には多くの有名IT企業が並ぶが、ビルの前には行き場のない大勢のホームレスが佇む。この貧富の不均衡が明確な地区で二者間を近づける活動を行う団体がある。


ただ教えるだけではない「コード・テンダーロイン」

 アメリカの貧富の差は都会ほど目に付く。IT企業の聖地シリコンバレーに近い、サンフランシスコのダウンタウンの一角、テンダーロイン地区にはツイッター本社、ウーバー本社、AirBnB本社、マイクロソフト、スクエアーなど多くの有名IT企業が立ち並ぶが、その ビルの外では大勢のホームレスたちが寝泊まりをしている。暗い表情でボロボロの毛布をまとってうずくまるホームレスたちの横を、スムージーやサードウェーブ系コーヒーカップを手に、軽快な足取りでテック系企業へ出社する人たちが行き交う様子からは、テック・ブームの経済効果をすべての人が享受している訳ではないことがわかる。

 「この二者の違いは何か?」という問いに回答を見出すために、元ホームレスの男性が2015年に立ち上げた非営利団体が「コード・テンダーロイン」だ。ホームレスたちに数週間にわたって基本的なコーディング技術などを教え、就職のための面接の練習や履歴書の書き方、履歴書に必要な住所を貸すなど、社会復帰をするために具体的に必要なことを総合的に提供している。

本気で状況を変えたい人だけを受け入れる団体

 このテンダーロイン地区には、サンフランシスコ市のホームレスの約49%が暮らしている(2017年調査)。「コード・テンダーロイン」では、犯罪歴がある人も含めて、これまでに約300人を受け入れ、プログラムの卒業生約100人が就職した。インストラクターは団体スタッフだけなく、同地区にあるIT企業に現役で勤めている人たちがボランティアで教える。同団体は地域の企業に対して、「地域への社会貢献の一貫として、ホームレスたちが道を開くきっかけとなるエントリー・レベルの仕事を用意してほしい」と呼びかけ、多くの卒業生たちを受け入れてもらっているという。プログラム卒業生の中で飛び抜けて優秀だった数人は、マイクロソフトやリンクトイン社のソフトウエア・エンジニアなどとして、なんと年収1千万円以上の仕事に就いたそうだ。

 「パートナー企業の担当者に直接働きかけないと、ホームレスや犯罪歴のある人たちの就職はほとんど不可能に近い」と同団体マネージャーのウエストブロックさんが話すように、ホームレスの就職は難しいマッチングだ。しかし、同団体は教育をすることで活動を終わりにはせず、地域のパートナー企業を地道に増やし、ひとりひとりの就職を決めるまで関わる。切り捨てることでは地域の問題は解決しない。地域全体の活性化を願う同団体の姿勢に多くの注目が集まっている。

Code Tenderloin
http://www.codetenderloin.com/

(参考記事)
San Francisco's homeless are getting six-figure jobs in a gritty neighborhood that's been overrun by tech companies

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