保守派クリスチャンの鑑、ペンス副大統領

保守派クリスチャンの鑑、ペンス副大統領


 ペンス副大統領は敬虔な福音主義キリスト教徒で、妻以外の女性と夕食はとらず、妻が同伴しない場合はアルコールが出るパーティにも行かないことで知られている。これは福音主義者の伝道師、ビリー・グラムが提唱した行動規範で、ビリー・グラム・ルールと呼ばれている。
 政治家は、妻以外の女性と夕食をとっているシーンを目撃されただけで、浮気をしていると勘ぐられることさえある(2008年の大統領選の際には、”マケイン候補がロビイストの女性と二人きりで会っていた”という事実から、NYタイムズ紙が「マケインはロビイストの女性と浮気をしている!」と書き立てた)。

 保守的なキリスト教徒は「瓜畑に履を納れず、李下に冠を正さず」というルールを、“良識的なプロトコール”として尊重している。しかし、アメリカの多くのメディアはこのルールを遵守しているペンス氏を「女性差別」、「時代錯誤!」などと徹底的に糾弾した(上司と一緒に夕食や飲みに行ける男性たちの方が、一緒に行けない女性たちよりも昇進の可能性が高くなるから)。

 下院議員時代のペンス氏の女性スタッフが、「ペンス氏は仕事が終わり次第に家に帰り、業務時間内の業績でスタッフを判断してくれたので私は昇進しました。このルールが女性に不利だとは思いません」と反論したが、メディアは彼女の意見を無視して、ペンス批判を続けた。

 保守派の総本山のようなテキサス州に住むイスラム教徒の私は、こうしたアメリカのメディアの“意見”を聞くたびに、彼らのあまりの無知と偏見にあきれかえってしまう。

 もし、イスラム教徒の民主党下院議員、キース・エリソン氏が「妻以外の女性と夕食はとらず、アルコールが出るパーティには行かない」と言ったら、メディアはどんな反応を示しただろうか? エリソン氏を「女性蔑視! 時代錯誤!」と叩くどころか、「女性と二人きりで部屋にいただけでも浮気だと勘ぐられるワシントンで、スキャンダルを回避する危機管理能力がある」、「イスラム教の習慣を重んじ、主義主張を貫く信念の人物」などと彼を絶賛したに違いない。ペンス氏を非難したフェミニストたちも、「女性スタッフを夕食やお酒の席での人間関係で評価せず、仕事の能力で判断してくれる最良の上司!」と褒めちぎったことだろう。

 働く女性の真の敵は、女性と夕食をとらないペンス氏ではなく、「オフィス・アワー以外の個人的なつきあいで部下を贔屓したり、昇進を決める男性上司」ではなかろうか。しかし、8割方がリベラルと言われるアメリカのメディアは、まるでトランプ大統領とトランプ支持者を憎むことを生き甲斐に仕事をしているようなので、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という状態に陥って、物事の真相が見えなくなっているようだ。
 
 ちなみに、テキサス州にはビリー・グラム・ルールに従っている人が多いので、もし女性読者の中にテキサスに出張する予定がある方がいるならば、このルールの存在を頭の片隅に止めておいてほしい。

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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