冗談を受け止められないトランプ大統領、2年連続で夕食会を欠席

冗談を受け止められないトランプ大統領、2年連続で夕食会を欠席

圧倒的にリベラル派が多く住むカルフォルニア州。同州在住で、トランプ大統領に投票しなかったアメリカ人のひとりである著者が語る、今のアメリカのリアル。今回は4月28日に開催されるホワイトハウス記者協会主催の恒例夕食会を、トランプ大統領が再び欠席したことについて、リベラル派としての見解を述べる。


歴代大統領たちのようにユーモア溢れるスピーチができないトランプ

 アメリカの民主主義において、メディアは極めて重要な役割を果たしている。政府は国民に対して説明責任があるので、メディアが何の干渉も受けず、自由に政府を取材できることはとても大切だ。この「報道の自由」は、米国憲法修正第一項によって守られている。

 アメリカの記者にとって、首都ワシントンDCで大統領や政府の上層部を取材することは、最もやりがいのある仕事のひとつだ。主要報道各社には、大統領の職務を取材する担当記者がおり、ホワイトハウス記者協会は、大統領とそのスタッフを取材する全ての記者の代表を務める組織である。大統領とホワイトハウス担当記者というのは、論争の起きやすい関係だが、伝統的にそこには両者の敬意が払われている。民主的なプロセスの中で、お互いの役割の重要性を両者が理解しているからだ。

 およそ100年近く、ホワイトハウス記者協会は毎年ワシントンDCで夕食会を主催してきた。これは記者と政治家が、リラックスした心地よい雰囲気の中で交流できる貴重な機会だ。近年は、この夕食会に芸能人やスポーツ選手が招かれ、テレビで放送されるようにもなった。この夕食会では記者たちに賞や奨学金が与えられたり、謝辞を述べたりするが、国民が最も楽しみにするのは、その喜劇的な要素だ。通常、大統領が冗談を交えたユーモアたっぷりの短いスピーチをする。そして大スター(大抵は有名なコメディアン)が、大統領や政権、そしてメディアをこき下ろすスピーチをするが、このときの冗談は鋭くて辛辣だ。

ユーモアのセンスは紳士の証であって、戦いの引き金ではない

 ドナルド・トランプは、2年連続でこの夕食会を欠席している。1930年以降の全ての大統領は、大統領職についている間に最低でも1回は出席しており、トランプ以前にこの夕食会を欠席したのは、ロナルド・レーガン前大統領だった。しかし、それは1981年で、彼は暗殺未遂により銃で撃たれて休養中だった。そんな状態でも、レーガン前大統領は夕食会に電話を入れて、いくつかの冗談を飛ばした。

 人間の性格は、ユーモアのセンスによって判断できると言われている。アメリカ社会において、ユーモアのセンスは非常に重要な性格特性だ。良いリーダーは、ストレスのかかった状況で緊張感を緩めるために、上手なユーモアを使う。自信のある人は、自分自身のことを冗談にしたり、自分に対する他者からの冗談をスマートに受け止めるだけでなく、さらに面白い冗談で返答することもできる。

 しかし、ドナルド・トランプは、このような柔軟性を全く持っていない。彼は自意識過剰で、自分のために何かをしてくれる人以外には興味がないため、緊張と混乱と分裂を増長させる。トランプは、それが何の話題でも個人的に受け止めてしまう心の狭い男だ。彼の中には「良いユーモア」というものが存在せず、あるのは支配と屈辱だけ。人は強くて支配をして他人を屈辱するか、弱くて支配されて他人に屈辱されるかのどちらかだと思っているのだ。

 トランプの悪性自己愛はひどく厄介で、この国に深刻なダメージを与えている。しかし、恐らくもっと厄介でダメージを受けているのは、彼が行っている報道の自由への戦いだ。彼にとって報道の役目は、わかりやすく彼を称賛することであり、大統領選に勝ったことで彼自身に批判の余地はないと信じているようだ。きっと大統領という役職と王様の違いがわからないのだろう。記者たちが彼の政治や彼自身を非難すると、それらを「フェイクニュース(噓のニュース)」と呼び、報道の自由を「アメリカの人々の敵」と言う大統領がいるアメリカを誰が想像しただろうか。ユーモアのセンスがない現大統領にとって、ホワイトハウス記者協会主催の夕食会は最も避けたいことのひとつだろうが、報道の自由を否定することは、アメリカ民主主義の基本原則のひとつに反している。

 だがアメリカは、大統領が夕食会を欠席しても生き残れる。トランプの破壊的な大統領職下でも、この国が生き残ることができるかどうかを見ることで存続していくのだ。

(参考記事)
Trump to Skip White House Correspondents' Dinner Again

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この記事の寄稿者

1974年生まれ。文学書とコーヒーを愛するコラムニスト。書籍に関しては幅広く読むが、コーヒーに関しては、豆の原産地から流通や焙煎の過程までを詳細にフォローし、納得したものだけを味わうことにしている。温厚で穏やかな性格であるものの、コーヒー豆へのこだわりと同様に理路整然としない、あるいは納得できない社会の動きに対しては、牙をむく活動派的な一面もある。妻と犬一匹と共に、カリフォルニア州オークランド在住。

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