ブッシュ夫人の死を喜ぶリベラル派が浮き彫りにしたものは?

ブッシュ夫人の死を喜ぶリベラル派が浮き彫りにしたものは?

多様なアメリカでは暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回はバーバラ・ブッシュ夫人の訃報を喜んだリベラル派大学教授のツイート炎上に関する保守派の意見を紹介する。


教育者たる大学教授がツイートする内容ではない

 4月17日、第41代大統領夫人で、第43代大統領、ジョージWブッシュの母親、バーバラ・ブッシュ夫人が亡くなった直後、カリフォルニア州立大学フレズノ校のランダ・ジャッラール教授が、夫人の死を喜び、こうツイートした。

 “Barbara Bush was a generous and smart and amazing racist who, along with her husband, raised a war criminal. Fuck outta here with your nice words.”
「バーバラ・ブッシュは気前が良く利口で、驚異的な人種差別主義者であり、夫と共に戦犯を育てた。きれいごとを言いながら、この世から出て行きやがれ」

 “PSA: either you are against these pieces of shit and their genocidal ways or you're part of the problem. that's actually how simple this is. I'm happy the witch is dead. can't wait for the rest of her family to fall to their demise the way 1.5 million iraqis have. byyyeeeeeeee.”
「公共広告:クソ野郎どもの大量虐殺に反対するか、自分も問題の一部として留まるか、どちらかを選べというだけのこと。卑劣な女が死んで、あたしはハッピー。早く残りのブッシュ一族が150万人のイラク人と同じ死に方をしてほしい。さよならぁ~」

 これらのツイートを批判されると、ジャッラール教授はこう答えた。

 “I work as a tenured professor. I make 100K a year doing that. I will never be fired.”
「あたしは終身教授で、年収10万ドル。絶対解雇されないのよ」

 この一連のツイートがブッシュ一族のお膝元であるテキサスのメディア及び保守派のメディアで大炎上した後、大学側は、まず「これは彼女の個人的な意見で、大学の姿勢を反映したものではありません」という声明文を出し、その後、卒業生や寄付者からの苦情に応えて「終身地位でも解雇は可能。あらゆる選択肢を検討中」と発表した。

 これだけなら保守派の人々は、「大学教授の9割は左派、そのうち半分は極左なので、まあ、しょうがないだろう」と諦念を抱くのみだったかもしれない。先日、アメリカで最も有名だった伝道師のビリー・グラム牧師が亡くなったときも、2年前に保守派のスカリア最高裁判事が亡くなったときも、公の場でそれを喜んだ著名人や記者などを含むリベラル派がいたため、保守派はこうした行為には慣れているからだ。

リベラル左派のダブル・スタンダード

 しかし、大学側の反応に対して、ACLU(アメリカ自由人権協会)が「言論の自由の侵害だ」と抗議したことに、保守派は怒りを感じている。ACLUは、不法移民(illegal immigrants)、イスラム教過激派(Islamic extremist)などの言葉は不法移民やイスラム教徒の気持ちを傷つけるヘイト・スピーチであり、「言論の自由の範疇にはない」と糾弾し、ベン・シャピロなどの保守派の思想家が大学でスピーチを行うことを左派団体が阻止・妨害しても、トランプ支持者の黒人女性をフェイスブックが検閲したとされたときも何ひとつ行動を起こしていない。それに対して、今回のこの人間として最低の礼節を欠いたツイートは、例えブッシュ一族や保守派の心を傷つけようが「言論の自由で守られている」ということになる。

 保守派は、ACLUのあまりにも偏った言論の自由の定義に辟易している。ちなみに、私はブッシュ一族の支持者ではないが、CBSの夜のトーク・ショーのジョーク作家が、ブッシュ夫人の死の直後に“RIP Barbara Bush, the only woman who was 92 for 30 years.”(安らかに眠れ、バーバラ・ブッシュ。30年間も92才だった唯一の女性)とツイートしたときは、心が痛んだ。テキサス人なら誰もが知っていることだが、1953年にブッシュ夫妻の長女が4才で白血病にかかって病死した後、ブッシュ夫人は一気に白髪になってしまったのだが、「人を外見で判断してはいけない。容姿より中身が大切」という信条を貫き、夫人は白髪染めをせず、顔のしわも隠さず、素顔のままで通した。真のフェミニズム、そして人種差別を根本から否定する精神と同じ基盤に立つブッシュ夫人の信条を、リベラルなエリートがせせら笑うのは許しがたいことだ。

 もし、ジョーク作家やコメディアンが、オバマ夫人の容姿を少しでもからかったら、即座に報道業界・芸能界から永久追放されるだろうし、大学教授がアンチ・オバマのツイートをしようものなら、人種差別者とみなされて、その後はまともな職につけないだろう。アメリカの大学やメディア、そしてリベラル派のエリートたちによる「ダブル・スタンダード」と「偽善」に対して、保守派がウンザリするのも仕方がない。

 ジャッラール教授のツイッターのアカウントは炎上後、非公開になったが、同教授のスピーチは下記のサイトで見ることができる(22分から37分まで演説し、その後のトークで向かって左に座っているのがジャッラール教授)

アメリカの大手メディアが伝えない「不法移民の実態」

https://bizseeds.net/articles/629

多様なアメリカでは、暮らす地域によってすべてが異なる。テキサス州に暮らすイスラム教徒の著者が、米国内でも報道されにくい保守の声をお届けするコラム、西森マリーの「トランプ支持がなぜ悪い? アメリカ保守派の考え方」。今回は、不法移民の親に連れられてアメリカに渡り、アメリカで育った子供たち「ドリーマーズ」に対する保守派の意見

アメリカの「メディア」に関する記事

この記事の寄稿者

エジプト、カイロ大学で比較言語心理学を専攻。1989年から1994年までNHK関東ローカル・ニュース、NHK教育テレビ『英語会話I 』講師、NHK海外向け英語放送ラジオ・ジャパンのDJ、テレビ朝日系『CNNモーニング』キャスターを務め、1994年にオランダに移住。1998年、拠点をテキサスに移し、”レッド・ステイト(共和党が強い州)に住むイスラム教徒”というユニークな立場からアメリカでも日本でも報道されていないアメリカ保守派の視点を伝えている。

著書:
『ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実』(星海社)
『レッド・ステイツの真実 アメリカの知られざる実像に迫る』(研究社)
『世界のエリートがみんな使っているシェイクスピアの英語』(講談社)
『聖書をわかれば英語はもっと分かる』(講談社)

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