空への夢の始まり15—メカニックな単語がわからない?!

空への夢の始まり15—メカニックな単語がわからない?!

外国人には狭き門である、アメリカ一般旅客機パイロットへの道。その難関を突破し、育児をしながら現役活躍中の青木美和が、「夢の叶え方」を航空産業最新情報と共にお届けする『Sky High America』。さて自家用機免許を取得後に念願の4年制大学にめでたく転入したものの、周囲は男子生徒ばかり。この中でやっていけるのか?


「アルタネーター」って、なに?

 自家用機免許を取得すると同時に、私は短大から4年制大学に転入した。それは元々の計画でもあった。まず短大で英語力をつけながら複数の授業を取り、その単位を4年制へトランスファーして、航空学科にて「プロフェッショナル・パイロット養成コース」を専攻するのがベストと考えていたからだ。アメリカでは、格安な公立短大で一般教養の単位を取ってから、4年制大学へトランスファーして卒業する方法で進学する人が多い。私の場合は、短大に1年通い、その単位を持って4年制大学へ編入し、プロフェッショナル・パイロット養成コースの生徒として新たな学生生活を始めた。

 だいぶ英語にも慣れてきていたので、航空学科で専門コースもスムーズに始められると思っていたが、初っ端から戸惑った。飛行機構造の基礎を勉強するクラスで、30人ほどいる教室にて私は最前列に座っていた。教授が「基本中の基本から始めよう」と言って教室を見渡しながら、ひとりずつに質問をし始めた。質問の内容はエンジン、ガスタンクなど、確かに基本的なものだった。周りを見渡すと、私以外は全て男子生徒で、皆すらすらと質問に回答していた。私の番になり、「アルタネーター」について質問された。教授は、「そもそも、アルタネーターとは何ですか?」と質問してきた。私はメカニックに強くなく、ましてや整備もしたことがない。「アルタネーター」なんていう単語さえ聞いたことがなかった。「わかりません」としか言いようがなかった私に、「自動車のアルタネーターの説明でもいいですよ」と、助け舟を出すように付け加えてくれたが、私は「車のアルタネーターも知りません」と正直に回答した。

 誰一人、私をバカにしたり、笑ったりするような人はいなかったが、自分だけが遅れているという自己嫌悪に陥った。周囲の男子学生たちは誰もがメカの知識が強そうに見えた。それゆえ、新しい大学では私は人の何倍も勉強した。プロのパイロットとしての勉強ができる環境にやっと辿り着いてきたのだからと、夢中になって必死に学んだ。

計器飛行免許を取得する

 自家用機免許を取ってから4年制大学に転入した私は、すぐさま計器飛行の免許を取得するためのトレーニングに入った。計器飛行とは、わかりやすく言うと、雲の中や視界の悪い状況下での運行を許される免許だ。「周りが見えないのに、どうやって飛行するのか?」と不思議に思う人も多いかも知れないが、コックピットの中にはたくさんの計器が装備されており、その計器が示す内容と管制塔とのやりとりを聞いて飛行機を誘導操縦するのである。もちろん計器のメカニズムや、ナビシステムを完全に理解していなければ事故に繋がる。しかし、コンピューターや機械は常に100%正確だとは限らないため、パイロットはしっかりと機体を操縦するだけでなく、システムに誤差がないかを常時確認しながら飛行しなければならない。

 視界が悪いときは、管制塔との信頼関係が一段と大切になる。飛行技術には自信があったが、やはり管制塔とのラジオコール中心のトレーニングには躓いた。しかも、私の教官は外国人を教えたことのなかったので、私が英語に悪戦苦闘している状況をあまり理解してくれなかった。

 しかし、ある日、友人のトレーニングの後部座席に乗せてもらえる機会があった。英語を母国語とするアメリカ人の友人が私と同じようにラジオコールで戸惑っている様子を見て、航空専門用語を雑音の多いラジオで通信することはアメリカ人にとっても簡単ではないことを知り、安堵した。このことで、またやる気が出て、その日からは暇さえあれば小型のアマチュア無線機を持って近くの丘の上に行き、各機のパイロットと管制塔のやりとりを聴きまくった。そうして私は会話の流れをつかむことができ、ついには管制塔とのコミュニケーション恐怖症を克服できたのである。

(次回に続く)

アメリカの学生のソーシャルライフ

https://bizseeds.net/articles/653

アメリカ東海岸の寄宿学校を卒業後、難関コロンビア大学バーナードカレッジに入学した日本の若者は、アメリカの若者をどう見るか? 次世代を動かすアメリカの姿を紹介する光田有希の『取説:アメリカの若者たち』。今回はアメリカの大学生たちのソーシャルライフについて、同じ大学生の視点からそこに息吹く文化を紹介する。

「Sky High」

この記事の寄稿者

愛知県豊橋市出身。高校卒業後、渡米。ボストン郊外のセーラム・ステート・カレッジで英語を学び、その後、航空学科のあるワシントン州グリーン・リバー・コミュニティ・カレッジへ。同校を経てセントラル・ワシントン大学に編入し、航空学で学士号、工業エンジニアリングで修士号取得。卒業後、同大学で操縦教官に就任。7年間の教官生活の傍ら、個人用ビジネスジェット機のパイロットも経験。2007年3月に 『Women in Aviation, International』 から奨学金を受けると共に、アジア人の女性パイロットネットワーク『Women in Aviation Asia』を発足。2008年1月、ホライゾン航空入社。不景気で一時解雇となり、グアムで遊覧飛行、飛行訓練、ドクター・ジェットの操縦を務めるも、2010年10月に同社復帰。同年、航空宇宙産業技術展2010ビジネスジェットパネリストも務めた。現在はオレゴン州に拠点を移し、家庭を持ち、子育てをしながら空を飛んでいる。

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